喉頭挙上に左右差があることに起因するえん下障害とその対応

  • 三枝 英人
    日本医科大学耳鼻咽喉科学教室 東京大学大学院医学系研究科音声言語医学教室
  • 中溝 宗永
    日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
  • 新美 成二
    東京大学大学院医学系研究科音声言語医学教室
  • 八木 聰明
    日本医科大学耳鼻咽喉科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Swallowing Disorders Induced by Ill-balanced Laryngeal Elevation. Severe Hemilateral Mechanical Disturbance in Laryngeal Elevation.

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抄録

反回神経麻痺や混合性喉頭麻痺,一側のみの頸部手術後に喉頭が左右均等に挙上せず,障害された側に傾いて挙上してしまうことがあると報告されている。この程度がひどい場合には,嚥下に障害をきたすことがある。しかし,その嚥下障害の機序については明らかにされていないのが現状である。 今回,われわれは喉頭挙上の左右差が著しいことに起因する嚥下障害患者4名を経験した。このうち2名は下咽頭部分切除術後,大胸筋皮弁で再建された症例,1名は甲状腺亜全摘,一側のみの拡大頸部郭清術,縦隔郭清術,麻痺側声帯へのコラーゲン注入術後の症例,もう1名は胸部食道摘出,胃管による再建,左側披裂軟骨内転術後の症例であった。4名とも声門閉鎖はほぼ完全であった。バリウムを使用したVTR嚥下透視検査の結果,以下のごとく特異な嚥下障害のパターンを呈していることが分かった。1)喉頭が患側に傾いて挙上する時,ボーラスは主に患側梨状陥凹を通過する。それに対して,健側梨状陥凹を通過するボーラスは比較的少ない。2)喉頭挙上が終了する頃,患側梨状陥凹を通過しきれなかったボーラスが声門,気管にオーバーフロウする。3)この時,健側梨状陥凹にも残留したボーラスが貯留している。4)次の嚥下時に,健側に貯留したボーラスがさらにオーバーフロウする。 これらの症例に,顎引き嚥下を行ってみたが,無効であった。次に患側への頸部回旋を指導してみた。患側梨状陥凹を通過するボーラスは減ったが,健側梨状陥凹へ貯留し,オーバーフロウするボーラスは増えてしまった。そこで,やや患側に頸部回旋した上で,頬杖をつくような頭位を設定してみた(「頬杖位」と仮称した)。その結果,誤嚥は著明に改善した。

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参考文献 (28)*注記

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