人声帯粘膜の電子顕微鏡による観察

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タイトル別名
  • ヒトゴエタイ ネンマク ノ デンシ ケンビキョウ ニ ヨル カンサツ
  • [Observation of mucous membrane of human vocal cords under electron miscoscopy].

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抄録

研究目的:声帯は極めて高頻度の激しい運動を行う特異な器官であり,そこに生じる病態についてもまだ疑問の点が少くない.そこで,声帯粘膜の基礎的な微細構造を追求することは,振動体としての声帯の構造をより深く理解し,さらに声帯疾患の病態を解明する上での一助になると考え,本研究を行った.<br>研究方法:喉頭全摘を施行した喉頭癌3例および下咽頭癌4例計7例の声帯健常部を研究材料とした.声帯遊離縁部で膜様部中央の粘膜を速やかに採取し,これを3つのブロック,すなわち上皮を含む固有層浅層,中間層および深層に細切して,グルタールおよびオスミウムで固定し,アセトンおよびプロピレンオキサイド脱水,エポソ包埋を行い,超薄切片を作製して,透過電子顕微鏡で観察を行った.また同時に,光学顕微鏡による組織学的検索も併せて行った.<br>研究結果:<br>1)声帯粘膜は上皮,固有層および声帯筋の3部分から構成される.声帯遊離縁部においては上皮は重層扁平上皮であり,その固有層は主として弾力線維,膠原線維および線維細胞の三成分,およびこれらの成分の間を占める基質とから溝成され,その中に血管系の組織が存在する,<br>2)重層扁平上皮は7-8層から成り,その形態は表層部では扁平状であるが,基底部に向つて次第にその丈を増し基底細胞は立方状となる.上皮の表面には約0.2μの長さのmicrovilliが認められる.上皮細胞相互間の間隙は比較的広く,desmosomeの発達もそれほど良好ではないが,著明に発達した細胞質突起をもつて纒絡状の結合をなしている.これらの所見から,細飽間の結合は密ではないが,強固であり,伸展性,可動性という点でゆとりある結合と思われる.<br>3)固有層における膠原線維および弾力線維は層によつて量的差はあるが,その配列においてほぼ並行する走行を示す.固有層中間溜における両線維の縦断像をみると,膠原線維が個々独立して観察されるのに比べ,弾力線維は互いに手をつないだ如き,樹枝状の所見を呈する.このことから弾力線維は網状の分布をするのではないかと考えられる.<br>4)固有層における微細血管の形態および分布を部位釣にみると,固有層浅層では10μ内外の毛細血管がすべてであり,中間層,深層では細動静脈が大部分であるが,少星の小動静脈が観察される.固有層浅層の中でも,上皮に近接する部位の毛細血管は管径8~10μで,内皮細胞に小孔を認め,小孔の存在部位は上皮側に向かう.しかし,これよりやや深部の毛細血管は管径がやや大きく,胞体もやや厚くなり,小孔は全く認められない.<br>5)以上の所見より,声帯遊離縁部の上皮および固有層の構造に関して病態生理的観点から若干の考察を行った.

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