口蓋裂手術法と上顎骨歯槽部の成長発育に関する臨床的研究

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  • Maxillary Growth Changes Followed by Different Types of Palatal Closure in Patients w ith Complete Unitateral Cleft Lip and Pal a te.

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抄録

本研究は片側性完全唇顎口蓋裂症例30名に対し, 同0の唇裂手術法を施行した後, 口蓋裂手術は基本的に異なる口蓋粘膜骨膜弁後方移動術(1群)および二段階口蓋裂手術法(II群)により治療を受けた患者の上顎骨歯槽部の成長発育を乳幼児期から6歳時にいたる間, 経年的, 三次元的に追跡した.そして, 口蓋裂手術法の相違と上顎骨歯槽部の成長発育を比較検討し, さらに患者の各発育段階に準じて選択した非裂健常児54名(対照群)との比較から成長発育障害の発現の相違を明らかにしたものである.症例の分析には, 被験者より採取した乳幼児顎顔面模型を用い, 上顎骨歯槽部の成長発育を唇裂手術時(stage A), 口蓋裂手術時(stage B), 4歳時(stage C)および6歳時(stage D)の4つの発育段階に区分して検討を行った.その結果, 唇裂手術時(stage A)における1群およびII群の上顎骨歯槽部は対照群に比較して, 歯槽形態に著しい相違を示したが, これは主として左右の歯槽部の位置的偏位によるものであり, 前下方に向かう成長発育では三群間に相違は示されなかった.唇裂手術後のstage Bでは1群およびII群はともに上顎骨前方歯槽部において深さ, 高さの成長発育障害が示された.1群およびII群の上顎骨歯槽部はstage Bで施行された相異なる口蓋裂手術法に応じて以後のstage C, Dにおいて著しく異なった成長発育を示した.すなわち, II群では上顎骨歯槽部の深さ, 高さにおいて増加の傾向が認められ前下方に向かって旺盛な成長発育を示し, 唇裂手術後のstage Bにみられた成長発育障害は漸次改善されることが明らかとなった.これに対し, 1群では上顎骨歯槽部の深さ, 高さの成長発育障害は以後のstage C,Dにおいてcatch-upされることなく, 歯槽部全体が後上方位にとどまる傾向にあることが明らかとなった.最終段階(stage D)における1群およびII群の上下顎の咬合状態では前歯部での咬合関係に相違が示され, 1群では反対咬合, II群では切端咬合を呈する傾向が示された.また, II群の初段階手術後に硬口蓋部に残された裂隙の変化では, 漸次経年的に狭小化することが示され, これは上顎骨歯槽部の位置的偏位によるものではなく, 裂隙周囲を構成する口蓋突起部の成長発育によるものであることが明らかとなった.<BR>以上の結果, 口蓋裂手術が上顎骨の成長発育におよぼす影響に関しては, 本研究に用いた二段階口蓋裂手術法は顎骨の基本的成長発育能力助成を考慮したきわめて効果的な手術法であることが示唆された.

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