Computer simulation system for brain and craniofacial surgeries 脳外科及び頭蓋形成外科手術計画支援システムに関する研究

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Author

    • 安田, 孝美 ヤスダ, タカミ

Bibliographic Information

Title

Computer simulation system for brain and craniofacial surgeries

Other Title

脳外科及び頭蓋形成外科手術計画支援システムに関する研究

Author

安田, 孝美

Author(Another name)

ヤスダ, タカミ

University

名古屋大学

Types of degree

工学博士

Grant ID

甲第2207号

Degree year

1989-03-25

Note and Description

博士論文

本論文は,C T(Computer Tomography)画像を計算機処理により3次元表示して,脳外科及び頭蓋形成外科の手術計画をシミュレートするシステムの開発について述べたものである.CTは今や臨床における診断や治療計画に欠くことのできない重要な要素の一つとなっている.この背景には以下の事実があるといえる.(1)CT装置,特にX線CT装置が比較的安価に入手可能となった.(2)CT画像の画質が飛躍的に向上し,十分信頼のおけるものとなった.(3)CT画像は本質的に3次元情報を有している.本研究はこれらの事実に基づいて行われた.脳外科手術を正確にシミュレートすることは非常に困難であるので,ここでは簡単なシミュレーションにとどめ,主に診断に有効な表示手法の開発に取り組んだ.一方,頭蓋骨の形状異常を修復する手術シミュレーションは,以下の理由から積極的に開発を進めた.(1)X線CTでは,骨領域は計算機により安定して自動抽出が可能である.(2)骨の形状のみに注目すればよく,生体学的反応は脳外科と比べてさほど考慮しなくてもよい.(3)形状を重要視する手術では,術後の形状(頭蓋形成手術では顔・頭の形)が患者にとって重大な関心事であり,術前にあらかじめ手術の概要をディスプレイ上で説明することにより患者の了解を得て手術に望むことができるので術後のトラブルを防ぐことができる.(4)形成外科医,放射線科医の積極的な協力が得られるようになった.本論文は以下の6章から構成されている.まず,1章では医用画像,とりわけX線,MRI(核磁気共鳴)等の各種CT装置の発展,普及の状況,およびCT画像の3次元表示が持っ臨床あるいは教育への可能性について展望し,本論文の位置付けを明確にする.2章と3章では,脳外科における診断と手術計画に用いられることを目的に開発されたシステムについて述べる.まず,処理の概略及び入力画像,ハードウェア環境を2章で紹介する.本研究では,初期のX線CT装置で撮影された画像を入力画像として,ミニ・コンピュータを用いて3章で述べる各種画像処理を行った.3章では,CT画像の系列から元の3次元像の表面を生成するための画像処理手順として,(1)CT画像上での2次元輪郭線追跡,(2)抽出された輪郭線群に基づく表面の構成,(3)構成された表面の診断及び手術計画のための表示,の3つの大きな処理手順が述べられている.特に(3)では,診断支援を目的に,元々のCT画像である横断面だけでなく,傾斜断面や円筒形断面といった仮想切断面の表示手法を開発し,腫瘍,血腫の症例に適用した.これらの表示法により,単に頭蓋,疾患部等の3次元表面像が観察できるだけでなく,断面上のCT値を反映させた陰影により,より正確な疾患の診断が可能になるとの評価を医師から得た.また,手術計画のための表示法として,頭蓋表面像の(A)windowing表示法と(B)半透明表示法を開発した.windowing表示法は,外科医が手術に際して,頭蓋骨の一部を切断しそこから疾患部にメスを進める過程をシミュレートするもので,指定された頭蓋表面を表示しないことにより,そこから内部の疾患像を観察することが可能である.このとき,冠状縫合線を頭蓋表面に重ねて表示し,切開位置を明確にする機能も付加した.更に,頭蓋全体を半透明表示することにより,どの位置からも頭蓋表面と疾患部との位置関係を明らかにすることが可能である.また,脳室の形状は疾患の広がりを診断するのに有効なものであることから,脳室の3次元像も併せて表示する機能も開発した.これらの実験によって,従来CT断面像という2次元画像からのみ行われていた疾患部の診断を空間的な位置や広がりといった3次元的情報を加えた診断に拡張することが,これらコンピュータ・グラフィックスを用いたCT画像の3次元表示機能による表示例より,容易に行えることが知られる.4章と5章では,頭蓋形成外科における手術計画支援システムNUCSS(Nagoya University Craniofacial Surgical-planning System)について述べる.4章ではNUCSS における頭蓋あるいは皮膚表面の3次元表示法を示す.特に,NUCSSでは,(1)高速な頭蓋像の表示,および,(2)術後に予想される皮膚表面形状の生成に特徴があり,そのための具体的な処理・表示手法を考案する.まず,(1)では簡易な投影表示法を提案し,これによる画質低下を軽減する平滑化フィルタ処理を比較・検討する.4種類の平滑化フィルタを比較した結果,メディアンフィルタと可変重みフィルタがよい結果を示した.次に,(2)では計画された頭蓋形状から皮膚表面形状を予想する手法を開発し,実際に外科医によりNUCSS上で計画された頭蓋骨から術後予想皮膚表面像を生成し,その結果を示す.ここで提案される手法により,術後の皮膚表面像をある程度自然に生成できることが判明し,これは手術計画の評価と共に,術前における患者への手術の説明に利用可能との評価を医師より得た.5章では,NUCSSにおいて最も重要な機能の一つである,骨の切断・移動といった操作機能を実現するのに必要なボクセル型データの扱い方を検討し,実験例を示す.すなわち,まず,ディスプレイ上での頭骨投影像から骨片の切断・移動を会話的に指定,実行する操作に基づいて,3次元的な領域分割や座標変換を行うためのアルゴリズムを考案する.移動操作としては,平行移動,回転移動,および,左右反転移動を実現し,これらを組み合わせることにより,より複雑な骨移動の操作をシミュレートすることが可能であることを示す.次に,実験例として,短頭症,長頭症の症例に対し,本機能を用いて外科医が実際に立案した計画例を示し,かなり複雑な手術計画も立案することが可能であることを確かめ,本システムの有用性を明らかにする.更に,計画が決定した後,その計画を定量的に評価する方法も併せて述べる.すなわち,頭蓋形成外科では手術前後での頭蓋内容積の変化量が手術の評価によく用いられることから,術前と計画後の頭蓋内容積を計測する手法を開発し,実際の症例に適用してその有効性を検討する.また,骨切断に際し,切断位置を正確に指定する必要があることから,頭蓋表面上での2点間距離を会話的に測定する機能について述べる.最後に6章では,本論文で述べられた脳外科及び頭蓋形成外科手術の計画支援あるいは診断に利用可能な諸機能についてまとめ,残された今後の研究課題を検討する.申請者が本研究を始めた頃は,X線CT装置がそろそろ全国の病院に普及し始めた時期であり,CT装置が表示する画像は単なる人体の断面にすぎなかった.研究レベルでは,CT画像の3次元表示に関するものもいくつか報告されていたが,臨床応用となると実用化には程遠いものであった.ところが最近では,3次元再構成の機能を持たせたCT装置も市販されているようである.X線CTと共に軟部組織に有効なMRI(核磁気共鳴)- CTの普及も進んでおり,医療画像処理への期待はますます高まっている.また,本研究のような手術計画システムも一部では装置化の計画が進んでいる.このような現状から,本論文が臨床におけるCT画像の計算機処理の一つの有効な方向を示すものと考えられよう.

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:工学博士 (課程) 学位授与年月日:平成1年3月25日

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  1. 目次 (3コマ目)
13access

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000052208
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000000052324
  • DOI(NDL)
  • Text Lang
    • eng
  • NDLBibID
    • 000000216522
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL ONLINE
    • NDL Digital Collections
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