数学的手法を用いた文化分析の方法について

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著者

    • 小島, 三弘 コジマ, ミツヒロ

書誌事項

タイトル

数学的手法を用いた文化分析の方法について

著者名

小島, 三弘

著者別名

コジマ, ミツヒロ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

学術博士

学位授与番号

甲第31号

学位授与年月日

1992-03-31

注記・抄録

博士論文

1.本論文の目的 本論文は、数学的な手法を用いた文化分析の方法を示すことを目的としている。  文化分析に数学的な手法を用いることの利点は、結果が数字で示されるため客観的に評価が下せることと、 客観的に評価できるため、異なった方法やデータを用いて追試が可能なことである。 そのため19世紀末のタイラー以来、数学的な方法を用いて文化を分析しようというさまざまな試みがなされてきたが、長さや重さのような量的なデータとは性質が異なる、質的なデータである文化現象を分析する方法はごく限られたものであった。  一方、コンピュータの発達により、膨大な行列演算を必要とする質的データの解析法も実用化され始め、ガットマンのScalogram Analysisや林の数量化理論、西里の双対尺度法など、質的データの新しい分析法が考案されてきた。 コンピュータの発達は、他方で、モデル・シュミレーションという方法を生みだし、データに対するトップダウン的なアプローチが可能になった。 本論分は、そのような時代的状況のもとで、現在、どのような分析が可能かを林の数量化理論と人工的人工集団(artifical population)を用いたモデル・シュミレーションの方法を用いて示し、また、将来どのような方法が必要となるかについて考察している。2.用いたデータと分析法 今回の分析には文化要素のデータべースとして、マードックが集成した全世界規模の民族文化のデータベース(“Ethnographic Atlas”)と東南アジアからオセアニア地域の文化項目データベース(『東南アジア・オセアニアにおける諸民族文化のデータベースの作成と分析』)との2種類のデータを用いた。前者では330民族、76の文化要素を、後者からは237民族、342の文化要素をそれぞれ分析の対象とした。  分析はこれらの各民族、各文化要素に、最も反応パターンを反映するように数量を与えられる数量化3類の手法を用いて、文化要素の共通性を手がかりに、民族や、文化要素の内部に潜む構造を調べた。  また、モデル・シュミレーションによる分析の例としては成人T細胞白血病感染者率(キャリア・レート)の関係やその経時的な変化、婚姻制度がガキャリア・レートに及ぼす影響などをモデル人工集団を用いて検討した。3. 結果と考察 数量化3類 による民族文化の比較分析の結果、次のようなことが分かった。 “Etbigraphic Atlas” のデータを分析したところ、文化要素は、 “狩猟・採集”、 “牧畜”、 “根菜農耕”の3つの生業形態を頂点とする三角形の中に分布する形となり、これら3種の生業とそれに関する文化要素の分布がもっとも明瞭にあらわれる違いになっていることが分かった。また、民族については、旧大陸の民族と新大陸の民族の違いが最初にあらわれ、さらに旧大陸の民族も農耕と牧畜、穀類栽培、 根茎類栽培の組み合わさり方によってアフリカ・ヨーロッパの民族からアジアを経てオセアニアの民族までの連続的な変化が明らかになった。 一方、 東南アジア・オセアニアのデータの分析では、最初に東南アジア的な特徴とオセアニア的な特徴が2分され、前者はさらに中国南部からマレー半島、インドネシアにかけての高文化的な文化要素を多く持つ民族と、その周囲にあって、狩猟・採集・焼畑農耕に関する文化要素を多く持つ民族に分かれた。 一方、 オセアニア的特徴を持つ民族は、ニューギニア・オーストラリアのグループとミクロネシア・ポリネシアのグループに分かれ、前者には狩猟や採集に関する文化要素が多く見られ、後者には漁撈や船に関する海洋的な文化要素が多く見られた。 また、両データベースから抽出された特徴は、全世界規模のデータベース(“Ethnographic Atlas”)を分析した場合、2番目の特徴としてあられるアジアからオセアニアにかけての特徴が、東南アジア・オセアニアのデータベースの場合では最初の特徴としてあらわれ、両者はほぼ同心円的な関係になっていることがよく分かった。 このように、異なる2種のデータベースの分析の結果がよく一致することは、分析の安定性や信頼性を示すものである。 モデル・シュミレーションによる分析では、HLTV-Iが現在まで存在し続けるためには従来推定されていた感染率よりもはるかに高率の感染率が必要であることが示され、キャリア率を比較することで往時の感染率を推定してみた。 また、感染率を効率に維持するメカニズムについて考察し、このウィルスが現在まで残存したシナリオを考えた。 また、将来開発されるべき方法として、データベースの構造化(リレーショナル化)やマルチ・メディア化の必要性を論じ、ファジィ論理学やエキスパート・システム、コンピュータ・グラフィックによる仮想現実(Virtual reality)といった技術が、文化分析の領域においてもさまざまな形で応用しうる可能性を指摘した。 多変量解析とモデル・シュミレーションという2つの文化分析の例から、数学的な手法を用いることの利点は次の点にあるといえる。(1) 分析結果を客観的に評価できる形で示すことができる。(2) 分析の手続きが確立しているので、他者が追試を行なったり、分  析法やデータを変えて結果がどのように変化するか調べること  ができる。(3) 多量のデータを高速に分析することができる。 これらの天は従来の文化人類学研究にはあまり見られなかったものであり、数学的アプローチが文化の研究の場においても有力な道具になりうる可能性を示している。

目次

  1. 目次 / (0003.jp2)
  2. 1 数学的な方法を用いた文化分析 / p1 (0007.jp2)
  3. 1.1 比較分析の方法 / p1 (0007.jp2)
  4. 1.2 多変量解析法について / p3 (0008.jp2)
  5. 2 Ethnographic Atlas の分析 / p13 (0013.jp2)
  6. 2.1 従来の“Ethnographic Atlas" 研究 / p13 (0013.jp2)
  7. 2.2 分析に用いた資料 / p14 (0014.jp2)
  8. 2.3 数量化3類の計算結果 / p24 (0019.jp2)
  9. 2.4 与えられた数量の分析 / p32 (0023.jp2)
  10. 2.5 従来の研究との比較 / p53 (0033.jp2)
  11. 2.6 用いる文化要素による違い / p55 (0034.jp2)
  12. 3 東南アジア・オセアニアの文化要素の分析 / p59 (0036.jp2)
  13. 3.1 分析に用いた資料 / p59 (0036.jp2)
  14. 3.2 数量化3類による計算結果 / p70 (0042.jp2)
  15. 3.3 与えられた数量の分析 / p84 (0049.jp2)
  16. 3.4 従来の分類との比較 / p172 (0093.jp2)
  17. 3.5 統計を用いた文化分析のまとめ / p187 (0100.jp2)
  18. 4 Model Simulation を用いたHTLV-I感染率の推定 / p193 (0103.jp2)
  19. 4.1 ATL(HTLV-I)とは / p193 (0103.jp2)
  20. 4.2 HTLV-Iの感染率とキャリア率-Statistic model / p196 (0105.jp2)
  21. 4.3 Model Simulation による分析-Stochastic model / p198 (0106.jp2)
  22. 4.4 Model Simulation から見たHTLV-I残存の条件 / p214 (0114.jp2)
  23. 5 全体の結論 / p217 (0115.jp2)
  24. 5.1 多変量解析による文化要素分析~ボトム・アップ的方法 / p217 (0115.jp2)
  25. 5.2 モデル・シミュレーションを用いた感染率の推定~トップ・ダウン的方法 / p218 (0116.jp2)
  26. 5.3 課題と将来的な発展の可能性 / p218 (0116.jp2)
  27. A 数量化3類の計算法 / p221 (0117.jp2)
2アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000090621
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000090842
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000254935
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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