中国における「冥婚」の法的諸問題 : 慣習法と実定法との狭間で

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タイトル別名
  • Legal Issues of the Tradition of the Ghost Marriage in China
  • チュウゴク ニ オケル 「 メイコン 」 ノ ホウテキ ショ モンダイ : カンシュウホウ ト ジッテイホウ ト ノ ハザマ デ

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抄録

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中国では現代でも未婚の男性が死亡すると、その父母が女性の死体を求め「死後婚姻」させる「宴婚」と呼ばれる風習が多くの地域で残っている。儒教の家父長制、生死如一の思想および道家の陰陽五行論などをその文化的・思想的背景として数千年伝承されてきた慣習法の支配を受ける民間習俗である。一方、中華人民共和国婚姻法第六条では男性は二二歳、女性は二〇歳を満たさなければ結婚することが出来ず、実定法上、婚姻関係は自然人の間で発生する民事法関係である。自然人の民事権利能力及び民事法律関係は、死亡と同時に終了する。従って民事法という実定法は死者と死者との間の婚姻を支持しない。  「宴婚」には伝統的観念が凝縮されており、子供に対する父母の愛情が凝縮された慣習法である。実定法は宴婚伝統を支持しないが、不法行為と判断しているわけでもないため、実定法によって廃止することもできない。従って、死体売買やこれを目的とした殺人行為などを宴婚と明確に区別していけば宴婚習俗の態様も徐々に変化していくであろう。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 123 (7), 793-827, 2017-01-16

    法学新報編集委員会

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