呉茱萸の薬剤薬理学的研究

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著者

    • 小松, 健一 コマツ, ケンイチ

書誌事項

タイトル

呉茱萸の薬剤薬理学的研究

著者名

小松, 健一

著者別名

コマツ, ケンイチ

学位授与大学

富山医科薬科大学

取得学位

博士 (薬学)

学位授与番号

乙第205号

学位授与年月日

1993-03-03

注記・抄録

博士論文

現在の先進諸国における医療の分野では,新薬の開発,医療技術の向上,診断治療のための医療機器の進歩など急速な発展が見られる.このことは生活環境の改善と相まって羅患率や死亡率の低下,それに伴う平均寿命の延長となって現れている.このような医療の大きな進歩がある一方,社会環境の複雑化に伴う心身症など精神疾患の増加,人口の高齢化や食生活の変化に誘引される遺伝的・体質的要因に基づく生理的機能の失調による疾患,また,高齢者の老化に伴う諸疾患等の増加が現在の医療の当面する課題となっている.漢方医学は約2000年前の中国・漢の時代に起源を持ち,その医学理論は現代医学理論のように自然科学の思考に基盤を持つものではなく,「科学」としての属性はあるにしても自然観照法的思考に基盤を置くため,その思想体系において根本的な違いがある.そのため日本では明治時代以降,自然科学万能の思想の中で排斥されていた.しかし1970年代に現代医療,医学の未だ解決し得ない分野において漢方医療が臨床的に有用である点が評価され,現代医療の中に漢方医療の導入,すなわち漢方エキス製剤が保険適用となり,薬価に収載された.この漢方医療の採用には漢方医学の「個人の体質,症状を重視した総合的で全人的な治療指針と,自然治癒力の促進と誘導」という根本思想にあるといえる.以来医療現場で漢方医学による治療が試みられている.近年の基礎及ぴ臨床の研究成果の蓄積,とりわけ肝炎,アレルギー性疾患等の難治性疾患に対する一定の効果が報告され,従来の成分化学的研究から,さらに薬理・生理学的研究,臨床研究へと発展してきている.そして現在,現代医学と漢方医学が両者の長所を生かし弱点を補完し合いながら新しい医学・医療の概念を創造し展開していくことが重要であると考えられる.漢方薬に対する従来の研究は生薬を化学薬品抽出の原料あるいは薬効成分開発資源の場としての観点からの研究が多く,成分化学的研究に偏る傾向があり,漢方医学理論に基づいた漢方薬自体の効能,効果に関する研究は少なかった.近年,漢方薬の再評価に伴って,生薬としての価値を指向した研究の進歩が見られる(木村正康ら1968).本研究ではこれら研究の一環として漢方薬物の薬物学的特性の解明を研究主眼とし,漢方薬の薬能を薬理学的に裏付け,さらにその有効成分の薬剤薬理学的特性を明らかにする目的で研究を行った.そこで,研究材料としては,その生薬が漢方処方の主薬であり漢方的薬効が理解し易い,特徴的な含有成分が芳香環を持ったアルカロイドで検出が容易であるという条件を仮定し呉茱萸を選択した.そして,第2章では温裏去寒薬である呉茱萸の,本質的な薬効と考えられる低体温防止作用を検討することにより,漢方的薬能の薬理学的な裏付けを試み,さらに有効成分の検素を行った.第3章では呉茱萸湯の有効成分であったd-evodiamineの生物薬剤学的な検討と代謝物の同定を行った.第4章では呉茱萸の主要アルカロイドであるevocarpineについてその薬理試験ならびに生物薬剤学的な検討を行い,呉茱萸の作用に対するevocarpineの寄与について検討した.第5章では呉茱萸に含有するアルカロイドの定量法を確立し,有効成分の定量を行うことにより,呉茱萸の修治の有用性を検討した.以上のように,本研究では古典に記載され,実際臨床で使われている漢薬の本質的な薬能を薬理学的に裏付け,有効成分の薬剤薬理学的特性を明らかにした一貫性を持つ研究成果を得るに至った.

富山医科薬科大学・博士(薬学)・乙第205号・小松健一・1993/3/3

目次

  1. 目次 / (0004.jp2)
  2. 緒言 / p1 (0005.jp2)
  3. 第I章 研究背景 / p3 (0006.jp2)
  4. 呉茱萸湯の漢方的解釈 / p3 (0006.jp2)
  5. 呉茱萸の成分 / p4 (0007.jp2)
  6. 呉茱萸の薬理 / p5 (0007.jp2)
  7. 第II章 呉茱萸湯の低体温防止作用 / p6 (0008.jp2)
  8. 実験方法 / p7 (0008.jp2)
  9. 結果 / p12 (0011.jp2)
  10. 考察 / p22 (0016.jp2)
  11. 要約 / p24 (0017.jp2)
  12. 第III章 Evodiamineの体内動態 / p25 (0017.jp2)
  13. 実験方法 / p25 (0017.jp2)
  14. 結果 / p30 (0020.jp2)
  15. 考察 / p34 (0022.jp2)
  16. 要約 / p37 (0023.jp2)
  17. 第IV章 Evocarpineの一般薬理試験と体内動態 / p38 (0024.jp2)
  18. 実験方法 / p38 (0024.jp2)
  19. 結果 / p43 (0026.jp2)
  20. 考察 / p55 (0032.jp2)
  21. 要約 / p58 (0034.jp2)
  22. 第V章 呉茱萸の修治 / p59 (0034.jp2)
  23. 実験方法 / p59 (0034.jp2)
  24. 結果 / p62 (0036.jp2)
  25. 考察 / p67 (0038.jp2)
  26. 要約 / p70 (0040.jp2)
  27. 総括 / p71 (0040.jp2)
  28. 参考文献 / p73 (0041.jp2)
  29. 試薬リスト / p76 (0043.jp2)
3アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000093202
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000093428
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000257516
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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