Environmental Heat Relaxation Effect by Railroad Track Greening with Non-Irrigation System

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抄録

<p>本研究の目的は, 無灌水システムによる軌道緑化が夏期暑熱環境に与える緩和効果を検証することである。緑化植物としてメキシコマンネングサ (Sedum mexicanum Britton) を用いた。試験区域は都営荒川線荒川車庫前駅付近に設定し, 軌道緑化区と軌道非緑化区における表面温度, 地上高100mm (H100と略す) および300mmの温度を10分間隔でサーモレコーダーにより測定した。また, 天気概要は気象庁のデーターを使用した。2017年7月1日から8月31日の測定期間中, 空梅雨で高温が続いた7月17日, 梅雨明け後, 雨天が続いた8月9日を抽出し, 両日の24時間の温度推移, 鉛直温度推移および近傍 (H100) 温度に対する表面の冷却効果時間を両試験区で比較検討した。さらに7月, 8月の各31日間の最高温度分布の比較を行った。8月9日には軌道非緑化区で表面温度63ºC, 軌道緑化区では45ºCを記録した。平年より高温少雨の7月, 雨天が続いた8月共に軌道緑化区が軌道非緑化区に比べ表面温度が低い状態で推移した。高温少雨でも軌道緑化を設置することで大気を冷却する時間が増え, 特に夜間の冷却作用と近傍温度を下げる効果が推定された。一方, 軌道非緑化区は日中大気への加熱負荷の大きいことが推定された。最高温度の出現分布を7月で比較すると軌道緑化表面では50ºC以下は93%であり, 40ºC以下は51%であったのに対し, 軌道非緑化表面では50ºC以下は36%のみであった。8月では軌道緑化表面で40ºC以下が93%であったのに対し, 軌道非緑化表面では40ºC以下が26%のみにとどまった。また, セダム緑化基盤の潜熱消費量から推察すると, 夏季1日当たり約3,600J/m2~20,000J/m2の潜熱消費効果が期待された。本研究における無灌水システム軌道緑化が環境暑熱緩和に効果のあることが推定された。都電荒川線の総延長は12.2kmであり, 今後, 軌道内と軌道間を緑化した場合, 36,600m2の緑化が創出でき, 大気の冷却効果, ヒートアイランド現象の緩和や新たな小動物, 昆虫生息域の出現, また, 景観向上などの更なる効果が期待される。</p>

収録刊行物

  • 芝草研究

    芝草研究 48 (2), 149-155, 2020-03-31

    日本芝草学会

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