14族元素とモリブデンの結合を持つ新規錯体の合成とその反応性に関する研究

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Author

    • 周, 大揚 シュウ, ダイヨウ

Bibliographic Information

Title

14族元素とモリブデンの結合を持つ新規錯体の合成とその反応性に関する研究

Author

周, 大揚

Author(Another name)

シュウ, ダイヨウ

University

横浜国立大学

Types of degree

博士 (工学)

Grant ID

甲第279号

Degree year

1997-12-31

Note and Description

博士論文

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次世代の化学技術を支える新機能材料として注目されている分野の一つに、有機14族化合物の化学がある。最近では、ポリシラン類など有機ケイ素化合物の機能開発、及びその実用化が極めて精力的に行われていることに加えて、周期表でケイ素元素の下に位置するゲルマニウムの化合物の性質に関する研究もまた非常に重要である。ところで、ヒドロシリル化反応に代表される有機合成や、高分子のポリシランなどの合成に関連して、遷移金属錯体の触媒作用が注目され、シリル、シリレン基の配位した遷移金属鋸体の合成と性質、それに構造解析の研究が活発に行われている。本論文の第一部では、まず、まだ比較的研究例の少ない、ポリゲルマンの最も基本的なモデルとして、テトラブチルゲルマンおよびヘキサメチルジ-i-ゲルマンを選び、ゲルマニウム―炭素およびゲルマニウム―ゲルマニウム結合の真空紫外光に対する基本的な光化学的挙動を検討した。また、関連化合物であるテトラアルキルシラン、オクタメチルトリゲルマンなどの光分解も併せて検討した。飽和炭化水素のケイ素類似体であるペルメチルポリシラン類は、特徴的な吸収極大を230~290nmに示し、この吸収帯を低圧水銀灯で励起すると、シリレンの脱離及びケイ素-ケイ素結合のホモリシスを起こしで開裂することが知られている。モノゲルマンの真空紫外光照射では、炭素-ゲルマニウム結合の切断が起きて対応するアルキルラジカルおよびゲルミルラジカルが発生し、それからの水素の引き抜きでトリアルキルゲルマンが、またカップリングでジゲルマンが生成することがわかった。このとき重水素による標級実験から生成したゲルミルラジカルはシリルラジカルと同様に再分配反応をすることが強く示唆された。ジゲルマンおよびトリゲルマンでは、ゲルミレンの脱離とゲルマニウム―ゲルマニウム結合の切断が競争的に起こり、アルキル基の鎖長が長くなるにつれて、前者の過程が優先することが明らかとなった。また、中間に 介在するゲルミルラジカルには、不均一化反応を起こす過程が存在することが示された。次に、比較的弱い電子供与性のテトラブチルシラン、テトラブチルゲルマンおよびテトラブチルスズ、電子受容体であるトリフルオロメチル置換ベンゼン存在下での光照射反応を検討した。その結果、テトラブチルスズの場合には、フッ素原子の遊離を伴ってベンジル位のブチル化が主として起こるのに対して、ゲルマンおよびシランの場合には、σ―M―C結合の加フッ素開裂が起こり、それぞれトリブチルフルオロゲルマンおよびトリブチルフルオロシランを生成することが分かり、同じ14族の間でも、元素の種類によって主反応が異なることが明らかになった。本論文の第二部ではテトラヒドリドモリブデン錯体とフェニルシランやトリルシランとの種々の条件下での反応を検討し、その結果熱反応により、予想されるケイ素-モリブデンの結合だけではなくケイ素と配位子であるdppe(dppe=Ph2PCH2CH2PPh2)のフェニル基のオルト位の炭素との間にも結合が生じた新規なダブルキレート錯体が得られることを見出した。以下、その概要について述べる。まず、テトラヒドリドモリブデン錯体[MoH4(dppe)2](1)と、フェニルシランとの種々の条件下での反応を検討し、生成する錯体の各種スペクトルによるキャラクタリゼーションと、Ⅹ線構造解析を行った。その結果鋳体1を過剰量のフェニルシラン存在下でトルエン中、110℃に加熱すると、2分子のフェニルシランが酸化的付加をした生成物2が得られたが、この錯体は、Ⅹ線結晶解析の結果、通常のフェニルシリル配位子の他に、ケイ素がモリブデンだけではなく、dppe配位子のフェニル基の二つのオルト炭素にも結合した、極めてユニークなダブルキレート構造を持った錯体であることが分かった。 さらに、この反応を、1に対して同量のフェニルシランを用いて同じ条件下で行うと、2 と同じダブルキレート骨格を持ったトリヒドリド錐体3が得られた。ひきつづき、新規錯体3の各種試薬との反応性についても検討した。錯体はフェニルシランと反応し、上述の錯体2を生じた。また、錯体3は空気に対して極めて敏感であるが、3をTHF溶液中で酸素と反応させたところ、酸素分子がside-onで配位した二酸素錯体7を与えた。7についてはIR、NMRスペクトルならびにⅩ線構造解析によってその構造を明らかにした。きらに、錯体3はギ酸、酢酸、安息香酸などのカルボン酸と反応し、単座配位のカルボキシラト配位子を持つ、ジヒドリドカルボシラト錯体9を生成した。以上、本論文では、アルキルモノーゲルマン、-ジゲルマン、―トリゲルマンの光反応性を検討し、その光化学挙動を明確にした。さらに、いくつかめケイ素-モリブデン結合を含む新規錯体を合成し、それらの構造および反応性を示した。

横浜国立大学, 平成9年12月31日, 博士(工学), 甲第279号

Table of Contents

  1. 目次 / p1 (0003.jp2)
  2. 要旨 / p1 (0005.jp2)
  3. 緒言 / p1 (0008.jp2)
  4. 第一部 第14族元素化合物の光反応および光誘起電子移動反応 / p11 (0018.jp2)
  5. 第一章 緒論 / p11 (0018.jp2)
  6. 第二章 単純なアルキル置換有機ゲルマニウム化合物および関連化合物の真空紫外光による光反応 / p12 (0019.jp2)
  7. 2-1.ぺルアルキルモノー、ジー、トリーゲルマンの真空紫外光による光反応 / p12 (0019.jp2)
  8. 2-2.ペルアルキルシランおよび環状シランの真空紫外光による光反応 / p18 (0025.jp2)
  9. 2-3.ペルアルキルシリルゲルマンおよびシリルスタナンの真空紫外光による光反応 / p22 (0029.jp2)
  10. 第三章 有機14族元素化合物の光誘起電子移動反応 / p25 (0032.jp2)
  11. 3-1.緒論 / p25 (0032.jp2)
  12. 3-2.結果と考察 / p26 (0033.jp2)
  13. 第四章 実験の部 / p30 (0037.jp2)
  14. 第二部 ケイ素とモリブデンの結合を持つ新規錯体の合成と反応 / p41 (0048.jp2)
  15. 第一章 緒論 / p41 (0048.jp2)
  16. 第二章 〔MoH₄(dppe)₂〕(1)とフェニルシランとの反応 / p47 (0054.jp2)
  17. 2-1.〔MoH₄(dppe)₂〕(1)と過剰量のフェニルシランとの反応 / p47 (0054.jp2)
  18. 2-2.〔MoH₂(SiH₂Ph){Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(2)の構造解析 / p47 (0054.jp2)
  19. 2-3.〔MoH₄(dppe)₂〕(1)と当量のフェニルシランとの反応 / p52 (0059.jp2)
  20. 2-4.〔MoH₃{Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(3)のキャラクタリゼーション / p52 (0059.jp2)
  21. 2-5.推定反応機構 / p55 (0062.jp2)
  22. 2-6.〔MoH₄(dppe)₂〕(1)とp-トリルシランの反応 / p58 (0065.jp2)
  23. 2-7.〔MoH₄(dppe)₂〕(1)とジフェニルシランとの反応 / p59 (0066.jp2)
  24. 2-8.〔MoH₃{Si(Ph)₂{(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}}(Ph₂PCH₂CH₂PPh₂)〕(6)の構造解析 / p59 (0066.jp2)
  25. 2-9.実験の部 / p64 (0071.jp2)
  26. 第三章 トリヒドリド錯体3の各種試薬との反応 / p74 (0081.jp2)
  27. 3-1.緒論 / p74 (0081.jp2)
  28. 3-2.〔MoH₃{Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(3)とフェニルーシランの反応 / p76 (0083.jp2)
  29. 3-3.〔MoH₃{Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(3)と酸素の反応 / p77 (0084.jp2)
  30. 3-4.〔Mo(η²-O₂){Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(7)の構造解析 / p77 (0084.jp2)
  31. 3-5.〔MoH₃{Si(p-tolyl){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(3)と酸素との反応 / p81 (0088.jp2)
  32. 3-6.〔MoH₃{Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(3)とカルポン酸の反応 / p82 (0089.jp2)
  33. 3-7.〔MoH₂(OCOR-O){Si(Ph){(C₆H₄)PhPCH₂CH₂PPh₂}₂}〕(9)のキャラクタリゼーション / p82 (0089.jp2)
  34. 3-8.錯体9の生成の推定機構 / p89 (0096.jp2)
  35. 3-9.錯体3とヨードメタンとの反応 / p90 (0097.jp2)
  36. 3-10.実験の部 / p91 (0098.jp2)
  37. 総括 / p102 (0109.jp2)
  38. 謝辞 / p110 (0117.jp2)
14access

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000153196
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000001087255
  • DOI(NDL)
  • Text Lang
    • jpn
  • NDLBibID
    • 000000317510
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL ONLINE
    • NDL Digital Collections
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