複合多心構造をもつ超伝導線の磁気的不安定性および交流損失に関する研究

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著者

    • 伴野, 信哉 バンノ, ノブヤ

書誌事項

タイトル

複合多心構造をもつ超伝導線の磁気的不安定性および交流損失に関する研究

著者名

伴野, 信哉

著者別名

バンノ, ノブヤ

学位授与大学

横浜国立大学

取得学位

博士(工学)

学位授与番号

甲第343号

学位授与年月日

1999-03-25

注記・抄録

博士論文

実用超伝導導体の開発に向けての、複合多心超伝導線に関わる電磁気的な諸問題の解明と、高安定化、および低損失化のための導体・線材構造の提案が本研究の目的である。現在、実用レベルで開発が進められている超伝導コイル、例えば、大型核融合装置用コイル、磁気浮上式鉄道の車両搭載コイル、変圧器など、直流・パルス用、交流用コイルを問わず、そのほとんどでツイストの施された複合多心構造をもつ超伝導線が使われている。この多心ツイスト構造は、線に対して垂直方向の外部磁界(以下、横磁界と呼ぶ)による超伝導フィラメント同士の磁気的結合の抑制、および交流損失の低減に対し有効で、これまでに複合多心超伝導線に対する一様な外部横磁界変動による交流損失や、均一横磁界下での安定性についてはかなり明らかにされている。ところが、実用機器中で超伝導繚が経験する磁界成分は横磁界成分だけでなく、線軸に対して同方向の磁界(以下、縦磁界と呼ぷ)成分が含まれる場合も多い。さらに、大容量化を目的に超伝導導体は多心超伝導線を多数本束ね、撚りの施された集合導体の形で使用されるため、各超電導線が経験する磁界分布は一様ではなく、導体の撚りピッチに合わせて複雑に変動している。特に分布した外部磁界の安定性に与える影響を明確に示した例はない。本論文の前半は、液体ヘリウム温度において一般的に使用される金属系NbTi多心超伝導線に対し、大容量導体化の上で問題となる、縦磁界、および分布磁界の安定性に与える影響を明らかにし、導体・線材の高安定化について述べる。一方、最近、液体窒素温度での使用も可能である酸化物系超伝導線(高温超伝導線)の開発も非常に活発化している。ここ数年で線材の製造技術が著しく向上し、Bi系線材ではキロメートルオーダの長尺化も達成している。これまで酸化物超伝導線材は、臨界電流密度の向上と長尺化を中心に開発が行われ特にBi系線材では複合多心構造の線材が一般的となってきたが、フィラメントのツイストまでは行われていなかった。しかしながら、線材の低損失化を考えると、フィラメントのツイストは必須である。母材の高抵抗化もフィラメント同士の磁気的結合を切るためには欠かせない。最近では長尺化がある程度確立してきたBi系線材についてはツイスト線の開発も活発化してきており、電力用送電ケーブル等の高温超伝導体の実用的な交流応用分野において期待がもたれている。こうした背景から、酸化物系ツイスト多心線の交流損失の評価、および損失低減に関する提案は興味深いことである。本論文の後半は、酸化物系ツイスト多心線に対する交流損失の理論的評価方法の提案、定量化、および低損失化のための線材構造の提案を行う。以下、各章の構成について述べる。本論文で新しく取り上げる内容は、これまでなされてきた損失低減、安定性向上に関しての議論をふまえたものである。そこで第1章では、本論文の基礎となる事項を概説しておく。交流用NbTi複合多心超伝導線の磁気的不安定性に対する縦磁界の影響は、これまでに理論、実験の両面から検討がされており、外部縦磁界がその向きによって安定性の向上、または低下に寄与することが調べられている。直流用NbTi超伝導線についても、同様な影響が推測できる。第2章は、直流・パルス用NbTi超伝導線に対し、縦磁界の影響による磁気的不安定性について、冷却と伝熱過程、および磁束の拡散を考虜した動的な理論解析と実験の両面から検討を行った内容について述べる。第3章は、これまで明確に議論されることのなかった、交流用NbTi超伝導線における分布横磁界の安定性に及ぼす影響を理論解析と実験の両面から明らかにする。また、実際に高次多重撚り線を構成する場合を想定して、高安定化のためには、分布した磁界下においても、縦磁界効果を用いた素線内都の径方向電流分布の均一化が有効であることを示す。さらに、分布磁界下において、縦磁界成分(平均値)が変化した場合のクエンチ特性の変化を明らかにする。第4章は、ツイストの施された酸化物超伝導線の解析モデルの提案、および有限要素法への適用について詳しく述べる。開発した解析コードの妥当性を、丸線の結合損失の解析解と比較することにより検証する。また、その解析コードを用い、ツイストテープ線に対して外部磁界のみの環境下における損失特性を評価する。磁界の向きによって損失特性が大きく異なることを明らかにする。ツイスト線の交流損失特性を考察する上で、重要なパラメータの一つに挙げられるものは結合時定数である。第4章で示すような磁界の向きによる損失特性の違いは、結合時定数によって評価することが可能である。これまで、円筒形の多心線、または長方形断面のフィラメント領域をもつ多心線の結合時定数は導出されてきたが、テープ線は通常多心丸線を圧延加工して作成されるので、フィラメント領域の断面形状は楕円で近似できる。第5章では、テープ線内部のフィラメント領域を楕円形で近似して、ツイスト多心テープ線における結合時定数、および結合損失を導出する。この結果を有限要素法による数値解と比較、検証する。結合時定数が十分大きい場合には、フィラメント同士が磁気的に結合するため、多心線は単心線と同様な磁気的振る舞いを示す。従って損失特性に関して、多心線を単心線と見なして評価しても良い近似が得られる。これまでに、超伝導体のヒステリシス損失は、臨界状態モデルを仮定して解析的に導出されているが、酸化物超伝導体の場合ピン留め力が弱く、フラックスクリープの影響で、測定値が定量的には一致しないことが指摘されている。そこで第6章では、テープ線のフィラメント領域を楕円で近似し、さらに超伝導体の電流―電圧特性をべき乗則で近似して、ヒステリシス損失の評価式を導出する。得られた評価式は、有限要素法による数値解、および実験結果と比較し、妥当牲を検証するとともに損失特性を考察する。超伝導線の実用的な使用条件は、外部磁界下での通電である。第7章では、通電時の損失特性、特に外部磁界下で通電した場合の損失特性に与えるツイストの影響を中心に考察する。外部磁界振幅、輸送電流振幅、およびテープアスペクト比の影響を解析的に調べ、最小の交流損失を与える最適なツイストピッチが存在することを指摘する。

横浜国立大学, 平成11年3月25日, 博士(工学), 甲第343号

目次

  1. 目次 / p4 (0006.jp2)
  2. 第1章 複合多心超伝導線の基礎的電磁現象 / p1 (0012.jp2)
  3. 1.1 磁気的不安定性 / p1 (0012.jp2)
  4. 1.2 外部横磁界下における超伝導バルクのヒステリシス損失 / p2 (0013.jp2)
  5. 1.3 複合多心構造とツイスト / p2 (0013.jp2)
  6. 1.4 直流・パルス用、交流用超伝導線における支配的な損失成分 / p4 (0015.jp2)
  7. 1.5 多心ツイスト線の電流分布に与える自己磁界、および外部縦磁界の影響 / p5 (0016.jp2)
  8. 第2章 直流・パルス用Cu/NbTi超伝導線における縦磁界不安定性 / p7 (0018.jp2)
  9. 2.1 実験手順 / p7 (0018.jp2)
  10. 2.2 解析方法概略 / p10 (0021.jp2)
  11. 2.3 結果と考察 / p12 (0023.jp2)
  12. 2.4 結論 / p16 (0027.jp2)
  13. 第3章 交流用CuNi/NbTi超伝導線の分布磁界下での磁気的不安定性および安定化指針 / p17 (0028.jp2)
  14. 3.1 交流用CuNi/NbTi線の分布横磁界下における安定性の低下 / p18 (0029.jp2)
  15. 3.2 サンプル構成及び測定方法 / p21 (0032.jp2)
  16. 3.3 解析方法概略 / p26 (0037.jp2)
  17. 3.4 結果1-サンプルA、C、Dの比較- / p29 (0040.jp2)
  18. 3.5 結果2-サンプルB、Cの比較- / p32 (0043.jp2)
  19. 3.6 考察 / p34 (0045.jp2)
  20. 3.7 実際的磁界環境下における安定化指針 / p40 (0051.jp2)
  21. 3.8 結論 / p48 (0059.jp2)
  22. 第4章 酸化物ツイスト多心超伝導テープ線の電磁界解析モデルの構築 / p50 (0061.jp2)
  23. 4.1 超伝導体のE-j特性と等価導電率 / p51 (0062.jp2)
  24. 4.2 フィラメント領域における非等方的なオームの法則と等価テンソル導電率 / p55 (0066.jp2)
  25. 4.3 有限要素解析への適用 / p58 (0069.jp2)
  26. 4.4 交流損失の計算 / p75 (0086.jp2)
  27. 4.5 数値解析による結合損失と解析解との比較 / p77 (0088.jp2)
  28. 4.6 外部交流横磁界下における交流損失のツイストピッチ依存性 / p78 (0089.jp2)
  29. 4.7 結論 / p82 (0093.jp2)
  30. 第5章 酸化物ツイストテープ線の結合時定数と結合損失の解析的評価 / p83 (0094.jp2)
  31. 5.1 一般的な結合損失の表式 / p83 (0094.jp2)
  32. 5.2 結合時定数および結合損失表式の導出 / p85 (0096.jp2)
  33. 5.3 結合損失の解析解と数値解の比較 / p90 (0101.jp2)
  34. 5.4 結論 / p92 (0103.jp2)
  35. 第6章 酸化物テープ線のヒステリシス損失 / p93 (0104.jp2)
  36. 6.1 楕円フィラメント領域を持つテープ線の中心到達磁界 / p95 (0106.jp2)
  37. 6.2 ヒステリシス損失評価式の導出 / p97 (0108.jp2)
  38. 6.3 数値解との比較 / p100 (0111.jp2)
  39. 6.4 測定値および有限要素法による数値結果との比較 / p103 (0114.jp2)
  40. 6.5 フィラメントのヒステリシス損失への適用 / p121 (0132.jp2)
  41. 6.6 結論 / p121 (0132.jp2)
  42. 第7章 酸化物ツイストテープ線の通電時の損失特性 / p122 (0133.jp2)
  43. 7.1 自己磁界下での通電損失特性 / p123 (0134.jp2)
  44. 7.2 外部横磁界下における通電時の損失特性 / p124 (0135.jp2)
  45. 7.3 テープ線ツイストピッチの最適化 / p128 (0139.jp2)
  46. 7.4 考察 / p131 (0142.jp2)
  47. 7.5 結論 / p133 (0144.jp2)
  48. 第8章 結言 / p135 (0146.jp2)
  49. 謝辞 / p138 (0149.jp2)
  50. 参考文献 / p139 (0150.jp2)
  51. 発表文献 / p146 (0157.jp2)
  52. 付録 / p149 (0160.jp2)
7アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000172561
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000172837
  • DOI(NDL)
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000000336875
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
    • NDLデジタルコレクション
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