生体関連金属錯体の薬化学的研究 Studies on Pharmaceutical Chemistry of Biomimetic Metal Complexes

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Author

    • 小池, 透 コイケ, トオル

Bibliographic Information

Title

生体関連金属錯体の薬化学的研究

Other Title

Studies on Pharmaceutical Chemistry of Biomimetic Metal Complexes

Author

小池, 透

Author(Another name)

コイケ, トオル

University

広島大学

Types of degree

薬学博士

Grant ID

甲第576号

Degree year

1986-03-25

Note and Description

博士論文

Chapter I. 1:1 and 1:2 complexation constants of histamine H2-antagonist cimetidine (antiulcer drug) with Cu(II) ion have been determined by pH-metric technique. Relatively small stability constants with respect to those of biological ligands (e.g. amino acids, peptides) suggest cimetidine in vivo unbound to Cu(II) ion. However the Cu(I,II) redox potential E- of +0.42 V vs NHE with cimetidine implies high chances of biological reductants such as ascorbic acid and hemoglobin. The E0 value is comparable to those of blue copper (type I) proteins and Cu-superoxide dismutase. Copper-cimetidine complexes exhibit the highest superoxide dismutase-like activity hitherto known to copper chelates with small molecular weight. Chapter II. A novel annelation method is reported for the synthesis of the axial phenolate pendent cyclam [5-(2-hydroxyphenyl)-1,4,8,ll-tetraazatetradecane] from coumarin and 119-diamin0-3,7-diazanonane. This will be useful in the synthesis of a variety of macrocyclic polyamine alkaloid analogues. The X-ray crystal structure of high-spin NiII complex with phenolatependant cyclam as mono-perchlorate salt is reported, with R factor of 0.047. The nickel is surrounded in square-pyramidal arrangement by equatorial cyclam nitrogens with mean Ni-N bond length of 2.07 A and an axial phenolate with bond length of 2.02 A. The present phenolate appended ligand can stabilize the high oxidative metal ions o NiIII and FeIII. The pheno-appendent cyclam Fen complex has similar visible absorptions to those of tyrosine co-ordinating Fe nonherae oxygenase.

I ヒスタミン-H2-アンタゴニスト・シメチジンの銅(I,II)錯体ヒスタミン-H2-アンタゴニストとして知られるシメチジンは、ラットやモルモットの中枢神経のイミダゾールレセプターに結合する。その結合が、銅(II)イオンの存在により増強されることや、アスコルビン酸などの還元剤がさらに銅(II)イオンの作用を強めることから、シメチジン-銅(II)あるいは銅(I)錯体が、レセプター結合に関与する可能性が示唆されている。著者は、水溶液中でのシメチジンと銅イオンとの相互作用やシメチジンの銅錯体の化学的性質および薬理活性との関連について詳細に検討した。水溶液中でシメチジン(L)は、銅(II)イオンと1:1および2:1錯体形成する。錯生成定数Kcu(II)LおよびKcu(II)L2の値は、3.02×10<4>(M-1), 2.35×10<4>(M-1)である。一方、シメチジン-銅(I)錯体は、水溶液中では2:1以上の組成のものは確認されず、殆ど1:1錯体として存在するoその錯生成定数Kcu(I)Lは、銅(I)錯体としては異常な程大きく、1.3×10<9>(M-l)である。この事実は、シメチジン-銅(I)錯体がpH3以下の低いpHにおいても銅(I)イオンを解離することなく安定に存在することを示唆している。シメチジン-銅(II)錯体は、高い酸化還元電位,+0.42V vs.NHEを持ち、比較的弱い達元剤(アスコルビン酸等)により容易に遠元されて1:1-シメチジンー銅(I)錯体になる。 +0.42Vという電位は、牛のCu-スーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)中の銅イオンや、ブルー銅(Type I)蛋白質の酸化還元電億に類似しており、生物無機化学的に見ても大変興味深い値である。シメチジン-銅(I)錯体のSOD活性の測定を行なったところ、その活性は,牛-SODの1/50の活性で、これまで知られている低分子銅錯体の中で点も強いものであった。ペニシラミンやアセチルサリチル酸などの銅錯体は、牛-SODの1/100-1/1000の活性を持ち、その結果強い抗炎症作用を表わすと考えられている。したがって、シメチジンの骨格をさらに化学修飾することに去り、新しい抗炎症剤や、銅含有酵素モデル化合物の開発が期待される。体内に分布する銅イオンの大部分は、二価イオンとしてアルブミンやアミノ酸などと結合している。銅(II)イオンのキャリヤーモデルとして確立されているグリシルグリシルヒスチジン(GGH)及びシメチジンの銅(II)イオンに対する親和性を生理pHで比較すると、GGHの方が大きい。この事実は、シメチジン-銅(II)錯体として生体に投与しても、体内ですぐ銅(II)イオンを解離してしまうことを示唆する。しかし,アスコルビン酸等の生体還元剤が存在すると、シメチジンは銅(II)イオンを奪い安定な銅(I)錯体を形成する。即ちシメチジンは、生体内で銅(I)錯体として存在することが充分考えられる。脳レセプターにおいて銅(II)イオンおよびアスコルピン酸の添加によりシメチジン結合が強まるという事実は、シメチジン-銅(I)錯体が結合活性種であることを示唆しているが、本研究は,化学的にシメチジンが銅(I)錯体として生体内でも安定に存在しうることを証明したものである。 II アクシャル位にフェノール基の配位した大環状テトラアミン金属錯体著者は、天然物として知られるクマリンを出発物質とする新合成法を開発し、フェノール基を持つ14員環テトラアミン(Phenol-cyclam)を合成した。その金属錯体は、N4平面のアクシャル位にフェノール酸素が配位した構造を持っている。チロシン残基であるフェノールは、特に鉄イオンとの親和性が強く、プロトカテキュエートー3,4-ジオキシゲナーゼや、カタラーゼなどの活性中心においても、鉄(III)イオンに配位している。著者は、Phenol-cyclamの鉄(II,III)及びニッケル(II,III)錯体の物理化学的性質フェノールのアクシャル配位効果、及び生体金属酵素との関連性について詳しく検討した。Phenol-cyclamの構造は、大環状ポリアミンアルカロイドverb-ascenineなどのホモログである。したがって、この合成法は、天然物アルカロイドあるいは、それらのホモログの合成という面からも大変有用性に富む。Ni(II)-phenol-cyclamは、水溶液中でピンク色(λmax=520nm,ε=10)を呈し、 Ni(II)-high spin錯体(μ8=2.90, at35℃)である。フェノール酸素は、アクシャル配位に最適の位置にあることがX線解析の結果から分かった。その1:1-Ni(II)錯体生成定数は、7.0 X 10<22>(M-1)である。Phenol-cyclam-Ni(II)錯体のフェノールのpKeは、6.30である。その値はPhenol-cyclamのフェノ-ルのpKa8.86より小さい。すなわち、ニッケル錯体を形成することによってフェノールプロトンは、放出されやすくなっている。cyclam-Ni(II)錯体は,比較的容易に酸化されてNi(III)錯体になる。 そのNi(II/III)錯体の酸化還元電位は、+0.50V vs.SCEであるPhenol-eyelamの場合、フェノールプロトンの解離していないpH5以下では+0.50V vs. SCEでcyclamのニッケル錯体と同じであるが、フェノラート酸素の配位したpH7以上では+0.35V vs.SCEとより低い電位で敢化される。すなわち、アクシャル位にフェノラート基が酷使することによりニッケルイオンは、三価の状態に酸化され易くなっている。ニッケルに配位したフェノラ-トアニオンの酸化電位は、+0.9V vs.SCEである。フェノールの解離したPhenol-cyclamの酸化電位は、+0.5V vs.SCEである。したがって、フェノール基は、ニッケル(III)イオンよって、逆に安定化されている。フェノール基を持たないCyclamは、水溶液中では安定な鉄錯体を形成することができない。一方、phenol-cyclamは、pH7付近でフェノールプロトンを解離して環内に鉄(II)イオンを取り込み、赤色のhigh spin-鉄(II)錯体(μB=5.19, λmax=455nn,ε=200)を形成する。その錯生成定数は、 7.9×10<14>(M-1)である。この値をCyclamと比較すると約10<6>倍大く、フェノラート酸素が、鉄(II)イオンといかに大きな親和性を持っているかが分かる。Fe(II)-Pbenol-cyclamのII/III酸化還元電位は、-0.16Vvs. SCEである。Phenol-cyclamの鉄(II)錯体は、容易に空気酸化されて赤色(λmax=480nm, ε=2200)の鉄(III)錯体になる。その錯生成定数は、 pH7において4.0 x 10<26>(M-1)であり、鉄(II)錯体の場合よりもさらに大きい。Phenol-cyclamの鉄(III)錯体の分光光学的性質は、non-heme酵素であるプロトカテキュエートー3,4-ジオキシゲナーゼによく似ており、大変興味深い。 したがって、Phenol-cyclamは、新しいタイプの鉄イオン捕捉剤や、フェノラートイオンの配位したオキシダーゼやカタラーゼの活性部位モデルとしてその応用が期待される。

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Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000002202
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000000002202
  • Text Lang
    • eng
  • NDLBibID
    • 000000166516
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL ONLINE
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