肝癌におけるプロテインチロシンホスファターゼPTPδの癌性変異とその意義

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著者

    • 漆原, 範子 ウルシバラ, ノリコ

書誌事項

タイトル

肝癌におけるプロテインチロシンホスファターゼPTPδの癌性変異とその意義

著者名

漆原, 範子

著者別名

ウルシバラ, ノリコ

学位授与大学

北海道大学

取得学位

博士(理学)

学位授与番号

甲第4622号

学位授与年月日

1999-03-25

注記・抄録

博士論文

本論文ではプロテインチロシンポスファターゼ(PTP)と細胞癌化との関連を知ることを目的として,肝癌におけるPTPの癌性変異と肝特異的機能発現への関与について検討した.第1章第1節では,肝癌における4種のレセプター型PTPすなわちPTPα,PTPδ,PTPγならびにLARのmRNA発現量をNorthern Blottingにて定量した.原発肝癌組織としては,代表的な癌原性アゾ色素の一つである3'-Me-DAB投与にてラヅト肝に発癌を誘発させたDAB肝癌, Solt-Farberモデルにて誘発させたラット由来の肝癌組織(以下S/F肝癌)の2種を用いた.肝癌培養細胞としては高分化型ヘパトーマであるHepG2, 低分化型の移植性腹水肝癌細胞(AH細胞)とを用いた.その結果,DAB肝癌,S/F肝癌いずれの原発肝癌組織においてもPTPδmRNA発現量のみが正常肝でのそれに比べ著しく減少しているという結果が得られた.HepG2細胞,AH細胞では,PTPδmRNAはほとんど検出感度以下のレベルまで減少していた.検討したその他のレセプター型PTPでは,そのmRNA発現量について一定した傾向は見られなかった.以上のことからPTPδ発現量の減少が肝細胞癌化に何らかの関与をしているか,あるいは肝特異的機能の発現に関与している可能性が考えられた.第1章第2節では,PTPδの肝癌との関連を更に明らかにする目的で,PTPδmRNA遺伝子をHepG2細胞にトランスフェクションした.PTPδ分子の一過性発現は確認されたが,安定発現しているクローンが得られなかったことから,クローニングの過程においてPTPδを発現している肝癌細胞が増殖できない可能性が考えられた.これは第1節での,肝癌組織あるいは肝癌細胞株において,PTPδmRNA発現量が正常組織のそれに比べて特異的に低下しているという結果を支持するものである.第2章では,PTPδノックアウトマウスにおける肝の糖代謝系酵素の解析を行った.癌の形質発現はあたかも「分化の逆行」的な様相を呈する.第1章で得られたPTPδmRNAが原発肝癌組織・培養肝癌細胞にて特異的に減少しているという知見と考え併せると,PTPδノックアウトマウス肝においても肝細胞の癌化に伴う脱分化と類似の現象が起こっているか,あるいは分化が正常に進行していない可能性が考えられた.本章では糖代謝系酵素を指標として上記の可能性を検討した.その結果,グルコース-6-ホスファターゼ活性は検討したノックアウトマウス全てにおいて,対照の正常マウス(遺伝子型,+/+)と,ほぼ同程度の活性が見られた.また,ホスホリラーゼアイソザイム,ヘキソキナーゼアイソザイムともに,その遺伝子発現は,ほぼ正常肝におけるそれと同様に行われていることが分かった.以上の結果から,ノックアウトマウス肝においても肝特異的機能の発現が正常肝と同じように営まれていると考えられた.

98p.

Hokkaido University(北海道大学). 博士(理学)

目次

  1. 目次 / p1 (0003.jp2)
  2. 略号表 / p5 (0007.jp2)
  3. 要旨 / p7 (0009.jp2)
  4. 序章 / p9 (0011.jp2)
  5. 第1章 プロテインチロシンホスファターゼの癌性変異とその意義 / p25 (0027.jp2)
  6. 第1節 ラット原発肝癌組織並びに肝癌細胞株におけるレセプター型PTP(RPTP)の発現 / p25 (0027.jp2)
  7. 1-1-1.序論 / p25 (0027.jp2)
  8. 1-1-2.材料および方法 / p27 (0029.jp2)
  9. 1-1-3.実験結果 / p33 (0035.jp2)
  10. 1-1-4.考察 / p36 (0038.jp2)
  11. 第2節 培養肝癌細胞株へのPTPδ遺伝子導入 / p44 (0046.jp2)
  12. 1-2-1.序論 / p44 (0046.jp2)
  13. 1-2-2.材料および方法 / p45 (0047.jp2)
  14. 1-2-3.実験結果 / p56 (0058.jp2)
  15. 1-2-4.考察 / p58 (0060.jp2)
  16. 1-3.この章のまとめ / p64 (0066.jp2)
  17. 第2章 PTPδノックアウトマウスにおける肝特異的糖代謝酵素の解析 / p65 (0067.jp2)
  18. 2-1.序論 / p65 (0067.jp2)
  19. 2-2.材料および方法 / p67 (0069.jp2)
  20. 2-3.実験結果 / p72 (0074.jp2)
  21. 2-4.考察 / p75 (0077.jp2)
  22. 2-5.この章のまとめ / p81 (0083.jp2)
  23. 総括と展望 / p82 (0084.jp2)
  24. 謝辞 / p86 (0088.jp2)
  25. 参考文献 / p87 (0089.jp2)
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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000172180
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000172455
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000336494
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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