ウシの横隔膜と食道・胃移行部附近の局所解剖学的研究および生体内鋳型法との比較観察

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著者

    • 和久井, 信 ワクイ, シン

書誌事項

タイトル

ウシの横隔膜と食道・胃移行部附近の局所解剖学的研究および生体内鋳型法との比較観察

著者名

和久井, 信

著者別名

ワクイ, シン

学位授与大学

麻布大学

取得学位

獣医学博士

学位授与番号

甲第48号

学位授与年月日

1986-03-20

注記・抄録

博士論文

ウシの横隔膜は肝臓,脾臓,そして第一胃の頭背側端などとの間で附着領域を示し,この周辺の各器官の保定構造として重要な役割を果している。特に横隔膜・食道裂孔と噴門附近においてJackson,Caballero,DoughertyらはDiaphragmatic sphincterをまた,NickelらはCaudal esophageal sphincterを示し,この部位の重要性を示唆してきた。それにもかかわらず同部周辺の詳細な局所解剖学的研究はわずかで,それもすべて剖出した個々の臓器を対象としたものであり,まして第一胃の噴門周辺と横隔膜との相互位置的関係について両者間の付着状態まで言及した業績はほとんど見当らない。 本研究は,ウシ(ホルスタイン種)晩期胎仔,新生仔,および成牛における剖出固定標本,固定液浴中での全身灌流固定標本,ラテックス血管注入標本を用い,食道裂孔を構成する横隔膜とその腰椎部および食道胸部後半から第一胃前房附近の筋層構築,神経支配,動脈支配を明らかにし,加えて固定液浴中での全身灌流固定標本と生体内鋳型標本とを比較観察したものである。本研究は,ウシの横隔膜・腰椎部および食道胸部後半から第一胃前房附近の解剖学的記載として重要であるのみならず,横隔膜・食道裂孔と食道末端部から胃前房附近の相互位置的関係を局所解剖的に明らかにすることで,噴門開閉機構ひいては反芻,消化機構の本態を解明するための極めて重要な基礎資料である。 本研究において,横隔膜・食道裂孔と食道末端部から第一胃前房附近が密接なる相互位置的関係を示すことが形態学的に明らかになった。横隔膜・腰椎部の食道裂孔部と噴門から胃前房附近との間は、腹膜および胸膜に加え多くの脈管を介した附着帯によってしっかり保定され,特に横隔膜・食道裂孔の右側壁を構成する右脚右内側部は噴門に対し面状に接するのに比べ,左側壁を構成する右脚左内側部は噴門を左側から腹側を通り右側まで筋ワナ状に取り囲み,噴門の左側部ではクサビ状に第二胃溝左唇の基部に相い対し噴門口を絞約閉鎖していた。また生体内鋳型法で認められた噴門・横隔膜ヒダは,噴門開口時に第二胃溝左唇が尾方へ移動し.横隔膜・腰椎部の右脚左内側部が食道末端部の左側から腹側を通り右側にかけて絞約することから形成される食道壁の突隆構造であることが明らかになった。これら結果の詳細は以下の通りである。 [□!1] 横隔膜・腰椎部の左脚および右脚は各々内・外側脚に区分され,右内側脚はさらに右脚左・右内側部に区分され食道裂孔を形成していた。 [□!2] 横隔膜・食道裂孔部における右脚左右内側部の相対筋最大横断面積の相対値は右脚左内側部が高値を示し,またこの右脚左内側部は食道裂孔の左側から腹側を通り右側へ伸びる筋ワナ構造を示していた。 [□!3] 食道胸部後半から胃前房附近の筋層構築は,各筋層の発達の差を除き成牛・晩期ウシ胎仔とも同様を示していた。 [□!4] 食道胸部後半の筋層は,交差組み合い域を構築し食道の内・外筋層を構成する左・右円回転筋層と食道の外筋層の最外部を構成する最外楕円左回転筋層が認められた。食道末端部で,これらの回転筋層は内輪走筋に移行し,新たに左・右最外縦走筋層,右最内斜走筋層,左最内縦走筋層が認められた。噴門から約4~5㎝頭側(成牛)で,特に内輪走筋の発達する部位が認められた。 [□!5] 噴門に近接する食道末端部の筋層は,右側壁では厚い右外縦走筋層,薄い内輪走筋層,厚い右最内縦走筋層が認められ,左側壁では薄い左外縦走筋層,厚い内輪走筋層,疎な左最内縦筋層が認められた。 [□!6] 食道の左外縦走筋層は,第一胃の外縦走筋層に移行し,食道の右外縦走筋層は第一胃・第二胃溝底の外層の縦走筋層に移行していた。食道の左最内縦走筋層は,噴門で消失していたが,食道の右最内斜走筋層は噴門で,第一胃の内斜線維の形成する噴門筋ループに移行していた。 [□!7] 横隔神経・背,外,腹側枝は,各々対応する腰椎部,肋骨部,胸骨部に分布していた。左・右横隔神経の多くは背側枝,外腹側枝に二分枝していたが,他の分枝様式も認められた。左横隔神経・背側枝の多くは食道裂孔の腹側を通り,少数例では背側を通り横隔膜・腰椎部の右脚右内側部へ分枝を出していた。また同部で左・右横隔神経・背側枝が吻合を示すものも認められた。 [□!8] 食道の左側迷走神経幹は第五肋間で,右側迷走神経幹は第四肋間で背腹側枝を分枝し,成牛で噴門から約4~5cm頭方域において背・腹迷走神経幹を形成していた。そして食道の横隔膜貫通部および,そのすぐ頭側位の左側で背・腹迷走神経幹をつなぐ数本の吻合枝が認められた。胃前房附近での背・腹迷走神経幹の吻合枝は.左側では噴門から胃前房に,右側では胃前房から第一胃前庭に多く認められた。 [□!9] 横隔膜・腰椎部の主要支配動脈には,第一腰椎動脈・横隔枝,後横隔動脈,および第二胃動脈・横隔枝が認められた。第一腰椎動脈・横隔枝は左・右第一腰椎動脈から起始し,横隔膜・腰椎部の背側辺縁部に侵入していた。後横隔動脈は多く腹大動脈,腹腔動脈から起始し,横隔膜・腰椎部の背側部に侵入していた。通常,第二胃動脈から派生する横隔枝には,左第一胃動脈から続くものも認められ,多くは横隔膜・腰椎部の食道裂孔部に侵入していた。 [□!10] 噴門から胃前房附近の主要支配動脈には,第二胃動脈,左第一胃動脈,および左胃動脈が認られた。 [□!11] 横隔膜・腰椎部の食道裂孔部と噴門から胃前房附近との間は,腹膜および胸膜に加え多くの脈管を介した附着帯によってしっかり保定されていた。横隔膜・腰椎部の右脚右内側部は噴門に対し面状に接するのに比べ,右脚左内側部は噴門を左側から腹側を通り右側まで筋ワナ状に取り囲み,噴門の左側部ではクサビ状に第二胃溝左唇の基部に相い対していた。 [□!12] 晩期ウシ胎仔およびウシ新生仔の生体内鋳型法による肉眼解剖学的観察で認められた噴門・横隔膜ヒダは,噴門開口時に第二胃溝左唇が尾方へ移動し,横隔膜・腰椎部の右脚左内側部が食道末端部の左側から腹側を通り右側にかけて絞約することから形成される食道壁の突隆構造であることが明らかになった。また食道末端部のアンプル状膨大部は,食道の回転筋層が輪走筋層に移行する部位から噴門までの領域に一致して認められた。

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000004080
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000004080
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000168394
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
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