ホッキガイSpisula sachalinensis (SCHRENK)の水槽採苗に関する二・三の実験

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  • ホッキガイ Spisula sachalinensis SCHRENK ノ スイソウ サイビョウ ニ カンスル ニ サン ノ ジッケン

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抄録

1. 1964年4月23日から5月20日にかけて,東北水研寒風沢実験所の屋外水槽で小型硅藻Ch. calcitransを餌料としてホッキガイの水槽採苗を行なうにあたって,飼育水の無処理・添加・換水の3つの水換え方法が,幼生の成長,生残率に与える効果と水槽中に投餌した餌料生物の変化について実験を行なった。(i)無処理の水槽では,飼育海水を最後まで交換せず,餌料は原則として海水1ml当り約10,000細胞になるように6回投与したが,Ch. calcitransの繁殖は1回のみであった。ホッキガイ幼生の変態期における生残率は2面の水槽で18%と2%であり良い結果は得られなかった。(ii)添加処理の水槽では,最初に全体の1/3の海水で飼育を始め,飼育の終了までに2回に亘って海水を1/3ずつ添加した。Ch. calcitransは5回投与し,水槽内でその繁殖を2回観察した。ホッキガイ幼生の生残率は2面の水槽で15%と1%で良い結果は得られなかった。(iii)換水処理を行った水槽では,飼育水の水換えを1/3と1/6の2回行ない,Ch. calcitransを4回投与し水槽内でその繁殖を2回観察した。ホッキガイ幼生の生残率は2面の水槽で65%と33%であり,3処理中最も良い結果を得た。(iv)この飼育実験結果から,ホッキガイ幼生の生残率とCh. calcitransの繁殖に影響を与える条件が飼育水中に蓄積されることを考察し,飼育水の水換えの重要性を述べた。2. 殻長約1.3mmの底棲初期稚貝の温度・塩分濃度に対する抵抗性について実験した。温度は48時間の実験では5℃~27℃,塩分は7日間の実験では10Cl‰以上の海水で死亡するものはなかった。3. 1の実験で得た底棲稚貝を流水によって続けて飼育し,6月末平均殻長1.3mmに成長した稚貝,約70,000個体を6つの水槽から分離した。これは変態した幼生約1,600,000個体の4.4%に当る。

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