InAs量子ドットの自己形成におけるSb導入効果 Sb introduction effects on self-formation of InAs quantum dots

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著者

    • 角田, 直輝 カクダ, ナオキ

書誌事項

タイトル

InAs量子ドットの自己形成におけるSb導入効果

タイトル別名

Sb introduction effects on self-formation of InAs quantum dots

著者名

角田, 直輝

著者別名

カクダ, ナオキ

学位授与大学

電気通信大学

取得学位

博士 (工学)

学位授与番号

甲第663号

学位授与年月日

2012-03-23

注記・抄録

博士論文

2011

本論文では,分子線エピタキシィ(MBE)を用いたStranski-Krastanov(SK)成長モードによるGaAs(001)基板上へのInAs 量子ドットの自己形成におけるSb 導入効果として,Sb 照射GaAsバッファ層上の高密度InAs 量子ドットの形成過程およびドット形成後のSb 照射成長中断過程についてまとめた.第 1 章では,本研究の背景として,量子ドットの基礎と応用,量子ドットの形成法の概要を説明し,高均一・高密度でかつ結晶性の高いInAs 量子ドットの形成に関する研究背景について述べた.また,本研究の目的,意義および本論文の構成について述べた.第 2 章では,MBE の概要,Sb 照射GaAs バッファ層上のInAs 量子ドットの成長過程および試料の測定評価の概要について説明した.第 3 章では,走査型トンネル顕微鏡(STM)とMBE の合体装置を用い,Sb 照射GaAs バッファ層の表面構造の観察およびその表面上のInAs 2 次元島および3 次元島(量子ドット)の成長過程のその場STM 観察について検討した.基板温度438℃におけるSb 照射GaAs バッファ層表面では,[1-10]方向に沿ったSb 原子のダイマー列構造が所々で曲折したジグザグ構造を形成していることが分かった.このような表面構造に対して3 つの(2×3)表面再構成構造について考察し,さらに2 種類の(2×3)構造から構成される(4×3)構造モデルを提案した.次に,Sb 照射GaAs バッファ層上のInAs 成長過程におけるその場STM 観察について検討した.表面のステップ密度はGaAs バッファ層上の場合よりも3 ~ 10 倍も高くなることが分かった.InAs 成長量が1 分子層(ML)から3 次元島発生前(1.64 ML)までにおいては,GaAs バッファ層上では観察されなかった微小2 次元島が多数形成され,島密度とラテラルサイズのInAs 成長量依存性を調べた結果,成長量1.56 ML までに微小2 次元島の密度は1.4×1011 cm-2 まで増加し,成長量1.56 ~ 1.64 ML では急激に減少した.InAs 1.62 ML 以降で3 次元島の急激な発生を島のステップ端近傍およびテラス上に観察し,そのラテラルサイズは微小2 次元島と同程度であった.これらの結果を基に,Sb 照射GaAs バッファ層上に特徴的な高密度3 次元核形成モデルを提案した.第 4 章では,Sb 照射GaAs バッファ層上の高密度InAs 量子ドットのcoarsening 過程について検討した.Sb 照射量を増加させると,InAs 成長量が2 ML 程度まではドットは高密度化し,3 ML まではドット同士の合体(コアレッセンス)によるドットの巨大化は抑制され,ライプニング過程によるドット密度の減少が起こることを明らかにした.また,このライプニング過程は,近接したドット間の歪み相互作用によって引き起こされることを示した.さらにInAs 成長量が3 ~ 5 ML では,平均ドット高さはSb 照射量にほとんど依存せずに同程度のドット高さ(約10 nm)に飽和し,かつドット密度も同程度の値(1.2×1011 cm-2)に飽和することが分かった.このようなInAs 成長量の増加によるドットサイズとドット密度の飽和現象は,Sb 照射のない通常のGaAs バッファ層上においても観測される場合があるが,その飽和高さと飽和密度はSb 照射GaAs バッファ層上の方が大きくなる傾向にあり,Sb 照射GaAs バッファ層およびSb 原子を含むInAs 濡れ層の導入による圧縮歪みの低下によるものであることを示した.第 5 章では,X 線回折(XRD)計とMBE の合体装置を用い,Sb 照射GaAs バッファ層上のInAs 量子ドット成長過程およびその後の成長中断におけるInAs 量子ドット構造のその場XRD 測定について検討した.InAs の2 次元成長から3 次元成長への遷移において,ドット内部の格子定数の増大とドット高さの増大を観察し,その後の成長量の増加につれてドット高さが飽和し,自己サイズ制限が引き起こされたことを明瞭に観察した.また,コアレッセンスによる巨大ドットとコヒーレントなドットを分離した評価解析を行い,InAs 成長過程およびAs 照射成長中断における巨大ドットの形成の様子を観測し,巨大ドットの形成割合の増大を示した.次に,巨大ドットの抑制を目的として,InAs 量子ドット成長後のSb 照射による成長中断法を検討し,巨大ドット形成割合はAs 照射成長中断に比べて低下したことを見出した.特に,InAs 成長量を調整したドットのSb 照射成長中断では,巨大ドットを完全に抑制することができた.さらに,Sb 照射成長中断を施し,GaAs 層で埋め込み成長を行った高密度ドット試料のフォトルミネッセンス(PL)測定を行った結果,PL 強度はAs 照射成長中断を行った試料よりも約2.4 倍増大し,InAs 量子ドットの結晶性の改善に有効な手法であることを示した.第 6 章では,本研究で得られた結果および考察をまとめ,今後の課題について述べた.

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000560197
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000562404
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 023851724
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL ONLINE
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