高圧力下におけるカルコゲナイド系非晶質半導体の光学的性質
この論文にアクセスする
この論文をさがす
著者
書誌事項
- タイトル
-
高圧力下におけるカルコゲナイド系非晶質半導体の光学的性質
- 著者名
-
片浦, 弘道
- 著者別名
-
カタウラ, ヒロミチ
- 学位授与大学
-
筑波大学
- 取得学位
-
工学博士
- 学位授与番号
-
博甲第456号
- 学位授与年月日
-
1987-03-25
注記・抄録
博士論文
カルコゲナイド系非晶質半導体において短距離秩序が存在し長距離秩序が無いということは周知の事実であるが、これらの情報だけでは非晶質特有の様々な物性を説明するには不十分である。そのため最近ではさらに一歩進んだ中距離構造に関する研究が盛んである。非晶質As2S3やGeS2ではX線回折のFSDPの解析から20A程度の層状の構造相関があることが示唆されている。またラマン散乱や赤外吸収からは7A程度の相開距離が得られている。一方、共有結合のネットワークに着目すれば2配位のカルコゲン原子の存在により、カルコゲナイド系非晶質半導体は基本的に低次元ネットワークを組むと考えられる。これらの構造を特徴づけているのは、分子内の強い共有結合と分子間の弱いファンデルワールス結合であり、静水圧に対する応答を見ることにより中距離構造に開する情報を得ることが期待される。 そこで我々はカルコゲナイド系非晶質半導体As2S3を基準として、それに2配位のSを加えた事による系の秩序変化、また4配位のGeを加えたことによる系の秩序変化を、高圧下における光学測定によって調べる事を目的とし、Asx-S(1-x)系及びGeS2x-As2S3(1-x)系の基礎吸収端及びラマン散乱スペクトルの静水圧依存性を、ダイヤモンドアンビルセルを用いて約50kbarまで測定した。 Asx-S(1-x)系の基礎吸収端の圧力依存性をPenn-Phillips型2振動子モデルで解析することにより、As2S3からSの組成比が増加すると共に系のネットワークの次元性が低くなってゆくことが解った。またGeS2x-As2S3(1-x)系においてはGeS2の組成比が増加すると共に系の次元性は高次元化することが解った。さらにGeS2x-As2S3(1-x)系においては20kbar付近にEoの急激な変化が観測ざれ、それにともなうヒステリシスの振舞いなどから圧力によって誘起される構造変化が示唆された。具体的にはGeS2の3次元結晶に存在する空隙構造に類似し売構造が与隔質にも存在しそれが圧力によって潰れることによるものと推察される。 またAsx-S(1-x)系のラマン散乱の圧力依存性を特にボゾンピークと呼ばれる低波数域を中心として測定し、MBモデルで解析することにより、加圧により相関距離2σが減少・することが解った。これは加圧により等方性が増すことにより、基本的に異方性を持つ中距離秩序が乱されたためと考えられる。しかし高圧下におけるX線回折による結果とは違い、相関が消失するようなことはない。これはX線回折により見られる相関は層間の相関であり、ラマン散乱等で見られる相関は基本的に層内の相関であるという見方を支持する。また音速の加圧による増加はパルスエコー法による音速測定の結果と良い一致を示しMBモデルによる解析が正当性のあるものであることが示された。しかしながらGeS2x-As2S3(1-x)系においてGeS2の組成比の大きな試料、特にGeS2に対しては音速はバルスエコー法による結果と良い一致を示さず、10kbar付近までにボゾンピークが低波数側ヘシフトするという異常な振舞いを示した。これはこの圧力域で生じると思われる構造変化と深く関わっていると考えられる。
1986
目次
- 目次 (7コマ目)