本邦におけるToxic Epidermal Necrolysis(TEN)死亡例の臨床的検討―TEN生存例およびStevens-Johnson syndrome(SJS)死亡例との比較検討―

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抄録

1981年から1997年の過去17年間におけるToxic Epidermal Necrolysis(TEN)の本邦報告例について,生存例の群と死亡例の群について比較し,TENの予後に影響を与える因子を臨床的に検討した.また,同期間のStevens-Johnson syndrome(SJS)の報告例についても調査し,この二疾患の死亡例の違いについても検討を加えた.調べえたTENの報告数は287例(生存例211,死亡例58,予後の記載のないもの18)で,男女比は全体で1:1.5,死亡例で1:1.2,平均年齢は全体で44歳(1~87歳),生存例41歳,死亡例54歳であり,死亡率は21.6%であった.基礎疾患はTEN死亡例では感染症で他疾患の合併がないものは41%と生存例の38%とほぼ同じ割合であったが,術後発症と悪性腫傷の比率が生存例と比較して有意に高かった.原因薬剤は生存例,死亡例ともに,抗菌剤と消炎鎮痛解熱剤が最も多く,これらを合わせたものが前者で58%,後者で72%を占めた.TEN発症までの投薬期間は,生存例では2週間以内に発症したものが73%と死亡例の54%より多く,1ヵ月以上投与されてから発症した症例では生存例と死亡例がほぼ同数認められた.粘膜障害や肝機能障害の合併率は生存例と死亡例のあいだに差が認められなかったが,1年以内に死亡した症例では障害が多臓器にわたるものが多かった.以上まとめると,高齢,消耗性疾患や内臓病変を伴う基礎疾患,長期投与後の発症,多臓器障害の合併がTENの死亡に至るための重要な要因と考えられた.また,SJS死亡例は17例,死亡率は6.3%,男女比は1:2.4,死亡時期は発症後14日以内のものの比率はTENと大差なかったが,7日以内および1年以上経過したものは1例も認められなかった.合併症としては,気道粘膜の障害による呼吸困難を合む呼吸器障害が69%と,TENの34%より有意に高かった.

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