関東周辺海域のヒラメの系群構造に関する考察

抄録

1・放流効果波及範囲の推定と資源管理体制構築へ向けて関東周辺海域のヒラメの系群構造を検討した。2・神奈川県産ヒラメの背鰭条数には測定市場間や年級群間で差がなく、その平均値は75本前後で常に安定しており、時系列的に比較しても変化はみられなかった。3・銚子以北(銚子、福島、岩手県久慈、青森県八戸)のヒラメの平均背鰭条数は(測定個体数の少なかった一部の例を除いて)年級群に関係なく72本前後であった。4・神奈川県産ヒラメと銚子以北産ヒラメの背鰭条数を同一年級群間で比較したところ、前述の例外を除きすべての場合で99.9%という高い水準で有意差が認められた。5・漁獲量の推移より、太平洋側各県の変動傾向は青森~千葉、神奈川~三重、和歌山~宮崎の3海域に分けられた。6・1984年に常磐海域で発生した卓越年級群の南側への波及範囲をみるために千葉県を銚子、九十九里、夷隅、安房東部、内房、東京湾の6地区に分けて各地区の漁獲量の推移を比較検討したところ、その効果が及んだのは夷隅地区までと考えられた。7・千葉県における既往の標識放流魚の再捕結果では、夷隅地区と安房東部地区をまたがっての移動は非常に少ないことが示されており、ヒラメの系群としては千葉県房総半島南東部(夷隅地区と東安房地区)を境に2系群に分けるべきと考えられた。8・神奈川県以西では背鰭条数や漁獲量の推移には明確な地域的差はみられず、系群単位としては紀伊半島を境に東西に分けるのが妥当と考えられ、千葉県房総半島南東部~三重県までを一つの系郡として考えるべきと推察した。9・相模湾奥(神奈川県小田原周辺)と駿河湾奥(静岡県田子の浦周辺)の地区別漁獲量(神奈川県小田原周辺と静岡県田子の浦周辺)の比較から駿河湾奥では相模湾奥に比べて東西に移動するヒラメが少ないものと考えらた。すなわち、伊豆半島南西部を境に更に小さな地方群に分けるのが妥当と考えられた。10・神奈川県周辺のヒラメは房総半島南東部~伊豆半島南西部まででひとつのまとまり(地方群)を構成していると考えられ、本県におけるヒラメ放流効果波及範囲としてもこれを念頭に置くべきと考えられた。

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