オキシダント濃度の予測に関する研究 Studies on the prediction of oxidant concentrations

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著者

    • 村田, 元秀 ムラタ, モトヒデ

書誌事項

タイトル

オキシダント濃度の予測に関する研究

タイトル別名

Studies on the prediction of oxidant concentrations

著者名

村田, 元秀

著者別名

ムラタ, モトヒデ

学位授与大学

麻布大学

取得学位

獣医学博士

学位授与番号

乙第106号

学位授与年月日

1977-03-14

注記・抄録

博士論文

わが国における戦後の大気汚染問題の主役は,昭和40年代の前半までは,硫黄酸化物であった。しかし,この問題は,相次ぐ規制の強化と,対策技術の確立によって,殆ど解決したといっても過言ではない。 硫黄酸化物に代って,大きな社会問題として登場してきたのが,光化学反応による大気汚染である。この問題は,アメリカでは,1940年代からロサンゼルス地域に発生していたが,日本では,昭和45年7月の東京都立正高校生徒の集団被害事件が最初であり,以後,北海道と九州を除いた太平洋側の各都府県において,全国で年々20,000名をこえる,眼刺戟を主微とした被害者が発生している現状である。したがって,この問題の解決は,緊急を要する,重大な課題である。 この問題の解決を困難にしている原因の一つとして,その原因物質があげられる。光化学反応による大気汚染は,他の大気汚染と異って,単一物質の排出によるものではなく,大気中に共存する炭化水素と窒素酸化物に,太陽光中の紫外線が作用することによって生成する二次汚染物質が原因物質である。しかもこの物質は,オゾン,二酸化窒素,パーオキシアセチルナイトレートおよびその同族体などの酸化性物質や,ホルムアルデヒド,アクロレインなどの還元性物質など数多くの物質があげられるが,光化学反応による大気汚染の状態を示す指標としては,生成した酸化性物質のうち,二酸化窒素を除いたものを「光化学オキシダント」(以下「オキシダント」という。)として用いている。 次に,原因物質の発生源の多様性があげられよう。窒素酸化物は,固定発生源だけでなく,移動発生源や家庭などからの排出まで考慮する必要があり,防止技術の末確立とも相まって,発生源からの排出規制を困難にしている。また,炭化水素の種類は非常に多く,光化学反応性はその種類によって異なるとともに,窒素酸化物濃度と関連した濃度によっても異なることや,その発生が,排出だけでなく,漏洩による部分の寄与が大きいことも問題である。 さらに,問題を複雑にしているのは,オキシダント濃度が高くなるのにつれて,眼刺戟などの急性の人体影響が顕著に発現することを前提に,三重県は勿論,全国的に,その濃度が継続するような気象条件を条件として,オキシダント濃度が0.1ppmに達すると,光化学オキシダント予報を発令して,主要固定発生源に対して,燃料使用量の削減準備を指示し,濃度が0.15ppmを越えると,燃料使用量の20%削減を指示しているが通常である。しかしながら,これらの緊急時の措置発令と被害者の発生とは,必ずしも一致していないのが現状である。 このように,多くの要因が複雑に絡みあっているのが,光化学反応による大気汚染であるが,濃度が高くなってから規制措置を発令したり,住民に周知させるのではなくて,事前に,周知もしくは規制が実施できれば,被害の発生を最少限に阻止できる筈である。 このような観点から,オキシダント濃度の定量的な予測が必要となってくるが,現状で考えられる予測手法としては,物理モデルによる方法と,統計モデルによる法の二つが考えられる。この場合に,物理モデルを用いるには,まづ,光化学反応機構の完全な解明の上に立って,反応をモデル化し,これと拡散モデル(物理モデル)の組合せで,電算機シュミレーションを行う必要があり,定量化には,まだ相当の時間を要するうえ,実用化に際しての問題を考慮すれば,早急には実用化には至らないものと考えられる。 一方の統計モデルについては,現状では,経験則を中心とした半定量的な手法が気象官署を中心に用いられている。 著者は,最近の電算機の普及に伴って,多用されつゝある,多変量解析の手法を用いて,オキシダント濃度に関係する因子の解析ならびに,オキシダント最高濃度の定量的な予測の可能性について検討を行った。 まづ,解析ならびに予測を行う場所としては,四日市市にある四日市商業高校を選び,こゝでの汚染物質測定結果を用いた。用いた物質は,一酸化窒素,二酸化窒素,二酸化硫黄,浮遊粒子状物質ならびにオキシダントであり,これらの9時の測定値を説明変数として選ぶとともに,その日のオキシダントの最高濃度を目的変数として用いた。 気象条件については,天気・視程・風向・風速・気温・湿度については,四日市測候所の9時の観測結果を用いた。また,日最高気温と6時の気温との差を気温の日較差として,さらには,日最高気温と日最高気温の平年値との差,ならびに日最低湿度も用いた。また,気象の垂直方向の影響を把握するため,御在所山頂の9時の風向・風速を用い,日射量については,三重県環境科学センターにおける測定結果から,7時から9時までの3時間平均値を用いた。以上で,説明変数としての気象条件は14となった。 19の説明変数を基準化した後,相関行列をつくり,これの主成分分析を行って,因子負荷量を求めると,各変数は, 1)天気群 2)日射量群 3)気温群 4)風向群 5)風速群 6)汚染物質群の6群と,独立変数として,オキシダント初期値と視程の2変数に分類された。 また,第1主成分から第3主成分までで全体の61.5%を説明でき,第1主成分は,オキシダント初期値に関連した天気の変数であり,第2主成分は,気温に関連した変数,第3主成分は,一次汚染物質の変数ということができる。これを近似的に式で示せば, Z_1≒0.8×(湿度)+0.9×(天気)-0.9×(気温の日較差)-0.8×(日最高気温の平均値との差)-0.9×(日射量)+0.9×(日最低湿度)-0.5×(オキシダント初期値) Z_2≒0.8×(6時の気温)+0.9×(9時の気温)+0.8×(日最高気温)×0.7×(浮遊粒子状物質) Z_3≒0.7×(二酸化窒素)+0.6×(二酸化硫黄)-0.7×(視程)となる。 次に,19の説明変数と目的変数であるオキシダント日最高濃度を用いて,変数増減法による重回帰分析(F値の取入れまたは棄却限界値は2.0とした。)を実施した結果,次の予測式が得られた。 オキシダント日最高濃度=7.78×(気温の日較差)-3.74×(御在町山頂の風速)+1.18×(オキシダント初期値)+0.99×(最低湿度)+3.29×(御在所山頂の風向)-0.99×(視程)+3.21×(一酸化窒素)-77.59 得られた予測式の重相関係数は+0.822で,ダービン,ワトソン比は2.07であった。また分散分析の結果,F値は24.35であったから,F(7.82,P=0.5%)は3.18であるので,危険率0.5%以下で有意な式が得られたわけである。 さらにさきの因子負荷量による説明変数の分類結果と比較してみると,得られた式は,独立変数2変数と,6群中5群がら各々1変数を選んで語り,さきの分類結果とも一致していることが判った。なお,式は,気温の日較差が大きく,御在所山頂の風速が弱ぐ,オキシダント初期値が高く,御在所山頂の風向が西寄りで,視程が悪く,一酸化窒素濃度が高いときに,オキシダント最高濃度が高いことを示して誇り,過去の知見に照しても妥当であるといえる。最低湿度の符号が正であるが,係数は小さいので,この場合,抑制変数として機能したのではないかと考えられる。 最後に,得られた予測式の予測精度を検証するため,昭和49年と同様な方法で昭和50年のデータを蒐集し,得られた58組のデータについて予測を行った。その結果,オキシダント最高濃度の実測値と予測値の間には,+0.758の相関係数が得られた。t検定の結果,危険率1%=0.337であるから,この結果は,危険率1%以下で有意であるといえるが,念のため,光化学オキシダント予報発令基準値である0.1ppm以上の濃度について,実測値と予測値の関係をみてみると,実測値の最高値が0.1ppm以上となった日は,58例中14例であった。この14例の平均値は0.119ppmであって,これに対応する予測値の平均値は0.121ppmであった。また,予測値が0.1ppmに達しなかったのは14例中1例であって,実測値0.10ppmに対し,予測値0.088ppmとなった1例のみであった。したがって,その適中率は92.8%であった。三重県では,昭和49年の光化学オキシダント注意報(0.15ppm以上)の発令は7回であったのに対して,50年の発令は0であった。同予報(0.10ppm以上)の発令も,同様に,49年20回,50年11回と減少の傾向を示しており,全国的な傾向と一致している。この原因としては,いわゆる冷夏現象によるためではないかといわれているが,このような状況下で,前年の式そのまゝで,高濃度の予測適中率92.8%の高適中率を得たことは,式の構造の妥当性と適正さを示すものと考えられる。 結論として臨光化学反応論上からも妥当で充分な予測精度をもった式を得ることができたものと考えられる。また,各変数は9時までのデータ(最大値,最小値は9時の予測値を用いる。)で予測を行えるよう配慮したので,データ蒐集に30分,予測計算に30分を見込んでも,10時には,その日の最高濃度の予報を発表することが可能であるため,最高濃度の出現までには,3~4時間の予裕を見込むことができるので,事前制御等の対策面にも極めて有効であると確信する。

About two decades ago, the majority of Japanese industries were enthusiastic to promote their productions to fill the gap between supply and demand, and consumed huge amounts of fossil fuels, as an energy source to achieve their effective productions. A type of the air pollution at that time was a one so-called "London type pollution", which derived from the consumption of coal or low-quality petroleum by the big enterprises. In this type of the pollution, an accumulation of the excessive amounts of sulfate or particulate matter in the lower altitude of the ambient air often caused various type of public health hazard, and the people became aware of the importance of the atomospheric environmental protection. Thus, since the middle of the 1960's, the challenge has been made under the cooperation between industries and government to control the air pollution to minimize the public health hazard. The utilization of numerous modern scientific techniques, such as the establishment of an automated monitoring system for the survaillance of air qualities in both urban and rural areas of Yokkaichi city, and the adoption of an alarming system to regulate the fuel consumption in industries has been taken into practice, in addition to the legislation on the air pollution control by the Japanese government. These countermeasures had taken were likely to be effective and seemed to have succeeded to solve the air pollution problems in the Yokkaichi area. In 1970, however, a dramatic health hazard has arisen by a new type of air pollution, now known as "photochemical smog" of Los Angeles type pollution, involving handreds of the Risho Senior Highschool pupils in Tokyo. The frequent occurrence of this type of air pollution in summer months were followed by the all over the urban areas of the entire nation, and without any effective countermeasure to take, it brought great deal of casualties, not only on man and animals but also on plant and vegetables. According to the results of many investigations, an areawide control is indispensable to combat with this type of the air pollution, since the occurrence of photochemical smog is caused by the synthesis of variety of chemicals from nitrogen oxides and hydrocarbons in the atomosphere, with the help of ultraviolet rays in sunbeam. The sources of the photochemical pollutants were not restricted in the fixed places, such as in factories or in buildings of big enterprises, but the substances in exhaust gas from automobiles are also known to have been playing a very important role. Among the chemicals synthesized in air, oxidants have been used for the indicator of the grade of the pollution by photochemical smog. And exact prediction of the would-be concentration of oxidants in air is considered to be the effective countermeasure to protect the inhabitants from such troublesome air pollution. Thus, as a first step of this investigation, a statistical analysis was made on the correlation matrix of the following 19 variables of the environmental factors, by the use of FACOM 230-25 type computer. All the variables used in the factor analysis were the ones obtained at 9 o'clock in the morning, otherwise stated elsewhere. The variables analysed were 5 substanses; such as initial oxidant in ppb (OX), nitric oxide in PPB (NO),nitrogen dioxide in PPB (NO_2),sulfur dioxide in ppb (SO_2),and particulate matter in μg/m^3 x 10 (DST) ; and 14 meteorological factors, such as temperature at 6 a.m. in ℃ (T6), temperature at 9 a.m. in ℃ (T9), relative humidity in percent (HUM), wind direction (WD), wind velocity in m/s (WV), weather (WEA), visibility in km (VIS), expected diurnal range of temperature in ℃ (D6), expected maximum temperature minus normal maximum temperature in ℃ (DTMX), Gozaisho wind direction (GWD), Gozaisho wind velocity in m/s (GWV), solar radiation between 7 and 9 a.m. in cal/cm^2/hr (SRD), maximum temperature in ℃ (TMX), and minimum relative humidity in percent (HMN). As another step in understanding the nature of the 19 variables, the principal components analysis and the factor analysis were also conducted simultaneously. Through these two analysis, three major components (Z_1 ~Z_3) were produced, which together accounted 61.5% of the total variable loadings within the data, and explained as follows:Component I is the weather variables related to the initial concentration of oxidant.z_1 ≒ 0.8 x (HUM) + 0.9 x (WEA) - 0.9 x (D6) - 0.8 x (DTMX) - 0.9 x (SRD) + 0.9 x (HMN) - 0.5 x (OX)Component II is the meteorological variables related to the atomospheric temperature.z_2 ≒ 0.8 x (T6) + 0.9 x (T9) + 0.8 x (TMX) + 0.7 x (DST)Component III is the pollutant variables related to the primary pollution.z_3 ≒ 0.7 x (NO_2) + 0.6 x (SO_2) - 0.7 x (VIS) - 0.6 x (GWV) As a last step, the multiple regression analysis was made on the 19 variables, and it was found that a would-be maximum concentration of oxidant (Max. Con. Ox) can be estimated from the 7 extracted variables, such as initial concentration of oxidant, nitric oxide, diurnal range of temperature, visibility, minimum relative humidity, Gozaisho wind direction and its velocity. Finally the following equation for the prediction of maximum concentration of oxidant was produced:Max. Con. Ox = 7.78 x (D6) - 3.74 x (GWV) + 1.18 x (OX) + O.99 x (HMN) + 3.29 x (GWD) - O.99 x (VIS) + 3.21 x (NO) – 77.59 The analysis of variance clarified that F ratio of the values obtained on equation was 24.35, with a positive multiple correlation coefficients of O.822, and with Durbin-Watoson ratio of 2.09. F ratio at a level of significance of O.5% risk was 3.18, therefore the equation obtained can be regarded as a significant one. During the period from June through September 1975, the 58 pair of data samples obtained at 9 o'clock in the morning, were re-examined retrospectively to prove the reliability of the prediction equation for the would-be maximum amount of oxidant. Consequently, it was found that the estimated amounts of the would-be maximum oxidant calculated by the equation were well agreed with a positive correlation coefficients of 0.758, with the actual amounts of the maximum concentration of oxidant. In other words, the achievement of the goal of the photochemical air pollution control is almost in our hand by the establishment of the prediction equation for the would-be maximum concentration of oxidant. And if we utilize the computed prediction information effectively, we may take three to four hour advanced administrative actions on the areal traffic regulation and fuel consumption in factories to minimize the public health hazard.

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000001269
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000001269
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000165582
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
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