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ナノスケールでの希ガス吸着膜の滑り運動 Nanoscale Sliding Motion of Noble Gas Films

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著者

    • 小林, 甫 コバヤシ, ハジメ

書誌事項

タイトル

ナノスケールでの希ガス吸着膜の滑り運動

タイトル別名

Nanoscale Sliding Motion of Noble Gas Films

著者名

小林, 甫

著者別名

コバヤシ, ハジメ

学位授与大学

電気通信大学

取得学位

博士 (理学)

学位授与番号

甲第666号

学位授与年月日

2012-03-23

注記・抄録

博士論文

馴染み深い現象である摩擦現象は未解明な点も多く,摩擦機構の理解は理学的興味のみならず工学的にも重要である.近年の計算機の発達や原子間力顕微鏡を始めとする新しい実験法の開発により,微視的なアプローチから機構の解明を目指すナノトライボロジー研究が発展している.ナノトライボロジー研究の中で物理吸着膜の滑り運動の研究は,基板の選択により吸着ポテンシャルを,また,温度,吸着膜の面密度により膜構造を制御できるために,摩擦機構の理解に重要な役割を担うと期待されている.本論文は,水晶マイクロバランス(QCM)法を用いて,膨潤単結晶グラファイト基板上のKr 吸着膜,合成単結晶マイカ基板上のKr 吸着膜の滑り運動の研究成果を報告したものである.第1 章では,微視的なアプローチからの摩擦研究の必要性について述べる.第2 章では,本研究に関連する先行研究を紹介する.QCM法を用いてAu 基板上のKr 吸着膜について,Krim のグループはKr 吸着膜が基板振動に対してある程度滑ること,Mistura のグループは基板振動による外力に対するKr 吸着膜のピン止め効果等を報告している.また,吸着膜の滑り運動の研究ではないが,Hiranoらによりマイカ-マイカ間の界面摩擦が結晶面間の整合性に強く影響を受けることが明らかにされている.第3 章では,本研究で利用したQCM 法の原理とその測定システムについて述べる.実験ではAT-cut 水晶振動子,音叉型水晶振動子の2 種類の水晶振動子を使用した.AT-cut 水晶振動子は,電極基板に交流電圧を加えると振動数MHz で共振して横ずれ振動を起こす.一方,音叉型水晶振動子は振動数kHz で共振して屈曲振動を起こす.共振振動数の低下が基板振動に追従する吸着膜の質量に比例することにより,吸着膜の滑り運動を測定する.本実験の特徴の1 つは,2 つの異なる振動子を利用したことである.第4 章では,グラファイト基板とマイカ基板の試料作製方法と,QCM法の具体的な実験法を説明する.これまでの希ガス吸着膜のQCM 法では,吸着基板は主に金属蒸着膜基板が使用されていた.本研究では膨潤単結晶グラファイト,合成単結晶マイカを水晶振動子に圧着する方法を開発し,振動方向と結晶軸を制御するために単結晶基板を利用した.第5 章では,実験結果と議論を述べる.膨潤単結晶グラファイト基板上のKr 吸着膜の実験では,主に吸着膜の滑り運動の1) 吸着膜の構造依存性,2) 基板結晶に対する滑り方向依存性,3) 振動数依存性の3 点を報告する.実験の結果,単層吸着膜は基板振動にほとんど追従せず,吸着膜の整合相-不整合相の構造転移により滑り運動は大きく変化しないこと,滑り方向に依存しないこと,また,MHz とkHz の測定では有意な差がないことを明らかにした.さらに,グラファイト基板上のXe 吸着膜の実験でも同様の結果を得た.これらの結果に対して,単層膜領域には不均一吸着膜のモデル,また,2 層膜領域には,多層膜の層間ごとに摩擦力が働くとしたモデルを用いて第1 原子層および第2 原子層のスリップ時間の解析を行った.解析の結果,単層膜では,整合相よりも不整合相の摩擦力が大きいことが明らかになった.2層膜では,基板-第1 原子層間の摩擦力は大きく,第1原子層は基板振動に対して滑らないのに対して,第1 原子層-第2 原子層間の摩擦力は小さく,第2 原子層は第1原子層上を滑ることが明らかになった.以上のグラファイト基板の結果は,これまで基板上の低面密度の吸着膜の滑り運動を考える際に用いられていた洗濯板モデルでは説明が困難であり,新しい吸着膜の滑り運動のモデルの必要性を示唆している.第5 章の後半では,基板の結晶軸に対する振動方向が異なる2 つの合成単結晶マイカ基板上のKr 吸着膜の実験結果を述べる.振動振幅が0.4 nm のとき,振動方向がマイカのa 軸方向と平行な試料では単層吸着膜は基板振動に対して滑るが,振動方向がa 軸に対して30 °傾いた試料では滑らないこと,基板振幅が4 nm のときはどちらの試料でも吸着膜は基板振動に対して滑ることを明らかにした.マイカ基板の結果より,吸着膜の滑り運動は基板振幅と運動方向の次の吸着サイトまでの距離の関係に強く影響を受けることが明らかとなった.さらに,グラファイト基板の結果と比較することにより,吸着原子が感じる基板表面原子の格子変調が吸着原子の熱振動エネルギーよりある程度大きい場合にのみ,吸着膜の滑り運動は上述した基板振幅と吸着サイトまでの距離の関係に依存することを明らかにした.第6 章では本論文の結論をまとめた.以上,本論文では,膨潤単結晶グラファイト基板,合成単結晶マイカ基板上の希ガス吸着膜について,面密度,温度,滑り方向等を制御したQCM 法による吸着膜の滑り運動の測定結果の詳細を報告している.測定結果より,吸着膜の滑り運動は,必ずしも整合な吸着膜よりも不整合な吸着膜の摩擦力が小さいとは限らないこと,基板表面原子の格子変調が大きいときには,基板振幅と吸着膜の運動方向の吸着サイトまでの距離に強く影響されることが明らかになった。

2011

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各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    500000560200
  • NII著者ID(NRID)
    • 8000000562407
  • 本文言語コード
    • jpn
  • NDL書誌ID
    • 023851755
  • データ提供元
    • 機関リポジトリ
    • NDL-OPAC
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