インフルエンザウイルスの細胞培養による分離方法の確立とその疫学的解析への応用 Establishment of a method to isolate influenza virus by using a cell culture and application of the method for epidemiological analysis

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著者

    • 中村, 和幸 ナカムラ, カズユキ

書誌事項

タイトル

インフルエンザウイルスの細胞培養による分離方法の確立とその疫学的解析への応用

タイトル別名

Establishment of a method to isolate influenza virus by using a cell culture and application of the method for epidemiological analysis

著者名

中村, 和幸

著者別名

ナカムラ, カズユキ

学位授与大学

麻布大学

取得学位

獣医学博士

学位授与番号

乙第296号

学位授与年月日

1991-10-09

注記・抄録

博士論文

わが国におけるインフルエンザ流行は,おもに冬期に突発的に始まり,爆発的に拡大して行く。このような流行が毎年周期的に繰り返されているにもかかわらず,いまだにその流行実態についてさえも不明の点が多く残されている。 インフルエンザについて,その流行実態を正確に把握し,抗原変異と流行とのかかわり合いなどを明らかにしていくためには,ウイルス検索を丹念に行って,ウイルスの変異を的確に捉え,ウイルスの進化の方向を見極めて行くなど疫学的な解析を積み重ねて行くことが必要である。 このような目的でインフルエンザウイルス分離を行う場合,現在行われている方法は煩雑で,日時を要するため長期間にわたって大量の検体を効率よく,迅速に処理することは困難である。 そのため,ただちに使用可能な状態の細胞を常時十分量用意できる方法として,MDCK細胞およびESK細胞の撹はん培養による浮遊細胞培養法についての検討を行い,インフルエンザウイルス分離への応用を試みた。 また,浮遊細胞培養法の補助的手段として凍結保存細胞を直接ウイルス分離に用いる方法についても検討した。 その結果,これらの方法は,多量の検体を効率的かつ迅速に処理できる方法として,十分疫学調査に応用し得るものと思われた。 特にESK細胞については,患者検体からのウイルス分離において,MDCK細胞以上にインフルエンザウイルスに対して高い感受性を持つことが明らかになった。 また,インフルエンザウイルスの分離指標としては,ニワトリ赤血球による血球凝集素(HA)活性が通常用いられているが,分離効率を高めるためモルモット赤血球の使用について検討した。さらに,インフルエンザウイルスの特徴的な性質のひとつであるノイラミニダーゼ(NA)活性の分離指標への応用についても検討を加えた。以上のような方法を用いて,長野県内においてインフルエンザ様疾患の継続的な監視を行い疫学的解析を試みた。 また,流行前の免疫状況を知るため例年10月に健康な県内住民から血液を採取し血清抗体価の調査も行った。分離されたインフルエンザウイルスについては抗血清を用いた抗原分析を行い抗原変異の動きを明らかにした。 さらに,インフルエンザウイルスの追跡調査の中で,冬期を中心としたインフルエンザ流行の終息後,あるいは流行の末期に主流行ウイルスとは異なった型のウイルスが分離され,このウイルスが次の流行期の流行ウイルスになるという,いわゆる前駆波現象が観察された。そこで,前駆波ウイルスを捕捉することのできたA(H1N1)型およびA(H3N2)型ウイルスについては,次の流行ウイルスとの遺伝学的関連性の解明を目的にHA遺伝子についての塩基配列の解析を行った。本論文の概要は以下のとおりである。1. インフルエンザウイルス分離方法についての検討 HDCK細胞およびESK細胞は,MEM Joklik浮遊培養液に新生仔牛血清を10%,および30mg/mlのメチルセルローズ液を3%添加した培養液を基礎培養液として,MDCK細胞には29.5mg/mlのトリプトースリン酸ブロス液を10%添加した培養液,ESK細胞には100mg/mlのポリペプトンを5%添加した培養液を使用し,スピンナーフラスコを用いて37℃のふ卵器内において200rpmで撹はん培養を行うことにより良く増殖し,単離した状態の良い細胞を十分量得ることができた。 インフルエンザウイルス標準株を各種濃度の細胞浮遊液へ接種し,HA産生を観察したところMDCK細胞は5.5×10^6 cells/ml,ESK細胞は6.0×10^6 cells/mlの細胞濃度で最も良いHA産生が得られた。 そこで,インフルエンザ流行期に,それぞれの細胞について至適濃度の浮遊培養細胞を用いて患者検体からのウイルス分離を行ったところ,発育鶏卵や単層培養細胞に劣らない分離成績が得られた。 また,MDCK細胞は,低温保護剤としてジメチルスルホオキシドを10%添加した場合,-80℃保存で6カ月後も95%以上の生存率を示した。凍結保存細胞へインフルエンザウイルス標準株を接種しHA産生を調べたところ,単層培養細胞や浮遊培養細胞と同等の高い感受性を示した。また,患者検体からのウイルス分離において単層培養細胞に匹敵する成績が得られた。2. インフルエンザウイルス分離指標についての検討 モルモット赤血球HA活性,およびNA活性のインフルエンザウイルス分離指標としての有用性について検討を行った。 分離されたウイルスはすべてモルモット赤血球に対してHA活性を示したが,ニワトリ赤血球に対してはHA活性を示さない例がかなり認められた。このような傾向はA(H1N1)型インフルエンザウイルスにおいて顕著で,48.8%にもおよんでいた。A(H3N2)型およびB型インフルエンザウイルスではHA活性陽性率にほとんど差が認められなかった。しかし,いずれの型のウイルスにおいてもニワトリ赤血球に対するHA活性はモルモット赤血球に比較し低い値のものが多く,初代培養では同定に必要なHA活性の得られない例が多数認められた。このように,モルモット赤血球はニワトリ赤血球に比較し高い感受性を持ち,分離指標として優れていた, また,HA活性およびNA活性を分離指標としてウイルス分離を行い,分離指標としてのNA活性について検討したところ,HA活性が4倍以上の検体は例外なく,ほぼHA活性に見合ったNA活性を持っていたのに対し,HA活性4倍未満の検体には,NA活性を保有しているものと保有していないものとが認められた。 そして,WHO標準法での吸光度0.05以上のNA活性を持った検体からは,次代の培養により十分なHA活性を持ったウイルスが分離された。そのため,培養を打ち切る前にNA活性を測定し,吸光度0.05以上のNA活性が認められた検体については,もう1代培養を繰り返すことにより分離効率を高めることができる。3. インフルエンザ流行についての疫学的検討 県内2ケ所(松本市,須坂市)の医療定点において1986年1月~1989年7月までの間,インフルエンザ様患者についてウイルス検索を行った。また,タイ国チェンマイにおいても1986~89年まで毎年わが国の流行閑期にあたる8月に,インフルエンザ様患者のウイルス検索を行った。ウイルス分離成績から,インフルエンザウイルスなどについての流行実態を把握すると共に,インフルエンザについてはウイルス分離成績から流行期を特定し,その間に検体が採取された患者の血清抗体価とインフルエンザ感染およびワクチン接種歴などについて疫学的検討を行った。 また,流行前の免疫状況を知るため例年10月に健康な県内住民から血液を採取し血清抗体価の調査を行った。 ウイルス分離成績:医療定点における年間を通してのウイルス検索により,それぞれの地区におけるインフルエンザ流行について,流行ウイルスの種類,流行開始および終息の時期などを正確に把握することができた。また。流行ウイルスのほとんどを流行前に前駆波ウイルスとして捉えることができた。 インフルエンザウイルス以外のウイルスについても同時に病原検索を行い,インフルエンザ流行の最盛期には,インフルエンザ以外のかぜ患者は非常に少ないこと,インフルエンザ流行期の前後を中心にインフルエンザウイルス以外のウイルスによるかぜ患者が多く存在することを明らかにした。また,年毎に流行ウイルスが入れ替わるエンテロウイルスの流行についても,その実態を把握することができた。 タイ国チェンマイにおけるウイルス検索により,わが国の流行閑期におけるインフルエンザウイルスの動向が明らかになり,その冬のインフルエンザ流行について多くの示唆を得ることができた。また,インフルエンザウイルス以外のウイルスの種類は医療定点で分離されたウイルスとほぼ同じであったが,特にエンテロウイルスについてはわが国における流行ウイルスと良く一致し,エンテロウイルスについても,インフルエンザウイルスと同様にグローバルな流行の流れの中にある可能性が示唆された。 インフルエンザ流行期の患者血清抗体価とインフルエンザ感染およびワクチン接種との関係:インフルエンザ流行期に検体を採取した医療定点のインフルエンザ様患者の成績について,疫学的検討を行ったところ次のような成績が得られた。インフルエンザ流行の開始と終息の時期については,年度により2ケ月程の差が認められ,松本市は須坂市より約1~2週間程早期に認められた。 インフルエンザウイルス分離率は,全般的に若年齢層で高かったが高齢者からも高い率で分離された。そのため,インフルエンザの増幅集団として防疫対策の対象となっている児童,生徒に限らず,青壮年および高齢者についても感受性集団としての認識を新たにし,対応して行くことが必要と思われる。 インフルエンザ感染者の急性期血清抗体価は,ワクチン接種の有無に関わらず非常に低く,流行株に対して128倍以上の抗体保有者はほとんど認められなかった。インフルエンザ非感染者の急性期血清の抗体価は感染者に比較して明らかに高く,特にワクチン接種者で感染を免れていた人の多くは感染防御に十分な強い免疫を保有していた。インフルエンザ感染者の中にも多くのワクチン接種者が存在したが,ほとんどは128倍に満たない低抗体保有者であった。 また,若年齢層は基礎抗体が高く,免疫応答が鋭敏で感染により高い抗体を獲得するが,成人,特に高齢者は基礎抗体が低く,感染によっても抗体が有意に上昇しない例が多く認められた。 このように,高齢者は若年齢者に劣らず高い率でインフルエンザに感染し,しかも基礎抗体が低く,感染による抗体上昇も悪いこと,さらに積極的なワクチン接種が全くなされていないことなどが明らかになった。そのため,成人,特にインフルエンザ感染により致命的な被害を受け易い高齢者については,ワクチン接種を励行し基礎抗体をあげて行くことが必要と思われる。 インフルエンザ流行前の抗体保有状況と流行との関係:1986~89年の流行ウイルスの抗原変異はすべて連続変異の範囲内にあり,新型ウイルスの出現も無かったため,抗体保有状況からの流行ウイルスの予測は困難であった。 しかし,流行の規模については,インフルエンザウイルスの流行サイクルや前駆波ウイルスの出現状況,タイ国での分離成績などにより流行が予測されたウイルスについての抗体保有状況から,事前にある程度の推定を行うことが可能であった。また,調査を行ったすべてのウイルスに対して,低年齢層,特に5~19才の年齢層は比較的高い抗体保有率と抗体レベルを持っていたが,成人は抗体保有率,抗体レベル共に非常に低い状態にあった。そのため,現在ほとんど積極的な対策が行われていない成人層,特に高齢者については何らかの対策が必要と思われる。4. インフルエンザウイルスの抗原変異および進化 交差HI試験による抗原分析:医療定点およびチェンマイで分離されたインフルエンザウイルスについてワクチン株およびその他の標準株の抗血清を用いて抗原分析を行った。 1986~87年の流行期に医療定点で分離されたウイルスおよび前駆波ウイルスは共に,この年のワクチン株であったA/山形/120/86(H1N1)類似のウイルスであった。1987年5月に分離された前駆波ウイルスは,ワクチン株であるA/福岡/C29/85(H3N2)からやや変異したA/大阪/156/87類似のウイルスであった。その冬の流行期に分離されたA(H3N2)型ウイルスは,ワクチン株であるA/福岡/C29/85類似のウイルスとそれからやや変異したA/大阪/156/87類似のウイルスの2種類であったが,流行の主流はA/大阪/156/87類似のウイルスであった。同じ流行期に分離されたB型ウイルスは,B/長崎/3/87類似のウイルスと,B/山形/16/88類似のウイルスの2種類であったが,主流行ウイルスはB/長崎/3/87類似のウイルスであった。 1988~89年の流行期の前駆波ウイルスおよび流行期に分離されたA(H1N1)型。ウイルスの多くはA/山形/120/86類似のウイルスであったが,なかにやや変異したウイルスが混在していた。1989年3月に分離されたA(H3N2)型の前駆波ウイルスはワクチン株とはやや異なったA/北海道/20/89類似のウイルスであった。 1989年4月に分離されたB型の前駆波ウイルスは,B/愛知/5/88類似のウイルスであった。 また,1986年8月のタイ国チェンマイの検体から分離されたA(H1M1)型ウイルスは,A/山形/120/86類似のウイルスであった。わが国での流行に先立ち,すでにチェンマイで同じタイプのウイルスによるインフルエンザ流行のあったことが確認された。 1987年8月のチェンマイの検体からは,A(H1N1)型ウイルスとB型ウイルスが分離された。A(H1N1)型ウイルスについては,チェンマイで前年の8月に分離され,その冬わが国での流行ウイルスとなったA/山形/120/86類似ウイルスと,わが国における1988~89年の流行時に分離されたウイルスと同じ抗体パターンを持つウイルスとが分離された。 B型ウイルスは,B/長崎/3/87類似のウイルスであった。医療定点での調査では,B型ウイルスの前駆波を捉えることができなかったが,チェンマイではわが国での流行に先駆け,5ケ月前に同タイプのウイルスがすでに流行ウイルスとして存在していた。 1988年8月のチェンマイの検体から分離されたA(H3N2)型ウイルスは,A/福岡/C29/85に近いウイルスとそれからやや変異したウイルスとであった。前者はわが国において1987~88年の流行期に分離されたウイルスとほぼ同じと考えられるが,後者はわが国において1989~90年の流行期に分離されたウイルスと同系統のウイルスと考えられた。また,A/四川/2/87類似のウイルスも分離された。 1989年のチェンマイの検体からは,A(H1N1)型,A(H3N2)型およびB型の3種類のウイルスが分離された。A(H1N1)型ウイルスについては,A/山形/120/86類似のウイルスとA/山形/120/86からやや変異したウイルスとが存在していた。 A(H3N2)型については,A/四川/2/87類似のウイルス,A/秋田/4/88類似のわが国における1987~88年の流行ウイルス,およびA/四川/2/87,A/秋田/4/88から多少変異したわが国における1989~90年の流行ウイルスとが確認された。 B型ウイルスは,すべてB/山形/16/88類似のウイルスであった。わが国の1989~90年の流行時に分離されたウイルスは,すべて8月にチェンマイで分離されたB/山形/16/88類似のウイルスであった。 以上のように,タイ国においてはわが国における冬期を中心とした流行期に先駆け,その年の8月にはすでに同じ抗原変異ウイルスが流行ウイルスとなっていた。また,同じ流行期にわが国における過去の流行ウイルスと1~2年後の流行ウイルスとが同時に共存していた。 HA遺伝子塩基配列の解析による分子進化についての検討:前駆波ウイルスを捕捉することのできたA(H1N1)型およびA(H3N2)型ウイルスについては,ウイルスRNAを直接鋳型としてダイデオキシ法によりHA遺伝子塩基配列の解析を行い,進化系統樹を作製して,前駆波ウイルスと次の流行期における流行ウイルスとの遺伝学的関連性を明かにした。 1986年春に分離されたA(H1N1)型の前駆波ウイルス,およびその年の流行期に分離されたA(H1N1)型ウイルスは,遺伝学的に同一の起源に由来すると考えられた。1986~87年のインフルエンザ流行が終息した後,1988年春にわが国で最初に分離されたA(H1N1)型ウイルスであるA/長野/1396/88はA/山形/120/86から2個所主流の変異を生じていた。そして,その冬の1988~89年のインフルエンザ流行期に分離されたウイルスはA/長野/1396/88とは異なった側枝上に位置していた。そのため,1988年春に分離されたA/長野/1396/88は,その冬の流行ウイルスの直接的な親ウイルスとは考え難かった。 また,1986~87年のA(H1N1)型ウイルスの流行終息後,1987年春に全国でただ1例分離されたA(H3N2)型ウイルスであるA/長野/1046/87は,その冬の流行ウイルスおよびチェンマイで分離されたA/Chiang Mai/156/88と共に,遺伝学的に近縁関係にあり同じ起源に由来すると考えられた。同じく1987~88年の流行期に,東京,千葉で,また1988年8月に神奈川で分離されたウイルスは,A/長野/1046/87に代表されるグループとは異なった起源を持ち,A/四川/2/87近縁のウイルスと考えられた。また,同様に1987~88年の流行期に分離されたA/長野/184/88およびA/神戸/768/88は,A/四川/2/87からさらに進化系統樹の主流で塩基が1個変異した位置から出た同じ側枝上に位置し,明らかに前の二つのグループとは起源を異にしていた。 すなわち,前駆波ウイルスA/長野/1046/87は1987~88年の流行期における一部の流行ウイルスの親ウイルスとなってはいたが,起源を異にする他の系統のウイルスも混在していた。 今後さらに,病原検索を中心としたこのようなインフルエンザの疫学調査を継続し,インフルエンザウイルスの抗原変異,進化の方向を見極め,新型ウイルスの出現に備えることが必要と考えられる。一部の前駆波ウイルスについては,塩基配列の解析により次の流行ウイルスとの遺伝学的関連性が明らかにされ,流行閑期のウイルスの存在形式についてひとつの可能性が示されたが,遺伝学的に関連性の認められなかった前駆波ウイルスについても,その出現の生態学的意義の解明が急務と思われる。また,成人,特に高齢者のインフルエンザ感染についてその感染実態をさらに明かにし,対策についても検討を加えて行くことが必要と考えられる。

Epidemics of influenza in Japan usually occur suddenly in winter season and spread explosively and this pattern repeats every year. However much is left unknown on the detail of the epidemics. In order to know exactly details of the epidemics and its correlation to antigenic mutation of the virus, it is neccessary to accumulate the epidemiologic analysis consisting careful detection of the epidemic virus. Clarification of the year-to-year mutation of the virus and ascertainment of the direction of the virus evolution. When we try to isolate influenza viruses for this purpose, the present conventional method is so tedious and time consuming that it is difficult to manage many clinical samples effectively and rapidly collected during long period. For this reason, I studied a method of stirring suspension culture of MDCK and ESK cell lines which will provide enough amount of cells which can be used immediately, and investigated the practical application of the method for isolation of influenza virus. In addition, I investigated a method with which the cell preserved in frozen state could be directly used for the isolation of virus, which could be supplementally employed in place of the fresh suspension cell culture. According to the results of this experiment, the new method seemed to be sufficiently applicable for the epidemiologic study, as many specimens could be managed effectively and rapidy with the method. Especially it was found that ESK cell were more sensitive than MDCK cell for isolating virus from clinical specimens. To detect the haemagglutinating activity of influenza virus is an indicator of the virus growth in fertile hen's egg or cell cultures, and chicken red cells are conventionally used for the work. In this study, I also investigated the efficiency of guinea pig red cells to detect the haemagglutination by influenza virus, in order to develop a more efficient method. Application of the neuraminidase activity, which in a biological character of influenza virus and an indicator of the virus growth, for the field work of isolating virus was also investigated. By the methods described above, influenza-like diseases in Nagano Prefecture were continuously surveyed and its epidemiologic analysis was undertaken. In order to know the immune state before epidemics, blood specimens were collected from haelthy people in Nagano Prefecture in October every year, and the antibody titer of the blood sera was measured. Influenza virus isolates were analyzed antigenically by using reference antisera in order to clarify the antigenic variation of the viruses. Influenza epidemics usually occur in Japan in winter season. However viruses isolated after or at the end of epidemics in spring are antigenically different from the main epidemic viruses in the preceeding winter, and it will become the prevailing epidemic virus in the next epidemic season, which is called the hypothesis of the influenza herald wave. Phenomenon of the herald wave was observed during my follow-up studies of influenza,i.e., antigenic similarity between herald and epidemic virus strains were confirmed by using the haemagglutination inhibition [HI] test. In order to clarify the genetic relatedness between them, base sequences of viral genomes of the herald and epidemic viruses were analyzed. This experiment was performed in both of H1N1 and H3N2 type A viruses. Following is the outline of this report.1. Investigations on the method of isolating influenza virus. The basal medium for cultivating cells was MEM Joklik suspension culture-fluid supplemented with 10% of newborn calf serum and 3% of a methyl cellulose solution(30 mg/ml). A 10% of tryptose phosphate broth (29.5 mg/ml) was added to the basal medium for the culture of MDCK cells, and 5% of polypeptone solution (100 mg/ml) was added to the basal medium for the culture of ESK cells. The cells grew well in spinner flasks stirred at 200 rpm in a 37℃ incubator, and enough amount of dispersed cells in a nice conndition could be obtained. Reference strains of influenza viruses were inoculated into various concentrations of the cell suspensions and the highest HA (haemagglutinin) production was observed at the concentrations of 5.5x10^6 and 6.0x10^6 cells/ml of MDCK and ESK cell, respectively. Isolation of virus from clinical specimens obtained during influenza epidemics was undertaken by using the optimal concentration of the each cell suspension, and any results of the isolating virus were not worse than that by using the fertile hen's eggs or the monolayer cell culture. More than 95% of MDCK cells were alived at -80℃ for 6 months, if 10% of dimethyl-sulfoxide was added as a preservative. When the thawed suspensions of the freez-preserved cells were inoculated with reference influenza viruses and HA titers of the inoculated cell cultures were measured, sensitivity of the cells to the inoculated viruses was estimated equivalent to that of the monolayer cell culture or of the freshly cultured cell suspension.2. Investigations on markers of the virus growth during the work of virus isolation. Usefulness of guinea pig red blood cells for detection of the viral haemagglutinin and efficiency of the NA (neuraminidase) activity as makers of the virus growth during the virus isolation was studied. All of the isolated viruses agglutinated the guinea pig red cells but a considerable number of the virus isolates did not agglutinate the chicken red cells. This was obvious in type A(H1N1) viruses and up to 48.8% of H1N1 isolates agglutinated the guinea pig cells but not the chiken cells. On the contrary, in case of the type A(H3N2) and type B viruses, almost no difference was observed between the guinea pig and chicken cells as far as the efficiency of the virus isolation concerns. But many viral strains of H3N2 and type B showed lower haemagglutinating activity to the chiken red cells than to the guinea pig ones, and provided the chiken cells were used, the haemagglutinating titers of the primary cultures of the many viral isolates were too low to be employed for the HI (haemagglutination inhibition) test. Consequently the guinea pig red cells had a higher sensitivity to the viral haemagglutinin than the chiken red cells had, and the former was better than the latter cells to detect the virus growth during the work of isolating the virus. Efficiency of the haemagglutination and the neuraminidase tests as a marker of the virus growth in the primary culture of the virus isolation were compared, and it was found that all of the cultures with the positive haemagglutinin titers (1:4 or higher) gave the corresponding positive neuraminidase titer but some of the samples with negative haemagglutinin titer (less than 1:4) showed the positive neuraminidase activity. Moreover, inoculated cultures, the absorbance of which was 0.05 or more in the nuraminidase test, had to be passaged one more time, before their sufficient haemagglutinin titers were obtained. Therfore, rate of the virus isolation could be improved, if a primary culture, which showed 0.05 or more absorbance value in the neuramnidase test, were passaged one more time without discarding. 3. Epidemiological study of influenza epidemics Virologocal examination was performed on patients with influenza-like diseases at two fixed medical points in Nagano Prefecture during the period from January, 1986 to July,1989. In addition, patients with influenza-like diseases in Chiang Mai, Thailand was also examined in Augast, which is the interepidemic period in Japan, from 1986 to 1989. The epidemics of influenza and other viruses were surveyed based on the isolated viruses, and the epidemic periods of influenza were estimated with the results of the virus isolation. Moreover, in each epidemic of influenza defined from results of the virus isolation, serum antibody level of the patients and their history of natural infection and of vaccination were analysed from the epidemiological viewpoint. Blood samples were collected from healthy peaple in Nagano Prefecture in October every year and the antibody level was measured, in order to study the immunity level before the epidemics. Result of the virus isolation : An epidemic of each virus and its duration in each geographical area was exactly determined with isolation of virus in fixed medical points throughout the year. Almost all of the prevailing influenza viruses were recognized in the herald waves before the epidemics. Isolation of pathogenic viruses other than influenza was attempted at the same time, and it was clarified that there were very small number of cases of the non-influenza cold at the peak period of the influenza epidemics and that there were many cases with the cold infected with viruses other than the influenza before and after the period of influenza epidemics. Epidemics of the enteroviruses prevailing viruses of which varied every year, were demonstrated, also. With isolation of the viruses in Chiang Mai, Thailand, moving of the influenza virus during the interepidemic period of Japan was clarified and many foreseeing suggestions were obtained on the influenza epidemics in Japan in the next winter seasons. In case of viruses other than the influenza, isolated viruses were of similar kinds to those isolated in Japanese fixed medical points, and good correlations of epidemic viruses were found between Chiang Mai and Japan in case of the enterovirus suggesting a possible global current of prevailing viruses like in case of the influenza virus. Correlation of serum antibody titers of the patients during the epidemic period to the influenza infection and the vaccination : Epidemiological analysis of data obtained at fixed medical points, where clinical specimens were collected during the epidemic periods, gave following results. Time of beginning and ending of influenza epidemics varied from year to year by about two months, and it differed by one or two weeks between Matsumoto and Suzaka. Rate of the isolation of influenza virus from patients was generally high in the young age group, but sometimes the virus was isolated at a high rate even from the old age group. This finding may suggest that not only school children and pupils, which is an amplifying group of the influenza epidemic and subjected to the specific public health programme, but also adults and aged people should be necessarily included to the sensitive group and subjected to the prevention programme of influenza. The serum antibody titer of patients infected with influenza virus were very low at the acute phase irrespective of their vaccination history, and few of them had the antibody titer over 1:128 to the prevailing virus. The antibody titers of patients not infected with influenza were obviously higher at the acute phase of disease than those of the people infected with influenza and most of the people, who had been injected the vaccine and protected from influenza, were considered to have acquired the high immunity which could be sufficient to prevent the infection. Some patients were found infected by influenza even though they had received the vaccine, but most of them had low titers of the antibody,i.e., lower than 1:128. Basic antibody titer of young age groups were high, and after the infection they acquire higher antibody titers owing to a sensitive immune responsibility. But adults, especially aged people had a low basic antibody and many of them did not show a significant increase of their antibody titer after the infection. Thus, it was found that aged people were infected with influenza at a rate not lower than young people, that their basic antibody titers were low, and that they had not been actively immunized with the vaccine. Therefore, considering a measure for adults and especially for aged people, it seems necessary to raise their basic antibody titers with an intensitive vaccination, because they easily suffer from a fetal sick after the infection of influenza. Relationship between influenza epidemics and the antibody level of people before the epidemics : It was difficult to obtain any information to forecast the prevailing virus from the antibody level before the epidemic season, becouse the antigenic mutations of any prevailing viruses during 1986 throuh 1989 were of continuous and actually no new antigenic type was detected. However, the epidemic cycle of influenza viruses, theory of the herald wave and results of the virus isolation in Thailand gave suggestion on a virus which might prevail in Japan in the coming next winter, so that, to a certain extent, scale of the coming Japanese influenza epidemics could be estimated in advance. Against all the studied viruses, the low age group and especially young people of 5 to 19 years of age had relatively high antibody level both in percentage of individuals with the positive antybody and in their antibody titers. But adults had a very low antibody level in terms of the percentage of the antibody-peritive and of the antibody titer. Therefore, it will be noticed that the adult group, especially aged group, should be subjected to a some measure to raise the antibody titers.4. Antigenic mutation and evolution of influenza viruses Antigenic analysis with the cross HI (haemagglutination inhibition) test : Influenza viruses isolated in Japanese fixed medical points and at Chiang Mai were antigenically analyzed by using antisera raised to the viral strains contained in Japanese vaccines or other reference strains. Viruses isolated at the fixed medical points during the epidemic period of 1986/87 and viruses isolated at the herald wave in 1986 were antigenically similar to the A/Yamagata/120/86 conteined in the vaccine for the 1986/87 season. A virus strain, isolated as an expected herald wave virus in May, 1987, was antigenically similar to A/Osaka/156/87 which is somewhat different from A/Fukuoka/C29/85 contained in the vaccine for the 1987/88 season. Viruses of type A(H3N2) isolated in the winter of 1987/88 consisted two variants, one of which was antigenically similar to A/Fukuoka/C29/85 contained in the vaccine of 1987/88 and the other was similar to A/Osaka/156/87 which was somewhat different from A/Fukuoka/C29/85, but the main prevalent was A/Osaka/156/87-like viruses. Type B viruses isolated during the epidemic season of 1987/88 consisted B/Nagasaki/3/87-like and B/Yamagata/16/88-like ones, but the main prevailing virus was B/Nagasaki/3/87-like one. Most of the type A (H1N1) viruses isolated in the epidemic season of 1988/89 and in the herald wave in 1988 were antigenically similar to A/Yamagata/120/86, but slightly different variants circulated together with A/Yamagata 120/86-like virus. A virus of type A (H3N2) isolated as an expected herald wave virus in March, 1989 was antigenically similar to A/Hokkaido/20/89 which was somewhat different from the virus contained in the vaccine. A herald wave virus of type B isolated in April, 1989 was B/Aichi/5/88-like one. A virus of type A (H3N2) isolated from a clinical specimen collected in Chiang Mai, Thailand in Augast,1986 was A/Yamagata/120/86-like one, which is an evidence that an antigenically identical viruses prevailed in Chiang Mai before it prevailed in Japan. From clinical specimens of Chiang Mai in Augast, 1987, type A (H1N1) and type B viruses were isolated. It was found that, on the type A (H1N1) viruses, the A/Yamagata/120/86-like viruses which were isolated in Chiang Mai in Augast, 1987 and prevailed in Japan in the winter of 1987/88 had a same antigenic pattern as viruses isolated in Japan in the epidemic season of 1988/89. Type B viruses in Chiang Mai were antigenically similar to B/Nagasaki/3/87. The herald wave virus of B/Nagasaki/3/87-like virus was not found medical fixed point in Nagano Prefecture, but B/Nagasaki/3/87-like one existed in Chiang Mai five months before it prevailed in Japan. Type A(H3N2) viruses isolated from clinical specimens in Chiang Mai in Augast, 1988 were antigenically close to or somewhat dufferent from A/Fukuoka/C29/85. The virus antigenically close to A/Fukuoka/C29/85 was considered antigenically nearly same as those isolated in Japan in the season of 1987/88, and the virus different from the A/Fukuoka/C29/85 was supposed to be close to those isolated in Japan the season of 1989/90. From clinical specimens in Chiang Mai in 1989, three kinds of viruses were isolated.i.e., type A (H1N1), A (H3N2), and B. The type A (H1N1) viruses consisted A/Yamagata/120/86-like viruses and viruses somewhat different from A/Yamagata/120/86. The type A (H3N2) viruses consisted A/Sitchuan/2/87-like virus, A/Akita/4/88-like virus which prevailed in Japan in 1987/88 season, and Japanese prevailing virus in 1989/90 which were antigenically slightly different from A/Sitchuan/2/87 or A/Akita/4/88. All of type B viruses were B/Yamagata/16/88-like ones. All of the virus isolated in Japan in the epidemic season of 1989/90 were antigenically similar to B/Yamagata/16/88-like viruses isolated in Chiang Mai in Augast, 1990. Briefly, some mutant viruses had prevailed in Thailand in the preceeding Augast before they prevailed in Japan in the epidemic season of the following winter. In addition, viruses which prevailed in Japan one or two years before also cocirculated in Thailand. Study of evolution of influenza viruses at the molecular level by analysing the base sequence of HA genes : When the herald wave viruses were confirmed with HI test, the genetic relationship between the herald wave virus and the dominant epidemic virus in the following winter was clarified by constructing the evolutionary tree based upon the analysis of nucleotide sequence of the HA gene. In one case in H1N1 viruses in 1986, the spring isolates (herald wave viruses) were genetically close to some of the winter isolates and both isolates were considered to have originated from a same parental virus. After the epidemic in 1986/87 ceased, A/Nagano/1396/88 was the first type A (H1N1) isolate in Japan in 1988, A/Nagano/1396/88 was observed to have achieved two mainstreem change at positions 303 and 553 from A/Yamagata/120/86 which was isolated in the 1986/87 influenza season. But, epidemic viruses in the 1988/89 influenza season were located on another branch than that of A/Nagano/1396/88. Therfore, 1988/89 epidemic viruses were unlikely to be any direct descenclents of A/Nagano/1396/88 which circulated in the preceding spring. A/Nagano/1046/87, the only H3N2 isolate in Japan in the spring of 1987 after the 1986/87 influenza season, epidemic viruses in the following winter of 1987/88, and A/Chiang Mai/156/88 were located closely to each other on three branches and these three were considered genetically close and derived from a same origin. Similarly, viruses isolated in Tokyo and Chiba in the season of 1987/88 and those in Kanagawa in Augast, 1988 were determind to have derived from other origins than that of a group of viruses represented by A/Nagano/1046/87, and considered close to A/Sitchuan/2/87, while A/Nagano/184/88, and A/Kobe/768/88, both of which were isolated during the epidemic period of 1987/88, were located on the same branch derived for the stem on a mainstream change away from A/Sitchuan/2/87,i.e., they had another origin then the two former groups of H3N2 viruses. Thus, A/Nagano/1046/87, a herald wave virus in the spring of 1987 was a parental virus of a part of epidemic viruses, but other viruses derived from other origins also cocirculated in the influenza season of 1987/88. It will be necessary to continue this kind of the epidemiological survey of influenza centered in the study of the pathogenic viruses, to ascertain the antigenic mutations of influenza viruses and direction of the viral evolution and to prepare for appearance of a new type of the virus. In the genetic study of some harald wave viruses, their relationships to the succeedingly prevailed viruses were clarified by analysing the base sequenses of viral genes and a possible assumption was made on the survival of influenza virus during the interepidemic period, but on the viruses obtained in some herald waves further clarification of the ecological meaning of their appearance will be urgently needed. In addition, detail of the influenza infection of adult, especially of aged people, should be clarified and establishment of the measure to cope with the disease of that age group will be necessary.

目次

  1. 目次 / p1 (0003.jp2)
  2. I 緒言 / p1 (0008.jp2)
  3. II 材料と方法 / p3 (0010.jp2)
  4. 1.浮遊培養細胞を用いたインフルエンザウイルス分離法 / p3 (0010.jp2)
  5. 2.MDCK凍結保存細胞を用いたインフルエンザウイルス分離法 / p6 (0013.jp2)
  6. 3.インフルエンザウイルス分離指標の判定法 / p7 (0014.jp2)
  7. 4.インフルエンザ流行の疫学的測定法 / p8 (0015.jp2)
  8. 5.インフルエンザウイルスの抗原変異分析法 / p10 (0017.jp2)
  9. III 成績 / p11 (0018.jp2)
  10. 1.インフルエンザウイルス分離方法についての検討 / p11 (0018.jp2)
  11. 2.インフルエンザウイルス分離指標についての検討 / p18 (0025.jp2)
  12. 3.インフルエンザ流行についての疫学的検討 / p22 (0029.jp2)
  13. 4.インフルエンザウイルスの抗原変異および進化 / p34 (0041.jp2)
  14. IV 考察 / p43 (0050.jp2)
  15. 1.インフルエンザウイルス分離方法についての検討 / p43 (0050.jp2)
  16. 2.インフルエンザウイルス分離指標についての検討 / p50 (0057.jp2)
  17. 3.インフルエンザ流行についての疫学的検討 / p53 (0060.jp2)
  18. 4.インフルエンザウイルスの抗原変異および進化 / p68 (0075.jp2)
  19. V 総括 / p76 (0083.jp2)
  20. 1.インフルエンザウイルス分離方法についての検討 / p76 (0083.jp2)
  21. 2.インフルエンザウイルス分離指標についての検討 / p77 (0084.jp2)
  22. 3.インフルエンザ流行についての疫学的検討 / p78 (0085.jp2)
  23. 4.インフルエンザウイルスの抗原変異および進化 / p80 (0087.jp2)
  24. VI 謝辞 / p84 (0091.jp2)
  25. VII 文献 / p85 (0092.jp2)
  26. 付表(1~44) / p98 (0105.jp2)
  27. 付図(1~34) / p126 (0133.jp2)
  28. 下水からの腸内ウイルス分離 / (0182.jp2)
  29. PVP-I(イソジン液®)が無効であった流行性角結膜炎の院内感染について / (0191.jp2)
  30. 乳幼児下痢症患者からのウイルス検出 / p6 (0200.jp2)
  31. 河川水の培養細胞に及ぼす影響 / p1 (0209.jp2)
  32. クラミジアの母児垂直感染症としての問題点 / p345 (0217.jp2)
  33. Chlamydia頸管炎と右上腹部痛 / p631 (0227.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000080992
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000081200
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000245306
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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