視覚の時空間情報処理の初期過程に関する心理物理学的研究

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著者

    • 舟川, 政美 フナカワ, マサミ

書誌事項

タイトル

視覚の時空間情報処理の初期過程に関する心理物理学的研究

著者名

舟川, 政美

著者別名

フナカワ, マサミ

学位授与大学

北海道大学

取得学位

文学博士

学位授与番号

甲第2839号

学位授与年月日

1991-03-25

注記・抄録

博士論文

視覚の初期過程における空間的情報処理、即ち、網膜像から有用な情報を効率的かつ高速に抽出し、原始スケッチを構成することが本論文の主題である。原始スケッチは、Marr(1982)によって提唱された計算的アプローチの中で定式化された概念であり、画像を視覚の目的に沿って内的に表現するための標準的記述である。画像から有用な情報を抽出するという観点から、現在広く、認知されているモデルが多重チャネルモデルである。このモデルに従えば、視覚の初期過程は2次元の空間周波数と時間周波数に選択的感度を有するフィルタの集合である。線形システム解析の適用によって、画像の特徴の検出には、ガボール関数型のフィルタが最適である。そのようなフィルタは、周波数領域と時間・空間領域で共に局在し、空間周波数の分析と位置の検出を最も良く両立させることができる。画像から特徴を検出しその位置を計算する仕組みは、高度視力の1つである副尺視力を利用した心理物理学的研究によって解明されつつある。これまでの研究や本論文で報告された心理物理学的実験は、運動対象に対しても適切な空間的情報処理が機能していることを示唆するものであり、空間的画像処理と運動検出をできる限り分離して扱おうとする従来のアプローチの限界を明確に示している。分析され分節化され統合される画像の特徴は、すでに時間的にも空間的にも重み付けられた平均値である。  視覚系にとっての入力とは、時空間的に展開している輝度分布であり、視覚系はそれに対し時空間的統合を行い静止したり運動している対象を検出する。この状況は、x-t平面において定義される時空間的方向性を持つフィルタを想定することによって説明される。 これはガボール関数型の時空間的フィルタであり、その感度プロファイルは、“時空間的なガウス関数の窓の中を正弦格子が運動している” ようなものになる。このガボール関数型時空間フィルタは、2次元の特定の空間周波数成分からなる対象が、その対象の軸に垂直な次元で特定の速度で運動している状況に、選択的に感度を持っている。即ち、これは、運動の検出だけでなく、その対象に対する安定した空間的情報処理の基礎を与え、位置情報の時空間的統合の線形性や位相情報の符号化を可能にする。局在性・空間周波数選択性・時間周波数選択性・方向選択性・位相選択性などの要件を満たすこのような時空間フィルタに基づいて、空間的情報処理と運動の検出の両方が可能な時空間的情報処理モデルを構想することができる。

184p.

Hokkaido University (北海道大学). 博士(文学)

目次

  1. -目次- / (0003.jp2)
  2. 1部.視覚の初期過程に関する心理物理学的モデル / p1 (0005.jp2)
  3. 1章.視覚の計算的アプローチ / p2 (0006.jp2)
  4. 2章.多重チャネル・モデルと線形システム解析 / p5 (0009.jp2)
  5. 2-1.線形システム解析 / p5 (0009.jp2)
  6. 2-2.標本化定理 / p6 (0010.jp2)
  7. 2-3.多重チャネル・モデル / p6 (0010.jp2)
  8. 2-4.視覚への適用 / p8 (0012.jp2)
  9. 3章.原始スケッチと位置検出 / p10 (0014.jp2)
  10. 3-1.原始スケッチ / p10 (0014.jp2)
  11. 3-2.空間的位置付け / p12 (0016.jp2)
  12. 4章.視覚の初期過程の生理学的基礎 / p14 (0018.jp2)
  13. 4-1.眼の光学系 / p14 (0018.jp2)
  14. 4-2.網膜と外側膝状体 / p16 (0020.jp2)
  15. 4-3.有線皮質 / p18 (0022.jp2)
  16. 5章.静止場面における空間的情報処理 / p22 (0026.jp2)
  17. 5-1.静止場面における副尺視力 / p23 (0027.jp2)
  18. 5-2.副尺視力とコントラスト、空間周波数 / p25 (0029.jp2)
  19. 5-3.位相に対する感度 / p26 (0030.jp2)
  20. 6章.空間的情報処理モデル / p28 (0032.jp2)
  21. 6-1.強度変化とフィルタリング / p28 (0032.jp2)
  22. 6-2.ゼロ交差の検出 / p30 (0034.jp2)
  23. 6-3.MIRAGE / p31 (0035.jp2)
  24. 6-4.傾きに対する選択性 / p33 (0037.jp2)
  25. 6-5.位相差の検出 / p34 (0038.jp2)
  26. 7章.運動場面における空間的情報処理 / p37 (0041.jp2)
  27. 7-1.運動場面における副尺視力 / p37 (0041.jp2)
  28. 7-2.副尺視力のための機構 / p40 (0044.jp2)
  29. 7-3.位置情報の時空間的統合 / p41 (0045.jp2)
  30. 7-4.視覚経路の時空間特性 / p42 (0046.jp2)
  31. 8章.時空間的悄報処理モデル / p47 (0051.jp2)
  32. 8-1. 時空間悄報処理モデルの要件 / p47 (0051.jp2)
  33. 8-2.Marr & Ullman(1981)のモデル / p48 (0052.jp2)
  34. 8-3.Adelson & Bergen(1985)のモデル / p49 (0053.jp2)
  35. 8-4.Watson & Ahumada(1985)のモデル / p50 (0054.jp2)
  36. 9章.初期視覚の残された諸問題 / p52 (0056.jp2)
  37. II部.視覚の初期過程に関する心理物理学的研究 / p57 (0061.jp2)
  38. 10章.位置情報の時空間的統合に関する実験 / p58 (0062.jp2)
  39. 10-1.一般的方法論 / p58 (0062.jp2)
  40. 10-2.実験I仮現運動知覚の短距離過程の位置知覚 / p65 (0069.jp2)
  41. 10-3.実験II仮現運動知覚の長距離過程の位置知覚 / p75 (0079.jp2)
  42. 10-4.実験III周期的な位置変動 / p83 (0087.jp2)
  43. 10-5.実験IV明るさと色の効果 / p101 (0105.jp2)
  44. 10-6.一般的考察 / p111 (0115.jp2)
  45. 11章.位置検出機構の時間・空間周波数特性に関する実験 / p113 (0117.jp2)
  46. 11-1.実験V正弦格子による副尺視力の測定 / p113 (0117.jp2)
  47. 11-2.一般的考察 / p127 (0131.jp2)
  48. 12章.位相差検出に関する実験 / p130 (0134.jp2)
  49. 12-1.実験VI正弦格子における位相弁別 / p130 (0134.jp2)
  50. 12-2.実験VII複合格子における位相弁別 / p136 (0140.jp2)
  51. 12-3.一般的考察 / p143 (0147.jp2)
  52. 13章.初期視覚過程における時空間情報処理モデルの概略 / p146 (0150.jp2)
  53. III部. 要旨と結論 / p162 (0166.jp2)
  54. 14章.全体的結論 / p162 (0166.jp2)
  55. 15章.要旨 / p165 (0169.jp2)
  56. 謝辞 / p166 (0170.jp2)
  57. 引用文献 / p167 (0171.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000073541
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000073738
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000237855
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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