Studies on neuropathogenesis and neuroanatomical distribution of disease-specific prion protein in cattle experimentally infected with bovine spongiform encephalopathy 牛海綿状脳症実験感染牛における神経病理発生と異常型プリオンタンパク質の神経解剖学的分布に関する研究

Author

    • 福田, 茂夫

Bibliographic Information

Title

Studies on neuropathogenesis and neuroanatomical distribution of disease-specific prion protein in cattle experimentally infected with bovine spongiform encephalopathy

Other Title

牛海綿状脳症実験感染牛における神経病理発生と異常型プリオンタンパク質の神経解剖学的分布に関する研究

Author

福田, 茂夫

University

北海道大学

Types of degree

博士(獣医学)

Grant ID

乙第6898号

Degree year

2013-12-25

Note and Description

牛海綿状脳症(BSE:Bovine spongiform encephalopathy)は、1986年に英国で初めて確認された。その後、BSEは、ヨーロッパ、アジアおよび北アメリカ諸国に広がった。1996年に報告された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、BSEプリオンが混入した牛肉製品を消費したことに起因すると考えられている。従って、英国で発生して世界各地に広がった定型BSE (C-BSE: classical BSE) の病理発生を解明することは重要である。しかしながら、牛を用いた実験感染の実施が難しいため、牛におけるC-BSEの病理発生に関する知見は、未だ十分でない。それゆえ、著者はC-BSEの神経病理発生を明らかにするため、C-BSE実験感染牛の臨床症状、PrPScの蓄積および空胞病変の関連を調査した。さらに、2003年以降、非定型BSEと呼ばれる、C-BSEとは病型の異なるBSEの存在が日本を含め多くの国で報告された。そこで本論文では、日本で見つかったL型様非定型BSEであるBSE/JP24の特徴を、牛への実験感染により解析した。第1章では、中枢神経のPrPSc蓄積の経時変化と病気の臨床経過の関連性を評価するため、3 つのC-BSE 分離株を脳内接種したホルスタイン種牛の中枢神経系におけるPrPScの分布を解析した。接種10 ヶ月後の牛では、PrPScの沈着は脳幹部および視床で検出されたが、空胞病変は認められなかった。接種16 および18 ヶ月後では、わずかな空胞病変が脳幹部と視床に検出されるが、大脳皮質には見られなかった。臨床症状を示す接種20 から24 ヶ月後において、強いPrPScの沈着が脳および脊髄の至る所で認められた。臨床症状が現れる平均月数は接種後19.7 ヶ月であり、平均生存期間は接種後22.7 ヶ月であった。これらの知見は、BSE の臨床症状が明らかになる約10 ヶ月前にPrPScの蓄積が検出されることを示している。C-BSE 発症牛は音への過敏症状のような聴覚異常が見られることから、第2 章では、著者はC-BSE 接種牛の聴性脳幹部における神経病理学的変化に焦点をあてて解析した。臨床症状が現れる前(接種3、10、12 および16 ヶ月後)では、聴性脳幹神経核における空胞変化は無いか軽度であり、PrPScの沈着はわずかであった。同じく臨床症状を呈する前の接種後18 および19 ヶ月後に安楽殺した2 頭の牛では、聴性脳幹経路において、軽度の空胞変性と中程度のPrPScの蓄積が見られた。臨床症状を示した牛(接種20 ヶ月以降)では、他の聴性脳幹神経核および内側膝状体に比較し、下丘核ではスポンジ状変化が顕著であった。これらの病理学的発見は、PrPScの蓄積が付随するスポンジ状病変に特徴づけられる神経病理学的変化は、聴覚過敏と関連しているかもしれない。牛のBSE病原因子は英国に端を発する一つの株と考えられてきた。しかしながら、神経病理学的および分子表現型の異なる非定型BSE が近年欧州諸国、北アメリカおよび日本で報告されている。第3 章では、日本で確認されたL 型様非定型BSE であるBSE/JP24 の特徴を明らかにするため、著者はBSE/JP24 症例の脳乳剤をホルスタイン種に接種し、病気の臨床経過に加え、生化学的および神経病理学的特徴を調査した。BSE/JP24 分離株はホルスタイン種牛に伝達した。潜伏期間、神経病理学的特徴および宿主の異常プリオンタンパク質の分子的性質に基づき、BSE/JP24 プリオンの性質は、従来型BSE プリオンから明らかに区別でき、イタリアで見つかった牛アミロイド性海綿状脳症に酷似している。結論として、本研究は、脳内接種した牛を用いて、臨床症状、PrPScの蓄積および空胞病変を解析することで、C-BSE の病理発生の一部分を明らかにした。さらに、本研究は、日本のL 型様非定型BSE であるBSE/JP24 の生化学的および神経病理学的特徴を明らかにした。本研究の成果は、BSE の再発生のリスクだけでなく、国民へのBSE のリスクを低減するためのBSE のリスク解析とリスク管理に重要な情報を提供する。

(主査) 教授 堀内 基広, 特任教授 梅村 孝司, 教授 大橋 和彦, 教授 苅和 宏明

獣医学研究科

8access

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    500000731382
  • NII Author ID (NRID)
    • 8000001574601
  • DOI(JaLC)
  • DOI
  • Text Lang
    • eng
  • Source
    • Institutional Repository
    • NDL Digital Collections
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