高齢の慢性腎不全症例における透析導入の是非

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  • Acceptance of dialysis therapy in elderly patients with chronic renal failure
  • コウレイ ノ マンセイ ジンフゼン ショウレイ ニ オケル トウセキ ドウニュウ ノ ゼヒ

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抄録

高齢の慢性腎不全症例において, 透析導入の是非に影響を及ぼす背景因子について検討を行った. 東京都老人医療センターにおける年齢60歳以上の慢性腎不全152例を対象とした. 男性例は85例, 女性例は67例, 年齢は76±7歳 (平均±標準偏差), 導入例と非導入例の割合は121例:31例であった. 個々の症例において, 腎不全の基礎疾患 (非糖尿病/糖尿病), 栄養状態, 脳血管障害の有無, 虚血性心疾患の有無, 歩行の可否, 認知機能の良否, 配偶者同居の有無, および子供世代同居の有無について検討した. 栄養状態は血清アルブミン濃度により評価した.<br>背景因子毎に二通りのカテゴリーを設け, それに基づいて対象を二群に分けた. 年齢のカテゴリー化は75歳を境とする前期高齢/後期高齢とした. 血清アルブミン濃度のカテゴリー化は3.5g/dlを境とする低値/正常域とした. 二群それぞれで導入と非導入の症例数を求め, X2検定により比較検討した. 統計学的有意差を認めた背景因子は, 年齢, 血清アルブミン濃度, 歩行の可否, 認知機能の良否, および配偶者同居の有無であった.<br>背景因子の係わりをより明確にするために, 背景因子を説明変数とし, 導入/非導入を目的変数として, 多変量ロジスティック回帰分析を行った. 名義尺度で表された背景因子はダミー変数に置き換えられた. 導入/非導入の規定因子として, 年齢と認知機能の良否があげられた. カテゴリー別の二群比較で有意差を認めていた血清アルブミン濃度, 歩行の可否, および配偶者同居の有無は, 年齢あるいは認知機能の良否との高度の相関により, 規定因子とはならなかった.<br>今回の検討では, 透析の非導入と係わる要因が後期高齢と認知機能不良に集約された. 透析導入の限界を越える症例が少なからず存在し, その背景に後期高齢がさまざまな形で係わっていることは, 医療現場に共通する認識と考えられた.

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