学習状況把握機構を備えた対面的協調学習支援システムに関する研究

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著者

    • 小尻, 智子 コジリ, トモコ

書誌事項

タイトル

学習状況把握機構を備えた対面的協調学習支援システムに関する研究

著者名

小尻, 智子

著者別名

コジリ, トモコ

学位授与大学

名古屋大学

取得学位

博士 (工学)

学位授与番号

甲第5851号

学位授与年月日

2003-03-25

注記・抄録

博士論文

近年の計算機や情報ネットワークの普及に伴い,教育を知的に支援することを目的とした教育支援システムの構築が盛んに行われている。教育支援システムは小中学校や高校,大学などの学校教育だけではなく,社内教育や在宅学習など,様々な学習環境・学習形態・学習目的に対して構築されている.CAL(Computer Assisted Learning)では,計算機内に様々な学習コンテンツを構築することで,現実世界で学習者が教科書や問題渠などを利用して独自に学習するような個別学習環境を計算機内に実現している.ITS(Intelligent Tutoring System)では,学習者の理解状態を表す学習者モデルを基に学習者に適した指導を展開する教授戦略部を計算機内に構築することで,学習者とシステムの1対1の個別教授を可能としている, CAI(Computer Assisted Instruction)では,学習コンテンツに提示順序を定義することで特定のシナリオに沿った教材提示を実現し,教師が多数の学習者に対して一度に一般的な知識を伝授する集団教授を達成することができる.また,CSCL(Computer Supported Collaborative Learning)では,情報ネットワーク環境を利用して複数の学習者が共有できる学習空間を構築することで,学習者が相互に意見を交換しながら問題を解決する集団学習を実現できる。現実世界ではこのような様々な学習形態がそれぞれ独立して存在するのではなく,学習者は学習目的や学習状況に合わせて動的に学習形態を変更する。学習者は複数の学習形態を効率的に利用することで,効果的に知識を獲得する。しかし,従来の教育支援システムは個々の学習形態を支援するものが多く,複数の学習形態を考盧して開発されているものはほとんど存在しない。我々の目的は,仮想空間上で様々な学習形態を支援するために,ウェプ上に学習形態を自由に変更可能なシームレスな仮想学習空間を構築することである。特定の学習形態に支援対象を限定しないことで,学習者は一つの仮想空間上で永続的に学習することが可能となる。このような学習環境で学習者の学習効果をより向上させるためには,単に様々な学習形態を実現しているだけでなく,様々な学習形態にまたがる学習を継続的に支援することが要求される.<br/> 学習者がいつでも適切な学習形態で学習できるために,我々が提案する仮想学習空間はLearner, Coordinator, Assistantの3種類のエージェントを導人する。Learnerは擬似学習者であり,学習者に仮想学習空間へのインタフェースを提供する.Coordinatorは学習グループに対する教師の役割を担い,学習グループ全体に対して知識を提供する。Assistantは個々の学習者の個人教師であり,個々の学習者の学習状況に応じて異なる指導を行う,学習者はLearnerを通して適切なエージェントとコミュニケーションすることで,様々な学習形態に応じたコミュニティを形成する。本論文では,協調学習を基本学習形態とし,協調学習を補助する役割として他の学習形態を捉えたときの,CoordinatorとLearnerの学習支援機能について議論する.<br/> 協調学習とは,様々な埋解状態の複数の学習者が同一の論埋空間を共有し,議論を通してお互いの意見を交換することで,共通の目的を達成しようという学習形態であるハ脇調学習の目標は学習グループの目的を達成することであるため,学習グループの管理や知的な学習支援を通して学習グループの学習効果を保証することは有用である。このような学習グループ支援の立場では,個々の学習者ではなく,学習グループを一つの支援対象として扱うことが効果的であると想定される.本論文では,協調学習において学習グループの目的達成を支援するため,正解と正解に至る導出過程が存在する問題を対象に,学習グループの議論の状況を観察し,必要に応じて効果的な助言を生成するためのCoordinatorの機構を述べる。Coordinatorが適時適切な助言を生成するためには,支援対象,すなわち学習グループの膠着状態を瞬時に検出できる学習状況モデルが重要となる。Coordinatorは,正解とその導出過程を「正解導出の進捗状況」と「議論の広がり」の2つの視点で扱い,それぞれの視点に沿って変換したものを「解導出シナリオ」と「経路木」としてモデル化して正解導出に関する知識として保持する.議論中の発言内容から「解導出シナリオ」と「経路木」における導出箇所を特定することで,学習グループの学習状況モデルを構築する。また,検出された学習の膠着状況に対し,学習対象を高校数学の2次関数問題に限定し,新しい発想を誘発するための肋言の生成方法について述ベる。我々は補助図形が解法導出の方向性を反映していると仮定し,学習者の導出している解法と異なる方向性を示す補助図形を提示することで,図から異なる視点を発想させることを目的とする。学習グループの描いた多様な図から学習グループの正解導出の方向性を把握するため,図中の図形を概念的な関係で表現した概念モデルを導入する。<br/> 一方,議論を円滑に進行させるために,現実世界で対話しているような対面感をインタフェース上に実現させることは有用である。協調学習空間内で他の学習者の個性や理解状態を把握できることは,対話の相手を個人として認識することにつながり,人間の学習者と一緒に学習していると実感させる.また,学習考の視点から他の学習者を位匿づけることは,効率のよい知識の獲得を導く.現実世界では,他の学習者の個性や理解状態を観察し,認識することで,個々の学習者を識別・意識している。他の学習者の観察は学習者同士の直接的なインタラクションではなく,観察する学習者の一方的な情報の取得である。このようなインタラクションを実現するために,個々の学習者の個人情報を個人学習情報としてモデル化し,モバイルエージェントを用いて特定の学習者の個人学習情報を獲得できるようにする。また,学習者の他の学習者に対する興味の割合を推測し,特定の学習者への「注目」をインタフェース上の情報に反映することで,現実世界における視野に対応するface-to-faceな学習環境を構築する。現実世界で我々は常に全ての学習者を観察しているわけではなく,特定の学習者に焦点をあてていることが多い。全ての学習者の情報をインタフェース上に同等に表示するのではなく,注目対象となる学習者の情報のみを提供することで,仮想空間内での注目行為が容易になり,正解の導出に沿ったコミュニケーションが可能となる。我々は,学習者の議論への参加状態から学習者の注目の対象学習者を特定し,自動的に対象学習者のカメラ画像を取得して表示するインタフェースを構築する.

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(工学) (課程) 学位授与年月日:平成15年3月25日

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000233055
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000233586
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 000004178040
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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