食塊量の増減に伴う嚥下感覚の変化―お茶を用いた実験

  • 宮岡 里美
    新潟市桑名病院リハビリテーション部 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻摂食環境制御学講座顎顔面機能学分野
  • 宮岡 洋三
    新潟医療福祉大学医療技術学部健康栄養学科
  • 山田 好秋
    新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻摂食環境制御学講座顎顔面機能学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in sensation of swallowing by increasing and decreasing bolus volume-Experiments with tea

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抄録

<p>嚥下機能の感覚的側面に対する理解は,その運動的側面に比較して未だ不十分である.とりわけ,感覚評価の対象となる意識レベルの現象については,これまで実験的研究は少ない.本研究では,健常者に「飲み易さの程度」を評価させる手法を用いて,食塊量と嚥下感覚の関係を調べた.実験材料として室温のお茶を用いた.2種の実験によって,1)一回で最も容易に飲み込める量(至適一回嚥下量,OVS),2)一回で飲み込める最大の量(最大一回嚥下量,MVS),そして3)OVSからの増減が飲み易さ(嚥下容易度,SES)へ与える影響について調べた.実験に参加した被験者は,20歳前後の健康な女子学生67人であり,実験Ⅰ(n=28)と実験ll(n=39)の2群に分けられた.実験Ⅰでは,自由摂取によってOVSとMVSを求めたところ,それぞれ17.9±1.58mL(平均値±SEM)と35.4±2.26mLとなった.また,各被験者のOVS(標準刺激;SS)から2mL刻みで7段階(- 6mL~+6mL)の増減をおこない,マグニチュード推定法によってSESの変化を評価させた.その結果, SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,上限量の(OVS+6)rnL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.実験Ⅱでは,全被験者に18mLをSSとして適用し,3mL刻みで7段階(6mL~24mL)の増減をおこない,それに伴うSESの変化を評価させた.その結果,実験Ⅰと同様に,SESは一回嚥下量の減量と増量によって共に減少し,下限量の6mL刺激時と上限量の24mL刺激時にはSS刺激時と比べて有意な減少を示した.本研究の結果は,日常的には知られている「極端に多いあるいは少ない食塊量が嚥下を困難にする」との経験へ実験的な基礎を与えた.</p>

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