Extended Markov switching models and their applications Extended Markov Switching Models and Their Applications

この論文にアクセスする

この論文をさがす

著者

    • 袴田, 守一 ハカマタ, モリカズ

書誌事項

タイトル

Extended Markov switching models and their applications

タイトル別名

Extended Markov Switching Models and Their Applications

著者名

袴田, 守一

著者別名

ハカマタ, モリカズ

学位授与大学

総合研究大学院大学

取得学位

博士 (学術)

学位授与番号

甲第627号

学位授与年月日

2002-09-30

注記・抄録

博士論文

本論文は,非線形の金融.経済時系列の分析において1990年代以降盛んに研究が行われてきたMarkov switching モデル(以下,MSモデル)の拡張と,その拡張MSモデルの実際の金融・経済時系列データへの適用による実証分析を行ったものである.各章の構成は以下の通りである.<br /> Chapter 1. Introduction and Overview<br /> Chapter 2. Markov Switching Model<br /> Chapter 3. State Estimation and Model Identification<br /> Chapter 4. Empirical Analysis<br /> Chapter 5. Summary of Extended Markov switching Models<br /> Chapter 6. Conclusions <br /> 第1章では,実際の金融・経済時系列データを示しながら,本論文の研究を行った動機と本論文の貢献について述べている.また,本論文の中で非線形時系列に対して,一貫して用いているMSモデルの先行研究をまとめるとともに,MSモデルと関連するその他の手法についても簡単に触れている.<br /> 第2章では,既存のMSモデルとその状態空間表現を説明する.金融・経済時系列分析の分野において,Hamilton(1989)によるMSモデルの提案以降,Filardo (1994),Hamilton and Susmel(1994)らによって重要なモデル拡張が行われてきた.これらのMSモデルの基本的な考え方を概括的に説明している,また,計算技法の観点がら便利である状態空間表現とその拡張版である一般状態空間表現の導入と説明を合せて行っている.<br /> 第3章では,状態ベクトルの推定のために利用した計算アルゴリズム,パラメータ推定と,AIC基準を利用したモデル選択の説明を行っている.MSモデルではカルマンフィルタをそのまま利用することができないため,これまでにも,カルマンフィルタの拡張版として様々なフィルターとスムージング手法(non-Gaussian,Gaussian sum,Monte Carlo等)が提案されている.本章では,4章の実証分析の中で利用している手法を中心とした先行研究を概括し,それらを説明している.また,パラメータ推定の方法に触れるとともに,MSモデルのモデル選択のためのAIC基準の説明も合わせて行っている.<br /> 第4章では,MSモデルを利用した金融・経済時系列データの実証分析を以下の通り各節毎にそれぞれのトピックスと分析データを対象として行っている.<br />4.1 Trend Identification and Trading Strategy<br /> “テクニカル分析”は,金融資産価格の伝統的な分析手法として多くの実務家に利用されてきた.ここで,重要な役割を果たすのがトレンドの概念であるが,テクニカル分析の枠組みの中で,トレンド推定の方法には科学的な客観性が保証されていない.本節では,分散不均一性を考慮したトレンド推定のための拡張MSモデルを提案し,TOPIXの日次データを用いたトレーディング戦略の収益性について,提案したMSモデル利用の有効性の検証を行った.また,その実証分析の中では,トレーディング収益性についての比較対照として,他の確率モデルや移動平均戦略を用いた.<br />4.2 Time-series and Cross-sectional Volatility Analysis<br /> 金融時系列ボラティリティの分析のために,これまで様々な確率モデルが提案され,多数の実証分析が行われてきた.本節では,クロスセクションでみた株式市場の個別銘柄リターンの分布特性(分散,尖度,歪度)に焦点を当て,その分布特性の影響を外生変数として考慮した時系列ボラティリティのためのMSモデルを提案した.また,東京株式市場(TOPIX 500インデックスとその構成銘柄)の日次データを用いた実証分析を行って,既存の代表的なGARCHタイプのボラティリティ・モデルとの比較を行った.<br />4.3 Japanese Business Cycles Analysis<br /> 内閣府(旧経済企画庁)のヒストリカルDIに基づく景気判断は,データや計算基準が公開され,ある程度の客観性が確保されていることから,広く景気循環分析の指標として利用されてきた.その一方で,個別の経済データが公表されてから,ヒストリカルDIが算出されるまでに,かなりの期間が必要となる問題点も指摘されている.本節では,変数選択付き多変量MSモデルを用いて,内閣府による景気判断をトラックするような結果が得ることにあり,これによって個別データが発表された時点で逐次的にその時点での景気判断が可能となる.実証分析では,13個の景気一致指数系列それぞれの単変量MSモデルとのアウトサンプル期間での比較をQPS基準によって行った.<br />4.4 Japan Premium and Japanese Banks' Stock Volatility<br /> 1990年代後半,日本金融システムはいくつかの内外要因によって不安定な状況に直面した.そのような状況を特徴的に表していた金融指標の現象が,「ジャパンプレミアムの拡大」と「銀行株価の変動」である.これらのデータを分析する際に,観測値が定常時系列である場合には,VARモデルによる因果関係分析を直接的に適用可能であるが,本節で扱うデータの1つであるジャパンプレミアムの系列は非定常であり,従来の分析手法を利用することができない.そこで,4(=2×2)状態の2変量MSモデルを利用して,時系列の状態間の関連性についての実証分析を行い,その分析結果の金融・経済面への示唆を考えた.<br />4.5 Transmission of Volatility<br /> 円ドル為替レートと日本の株式市場は異なる金融市場であるが,日本企業の海外輸出比率の高さや近年の金融市場のグローバル化などから,これら2つの系列には何らかの関連性があると考えられる。本節では,ボラティリティに焦点を絞り,円ドル為替レートとTOPIXの日次データを用いて,2つの異なる金融市場間でのボラティリティの伝播について実証的に分析する.分析に当っては,SWARCHモデル(Hamilton and Susmel 1994)を拡張した2変量MSモデルを用いた.また,既存の代表的な2変量GARCHモデルとの比較を行うことで,提案したMSモデルの有効性を示した.<br />4.6 Self-organizing Markov Switching State Space Model<br /> 本節では,MSモデルを自己組織化状態空間モデルに組み込むことで,時系列プロセスの離散状態を表す不観測変数や未知パラメータを状態ベクトルの要素とした時変パラメータモデルとして,状態空間表現を導出した.これにより,最尤法を用いることなく状態推定が可能となった.また,実証分析としてこの自己組織化MSモデルを2つの金融・経済データ分析の問題に適用した.1つは,円ドル為替レートのボラティリティを記述するための1変量モデルであり,ここでは遷移確率力卯本銀行の市場介入という外生変数の影響によって時間変化すると考えた.もう1つは,米国とドイツの景気循環の伝播関係についての分析を,それぞれ景気拡大と景気後退という2状態を含む2変量モデルを用いて行った.<br /> 第5章では,前4章の各実証分析の中で利用した拡張MSモデルの説明をまとめて行い,また,MSモデルの1つの一般化でもあるSemi-Markovモデルについても触れた.<br /> 第6章は,まとめと今後の研究の課題と方向性を述べた.

application/pdf

総研大甲第627号

14アクセス

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000230159
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000230655
  • 本文言語コード
    • eng
  • NDL書誌ID
    • 000004096959
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
ページトップへ