肺動静脈瘻の1例と本邦66例の臨床的検討

書誌事項

タイトル別名
  • A CASE OF PULMONARY ARTERIOVENOUS FISTULA AND CLINICAL EVALUATION FOR THE 66 CASES IN JAPAN
  • ハイ ドウ ジョウミャク ロウ ノ 1レイ ト ホンポウ 66レイ ノ リンシ

この論文をさがす

抄録

肺動静脈瘻は本邦では比較的稀な疾患であり,最近報告例が増えつつあるが,その集計例数は各報告者により一定していない.そこで我々は左上葉舌区内の単発性肺動静瘻の1治験例を経験したのを機会に出典の明らかな文献報告例65例を集計し,これに本例を加えた66例の臨床的検討を行い,かつこれ等と外国報告例との比較を試み,以下の結果を得た.<br>(1) 年齢は若年層に多く20代未満例が42.4%を占める,性差は8:5と男にやや多い.<br>(2) Rendu-Osler-Weber病との合併は外国例(30~60%)程多くはなく,家族歴を含めても66例中8例と12.1%を示したにすぎない.<br>(3) 臨床症状は本邦例,外国例ともほぼ同様でチアノーゼ,太鼓バチ指,運動時呼吸困難,多血症等の慢性低酸素血症由来の症状が多く,それぞれ50%前後の発症率を示した.<br>しかし約30%の症例は全く無症状であり,かつ本症に特徴的とされる病巣部に一致しての血管雑音も約40%の症例に聴取されなかった.<br>(4) 発生形態は単発と多発とあるが,本邦例では単発が70.8%と外国例(約60%)よりも多い.単発例の発生部位は両下葉が多く,各肺葉別の発生率は外国例と驚く程,一致した.<br>(5) 治療は手術的切除であり葉切例が最も多く80%を占めている.しかし本症は本質的には良性疾患であり,最近核出術等の切除範囲を少くする方向に努力されている.<br>(6) 予後は,本邦66例中手術例54例は, 1例の直死例(術後7日目,消化管出血を合併し死亡)を除きいづれも良好である.

収録刊行物

被引用文献 (8)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ