植物防御応答遺伝子の発現調節機構の解明に関する研究 植物 防御 応答 遺伝子 発現 調節 機構 解明

Search this Article

Author

    • 關光 セキ, ヒカル

Bibliographic Information

Title

植物防御応答遺伝子の発現調節機構の解明に関する研究

Other Title

植物 防御 応答 遺伝子 発現 調節 機構 解明

Author

關光

Author(Another name)

セキ, ヒカル

University

岡山大学

Types of degree

博士 (学術)

Grant ID

甲第1904号

Degree year

1999-03-25

Note and Description

博士論文

高等植物は病原菌の攻撃に対して種々の防御応答遺伝子の発現を誘導する。本研究では、病原菌由来シグナル物質に応答した植物防御応答遺伝子の発現調節機構の解明に向けて、エンドウとエンドウ褐紋病菌の系をモデルとして解析を行った。エンドウ褐紋病菌は、その胞子発芽液中に、エンドウの防御応答を誘導する物質(エリシター)と、防御応答を一時的に抑制する物質(サプレッサー)を分泌する。エンドウ組織にエリシターを処理するとファイトアレキシン合成に関与するフェニルアラニン・アンモニアリアーゼ(PAL) およびカルコン合成酵素(CHS) をコードする遺伝子の転写が5分以内に活性化されるが、一方、サプレッサーを処理するとこれらの遺伝子の転写は速やかに抑制されることが確認されている。このことは、細胞表層においてエリシターあるいはサプレッサーが認識された後、そのシグナルが速やかに核に伝達され、PALやCHSなどの防御応答遺伝子の転写調節が行われることを示している。エリシター応答性を示すエンドウCHS遺伝子の一つ、PSCHS1遺伝子についてエリシターおよびサプレッサー応答性シスエレメントの解析をトランジェントアッセイにより行ったところ、1)エリシタ一応答性を示すエンドウPAL・CHS遺伝子プロモーター上に保存されている塩基配列モチーフ、BoxI、BoxIIおよびG-boxが本遺伝子のエリシター応答性遺伝子発現において重要な役割を果たしていること、2) PSCHS1遺伝子プロモーターの-242~+78の領域がサプレッサー応答に関与する可能性が示唆された。次に、in vlvoフットプリント解析により、in vivoにおいてこれらの配列モチーフへの核タンパク質(転写調節因子)の結合がエリシターやサプレッサーによりどのように制御されているのかを解析した。エリシタ一応答性を示すPSPAL1,2およびPSCHS1,2遺伝子プロモーターについて調べたところ、3) エリシター処理により、これら4種のプロモーター上に共通して存在するBoxI配列部分に核タンパク質の結合が誘導されること、4) PSCHS1,2に関しては、これらのプロモーター上に共通して存在するAGCCリピート配列部分にも核タンパク質の結合が誘導されること、5) PSCHS1では、トランジェントアッセイによりその重要性が示唆されていたG-box配列部分にも核タンパク質の結合が誘導されること、6) 一方、サプレッサーを処理すると、これらエリシター処理により誘導される核タンパク質の結合が部分的に阻害されることが判明した。近年、当研究室において、エリシター処理により発現が誘導される遺伝子cDNAを多数単離し構造解析を行ったところ、その中の一つ、E84遺伝子がDofドメインと呼ばれるDNA結合ドメインを有する推定の転写制御因子をコードしうることが判明した。E84遺伝子の発現パターンをノーザンハイブリダイゼーション法により解析したところ、本遺伝子の発現は傷ストレスおよびエリシター処理により誘導されるが、サプレッサー存在下では発現誘導が顕著に抑制されることが判明した。E84タンパク質の機能を明らかにする足掛りとして、ランダムバインディングサイトセレクション解析により結合DNA塩基配列の同定を行ったところ、E84タンパク質はGAAAGあるいはGAAAAGをコアとする塩基配列に結合することが判明した。エリシター応答性を示すエンドウPAL・CHS遺伝子プロモーター上にGAAA(A)G配列が存在するかを調べたところ、いずれも転写開始点付近に共通して存在していた。次に、E84タンパク質がPSCHS1プロモーターに結合しうるかをゲルシフトアッセイにより調べたところ、GAAAG配列を複数個含む領域(-44~+36)に強く結合しうること、さらに、PSCHS1プロモーターから本領域を除去するとエリシター応答性が有意に低下した。以上の結果から、E84タンパク質がエンドウPAL・CHSをはじめとする防御応答遺伝子(群)の転写を正に制御する転写調節因子として機能している可能性が示唆された。

Table of Contents

  1. <目次> / (0003.jp2)
  2. 緒言 / p1 (0006.jp2)
  3. 本論 / p7 (0012.jp2)
  4. 第1章 実験材料 / p7 (0012.jp2)
  5. 第1節 供試植物および供試菌 / p7 (0012.jp2)
  6. 第2節 エンドウ褐紋病菌の胞子発芽液からのエリシターおよびサプレッサーの調製 / p7 (0012.jp2)
  7. 第2章 PSCHS1遺伝子のエリシター応答性シスエレメントの解析(PSCHS1プロモーターに存在する共通保存配列の機能解析) / p9 (0014.jp2)
  8. 第1節 共通保存配列への塩基置換導入のエリシター応答性に及ぼす影響(loss of function as say) / p11 (0016.jp2)
  9. 第1項 部位特異的塩基置換導入とトランジェントアッセイ用プラスミドの構築 / p11 (0016.jp2)
  10. 第2項 CATトランジェントアッセイ / p19 (0024.jp2)
  11. 第3項 結果および考察 / p23 (0028.jp2)
  12. 第2節 Gain of function as say / p25 (0030.jp2)
  13. 第1項 導入用プラスミドの構築 / p25 (0030.jp2)
  14. 第2項 結果および考察 / p30 (0035.jp2)
  15. 第3章 PSCHS1プロモーターのサプレッサー応答性およびタバコプロトプラストにおける発現 / p45 (0050.jp2)
  16. 第1節 PSCHS1プロモーターのサプレッサー応答性 / p45 (0050.jp2)
  17. 第1項 PSCHS1プロモーターからのCAT発現に及ぼすサプレッサーの効果(CAT活性の経時的変化) / p45 (0050.jp2)
  18. 第2項 35SプロモーターからのCAT発現に及ぼすサプレッサーの効果 / p46 (0051.jp2)
  19. 第3項 結果および考察 / p46 (0051.jp2)
  20. 第2節 PSCHS1プロモーターのタバコプロトプラストでの発現 / p47 (0052.jp2)
  21. 第1項 タバコプロトプラストへの遺伝子導入条件の最適化 / p47 (0052.jp2)
  22. 第2項 PSCHS1プロモーター::CAT遺伝子のタバコプロトプラストにおける発現 / p49 (0054.jp2)
  23. 第3項 結果および考察 / p51 (0056.jp2)
  24. 第4章 In vivoフットプリント解析によるエリシターおよびサプレッサー応答性シスエレメントの探索 / p57 (0062.jp2)
  25. 第1節 材料および方法 / p58 (0063.jp2)
  26. 第2節 結果および考察 / p68 (0073.jp2)
  27. 第5章 エンドウDOfタンパク質遺伝子(E84)の解析 / p89 (0094.jp2)
  28. 第1節 エリシターおよびサプレッサー処理によるE84mRNA蓄積レベルの経時的変動 / p90 (0095.jp2)
  29. 第1項 材料および方法(ノ一ザンハイブリダイゼーション) / p90 (0095.jp2)
  30. 第2項 結果 / p95 (0100.jp2)
  31. 第2節 5'RACE(rapid amplification of cDNA ends) PCR法によるE84cDNAの5'末端配列の増幅 / p96 (0101.jp2)
  32. 第1項 実験方法 / p96 (0101.jp2)
  33. 第2項 結果 / p98 (0103.jp2)
  34. 第3節 E84遺伝子のコピー数およびエンドウDofタンパク質遺伝子ファミリーの有無について / p99 (0104.jp2)
  35. 第1項 実験方法(ゲノミックサザンハイブリダイゼーション) / p99 (0104.jp2)
  36. 第2項 結果 / p102 (0107.jp2)
  37. 第4節 本章の考察 / p103 (0108.jp2)
  38. 第6章 エンドウDOfタンパク質(E84)の機能解析 / p119 (0124.jp2)
  39. 第1節 大腸菌発現系を用いたGST-E84融合タンパク質の生産 / p119 (0124.jp2)
  40. 第1項 GST-E84融合タンパク質発現用ベクターの構築 / p119 (0124.jp2)
  41. 第2項 GST-E84融合タンパク質の発現(スモールスケールでの発現誘導) / p121 (0126.jp2)
  42. 第3項 GST-E84融合タンパク質のラージスケールでの調製 / p122 (0127.jp2)
  43. 第2節 ランダムバインディングサイトセレクション法による結合DNA塩基配列の決定 / p124 (0129.jp2)
  44. 第1項 ランダムコア配列を持つ二本鎖DNA断片の調製 / p124 (0129.jp2)
  45. 第2項 グルタチオンセファロースビーズ-GST-E84タンパク質を利用したセレクション / p124 (0131.jp2)
  46. 第3項 ゲルシフトアッセイ法を利用したセレクション / p129 (0134.jp2)
  47. 第4項 セレクトされたDNA断片のサブクローニングおよびシークエンス解析 / p130 (0135.jp2)
  48. 第5項 セレクトされた各DNA断片を用いてのゲルシフトアッセイ / p131 (0136.jp2)
  49. 第3節 PSCHS1プロモーター領域由来DNA断片を用いたゲルシフトアッセイ / p132 (0137.jp2)
  50. 第1項 プローブ調整およびゲルシフトアッセイ / p132 (0137.jp2)
  51. 第2項 結果 / p133 (0138.jp2)
  52. 第4節 本章の考察 / p133 (0138.jp2)
  53. 第7章 まとめ / p145 (0150.jp2)
  54. 引用文献 / p151 (0156.jp2)
  55. 摘要 / p166 (0171.jp2)
  56. 謝辞 / p168 (0173.jp2)
7access

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000174286
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000000174562
  • DOI(NDL)
  • Text Lang
    • jpn
  • NDLBibID
    • 000000338600
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL ONLINE
    • NDL Digital Collections
Page Top