歯の移動時における骨芽細胞および骨細胞の電子顕微鏡的研究

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タイトル別名
  • Electromicroscopic Studies of the Osteoblasts and Osteocytes Appeared in Experimental Tooth Movement
  • ハ ノ イドウジ ニ オケル ホネ ガ サイボウ オヨビ ホネ サイボウ ノ デンシ ケンビキョウテキ ケンキュウ

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抄録

ラットの臼歯を人為的に4日間移動した場合の牽引側における骨芽細胞, 骨細胞および歯槽骨骨壁周辺に対して電子顕微鏡的に検討した結果, 次のような結論を得た。<BR>I.牽引側における骨芽細胞<BR>1) 骨芽細胞は個々に遊離し, 遊走状態を示す。<BR>2) 遊離した骨芽細胞は3群に分けられる。<BR>i) 第1群は比較的骨辺縁から離れた所に存在し, 幼若な細胞と思われ, 鮮明な辺縁クロマチンで包まれた大きな核を有し, 細胞質に乏しい.ii) 第2群は骨表面に散在し, 成熟した細胞で, 核は比較的小さいが細胞質が豊富で細胞内小器官がもっともよく発達していて, 電子密度の高い分泌顆粒を形成し, 貯える。iii) 第3群は骨辺縁に接して存在するか, あるいは, 一部新生骨基質内に包埋されて存在し, 細胞質は量的に乏しい。<BR>3) 矯正刺激に対して積極的に応答を示す骨芽細胞は第2群で, 急激, 且つ多量の多糖体および蛋白産生能をもつ。すなわち, i) 細胞質は粗面小胞体に富み, 小胞は著しく拡大している。ii) Golgi装置は発達し, 付近に分泌顆粒を多数認め, しばしば細胞外への放出を見る。iii) ミトコンドリアは肥大し, cristaeの発達も著しい。<BR>II.牽引側における骨細胞<BR>1) 若い骨細胞は細胞質にグリコーゲン顆粒の集団をもち, ミトコンドリアは肥大し, cristaeの発達も著明であり, いずれ活発な機能を要求されるような像を示している。<BR>2) 骨基質に包埋された直後の幼若な骨細胞は周囲に類骨層を有し, その中に微細な線維様物質, 一部に横紋構造をもったコラーゲン線維も存在する。細胞の役割りは骨芽細胞のそれに類似し, 類骨層への蛋白や酸性多糖類の活発な産生を行なって矯正刺激に応答する。<BR>3) 深部の成熟した骨細胞は正常下で見られる成熟した骨細胞と差がない。<BR>III.牽引側における歯槽骨骨壁周辺<BR>1) この部が急激且つ旺盛な骨形成野であることを示す。<BR>2) 微細なコラーゲン線維で満たされ, 横紋構造をもつコラーゲン束も認める。毛細血管の新生が著明で, 有窓構造をもつものも認める。新生骨表面は電子密度の高い小球状構造物からなる帯状構造で覆われている。<BR>3) 稀に破骨細胞を認めるが細胞本来の機能はほとんど停止している。

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