放射光X線回折法による電磁鋼板の高温再結晶過程の動的観察 放射光X線回折法による電磁鋼板の高温再結晶過程の動的観察

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著者

    • 川崎, 宏一 カワサキ, コウイチ

書誌事項

タイトル

放射光X線回折法による電磁鋼板の高温再結晶過程の動的観察

タイトル別名

放射光X線回折法による電磁鋼板の高温再結晶過程の動的観察

著者名

川崎, 宏一

著者別名

カワサキ, コウイチ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

学術博士

学位授与番号

甲第7号

学位授与年月日

1992-03-16

注記・抄録

博士論文

 (研究の狙い)<br /> 現代の工業を支える「材料」はそれが素材の状態から出発し,圧延,成形,<br />加熱などの工程を経て実用の段階に到達するのであるが,この製造工程におい<br />て材料の性質を実用の目的に合うように改善するよう工夫がなされている.例<br />えば変圧器やモーターの鉄芯に大量に用いられている電磁鋼板(Fe-3%<br />Si合金板)においては,いわゆる鉄損が最小になるような性質が要求される<br />が,これは合金板を圧延した後の高温再結晶過程において結晶粒の方位を制御<br />することにより実現できることが知られている.<br /> このような高温加熱(1233K)中にどのような機構で再結晶が起こり,<br />再結晶粒の方位に影響を与える因子は何かを実時間,実環境の条件下で研究す<br />る試みはいまだなされていない.ただTannerらにより放射光を用いるX線トポ<br />グラフィによる再結晶過程の観察が行われた例があるが,X線フィルムによる<br />検出法を採用したため,満足すべき結果を得るに到らなかった.従って依然<br />として電磁鋼板の高温再結晶過程は不明のまま残されており,巨大粒化および結<br />晶方位集中化という特異な現象に対し,間接的,断片的情報をもとに諸学説が<br />提案されていて混沌とした状況にあるといえる.<br /> 本研究は放射光の高輝度性を生かし高温再結晶過程の連続観察を行うための<br />装置・方法を開発し,それを用いてミクロなスケールで現象の機構を明らかに<br />することを目的とする.このような観察により電磁鋼板の巨大粒化および結晶<br />方位集中化過程が把握され,工程制御による材料特性改善の可能性が開けて来<br />る.また金属材料の製造工程における組織変化の研究のための新しい手法を導<br />入することも本研究の狙いの一つである.<br /> (研究の方法)<br /> 実用材料である電磁鋼板を実際の製造工程と同じ条件下に置くための動的観<br />察用加熱炉を開発し,この炉をX線四軸回折計と高感度二次元検出器に組み合<br />わせて,「放射光極点図動的測定法」を開発し,結晶方位分布の高速変化を測<br />定する.またこの炉とトポグラフィ装置と間接型X線TVカメラを組み合わ<br />せた放射光動的ラウエトポグラフィにより,高温状態における結晶粒の大きさ<br />と形の変化,異なる結晶粒の競合成長過程を観察する.また直接型X線TVカ<br />メラを用いた放射光動的顕微トポグラフィにより,再結晶界面の移動挙動を観<br />察する.極点図測定法とトポグラフィにより電磁鋼板の高温再結晶過程のミク<br />ロな実態が総合的に捉えられることになる.<br /> (新しい知見)<br />☆手法開発<br /> 〇動的観察用加熱炉<br /> 高温加熱が可能(最高1573K)でかつ高温での温度均一性,加熱時の温<br />度追従性に優れ,X線の吸収が小さい加熱炉を開発した.温度均一性及び温度<br />追従性を改善するためヒーターには高靭性のC/Cコンポジット板を用い,セ<br />ラミックス薄板を介して試料をはさむ「サンドイッチ方式」を考案した.温度<br />の均一性は5mm×5mmの領域で1233Kにおいて±2K以内,温度追従性は<br />2K/sである.窓材は入射側はベリリウム箔,出射側はカーボン板とした.<br /> また高温再結晶過程に及ぼす歪の影響を調べるために引張り歪装置を附加し<br />た.これはパルスモーターと減速歯車によりチャックを一定速度で移動させる<br />機構を持っている.<br /> 〇放射光極点図動的測定法<br /> 結晶方位分布の高速変化を測定するためにX線四軸回折計の機構を用いて<br />Ewald球を迅速に回転させ試料の特定の反射の逆格子点が乗っている極点球と<br />の交線を移動させ,極点球上の二次元的分布を高感度二次元検出器イメージン<br />グプレートに投影する方式を考案した.結晶方位分布の時間変化はこのEwald<br />球の運動を繰り返し,その度ごとに得られる方位分布を二次元検出器の連続移<br />動により検出・記録する.実験は高エネルギー物理学研究所放射光実験施設の<br />BL-3Aにおいて行った.放射光をモノクロメータで0.06nmの波長に<br />単色化し,モノクロメータ結晶を湾曲させて試料上に集光させた.鉄の200<br />反射の極点図を記録するために円弧型の開口部を有するスクリーンを検出器の<br />直前に固定した.極点球上の10°の範囲の1回の方位分布記録に要する時間<br />は40sであった.<br /><br />☆電磁鋼板の高温再結晶過程<br /> 動的観察により以下のような新しい知見を得た.<br /> 〇放射光極点図動的測定法<br />1.1233Kに加熱直後から著しい再結晶が観察されるまでの間に潜伏期間<br /> が存在する.<br />2.潜伏期間では結晶粒が生滅する“ゆらぎ現象”が存在する.<br />3.潜伏期間を経て(110)[001]方位粒が爆発的に成長する.<br />4.試料に引張歪を加えると(110)[001]方位粒の成長が抑制される.<br /> 〇放射光動的ラウエトポグラフィ<br />1.高温再結晶過程において最初に出現するのは(110)[001]方位粒であるが,<br /> それに遅れて他の方位の結晶粒が現れる.<br />2.結晶粒の形は不規則である.<br />3.(110)[001]方位粒の成長速度は直径に換算し約0.01mm/sと他の<br /> 方位の粒の速度の約2倍である.<br />4.引張歪を附加した場合は(110)[001]方位粒は他の方位の粒より遅れて出現<br /> する.<br /> 〇放射光動的顕微トポグラフィ<br />1.再結晶界面は凹凸が多い.その移動は不均一かつ不連続で,界面の突出部<br /> から優先的に移動する.<br />2.次の3種類の典型的移動挙動がある.1)移動速度0.05?0.2mm/s<br /> の爆発的移動,2)移動速度0.01?0.02mm/sの定常的移動,<br />  3)停滞.<br /><br />☆(110)[001]方位粒はゴス方位粒とも呼ばれるが,電磁鋼板の高温再結晶過程<br />に関しては3つの学説,加熱前ゴス方位粒存在説,潜伏期間ゴス方位粒形成説,<br />成長時ゴス方位粒優先説,が提案されている.本研究により第二の学説が正し<br />いということが明かとなった.<br />☆本研究で開発した放射光極点図動的測定法は,金属材料の線材,棒材,板材<br />の加工および高温における組織変化,相変態,析出過程の観察に対しても応用<br />可能である.<br />

目次

  1. 目次 / p1 (0003.jp2)
  2. 第1章 序論 / p1 (0006.jp2)
  3. 1.1 緒言 / p1 (0006.jp2)
  4. 1.2 電磁鋼板の製造工程 / p2 (0007.jp2)
  5. 1.3 電磁鋼板の高温再結晶過程に関する従来の研究 / p4 (0009.jp2)
  6. 1.4 放射光による高温粒成長過程に関する従来の研究 / p12 (0017.jp2)
  7. 1.5 本研究の目的 / p12 (0017.jp2)
  8. 第2章 動的観察用高温加熱炉の開発 / p15 (0020.jp2)
  9. 2.1 緒言 / p15 (0020.jp2)
  10. 2.2 要求される機能 / p15 (0020.jp2)
  11. 2.3 動的観察用高温加熱炉の開発 / p16 (0021.jp2)
  12. 2.4 精密試料走査ステージ / p22 (0027.jp2)
  13. 2.5 結言 / p28 (0033.jp2)
  14. 第3章 放射光極点図動的測定法 / p29 (0034.jp2)
  15. 3.1 緒 言 / p29 (0034.jp2)
  16. 3.2 放射光極点図動的測定法の開発 / p29 (0034.jp2)
  17. 3.3 高温再結晶過程の動的観察 / p41 (0046.jp2)
  18. 3.4 結言 / p65 (0070.jp2)
  19. 第4章 放射光動的ラウエトポグラフィ / p66 (0071.jp2)
  20. 4.1 緒言 / p66 (0071.jp2)
  21. 4.2 放射光動的ラウエトポグラフィ / p66 (0071.jp2)
  22. 4.3 高温再結晶過程の動的観察 / p71 (0076.jp2)
  23. 4.4 結言 / p78 (0083.jp2)
  24. 第5章 放射光動的顕微トポグラフィ / p83 (0088.jp2)
  25. 5.1 緒言 / p83 (0088.jp2)
  26. 5.2 実験方法 / p83 (0088.jp2)
  27. 5.3 高温再結晶過程の動的観察 / p85 (0090.jp2)
  28. 5.4 結言 / p90 (0095.jp2)
  29. 第6章 考察 / p94 (0099.jp2)
  30. 6.1 高温加熱での二次再結晶のモデル / p94 (0099.jp2)
  31. 6.2 引張り歪の効果 / p97 (0102.jp2)
  32. 6.3 二次再結晶理論 / p99 (0104.jp2)
  33. 第7章 結論 / p102 (0107.jp2)
  34. 参考文献 / p106 (0111.jp2)
  35. 謝辞 / p108 (0113.jp2)
5アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000090597
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000090818
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • eng
  • NDL書誌ID
    • 000000254911
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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