Comparison between the US NED-DEM and the SRTM-DEM

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  • 合衆国のNED-DEMとSRTM-DEMとの比較
  • - A case study in Death Valley -
  • - デスバレー地域を事例として -

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1. はじめに<BR> DEMは,地形解析の基本データとして広く利用されている.デジタル地理情報の整備と公開が進んでいる合衆国では,NEDとSRTMという二種類のDEMが作成されており,USGSのウェブサイトから自由にダウンロードできる.NEDは既存の等高線地図に基づいて作成され,SRTMは2000年2月のスペースシャトル・ミッションで取得されたデータから作成された.両者はWGS84系の緯経度座標を用いて投影されており,グリッドの間隔は南北・東西方向ともに1秒(約30 m)である.SRTMの90%以上のデータが,垂直方向では16 m以下,水平方向では20 m以下の絶対誤差を持つとされている.これらのDEMを用いて地形計測を行う際には,2つのDEMの特徴と精度を比較し,より適切なものを優先的に使用する必要がある.そこで本研究では,NEDとSRTMの地形表現に関する基本的な比較を行った.<BR>2. 対象地域と方法<BR> 多様な地形条件下におけるNEDとSRTMの特徴を比較するために,急峻な山地と平坦な低地が隣接して分布するカリフォルニア州のデスバレーを研究対象地域とした.デスバレーの北部から,山地もしくは低地が卓越する範囲と,山地と平野をともに含む約30平方kmの範囲を7ヶ所選択して地形解析を行った.<BR> まず,GISを用いて地表の傾斜と最大傾斜方向を2つのDEMから算出し,水系網を自動抽出した.また,DEMに特定方向からの光線に対する地形の陰影の強度を計算した.<BR> 次に,SRTMの標高値からNEDの標高値を差し引き,NEDに対するSRTMの偏差を表すデータを作成した.また,NEDとSRTMから算出した地表の傾斜方向と水系網のデータを用いて,山麓部に見られる典型的な扇状地の外周線を判定した.<BR>3. 結果<BR> NEDの低地のデータでは,地形が階段状に表現される傾向(terracing)が明瞭であり,扇状地やプラヤの上部では約12 mおきに標高の出現頻度が増加し,プラヤの下部では約3 mおきに増加する.これは,NEDが40 ftもしくは10 ftの等高線から半自動的に作成されたことを示唆する.一方,SRTMのデータには,データ収集時にレーダの反射が不完全であった等の理由により,データが欠損している地点が散在する.欠損は山地に多く,数平方kmの面積で連続して分布することが多い.低地では欠損が少ないが,まれに面積数十平方kmのまとまった欠損がみられることもある.<BR> NEDとSRTMの標高値の相違は,低地よりも山地で顕著になる傾向がある.データがほとんど欠損していない範囲において,標高値の差の絶対値が16 m未満のセルの割合を求めたところ,低地ではほぼ100%であったが山地では約97%であった.一方,SRTMのデータが欠損している地点の周辺部では,NEDとSRTMの標高値の違いが明白で,差の絶対値が16 mより小さいセルの割合は70%未満となり,差の絶対値が100 mを超えるセルも出現した.<BR> NEDとSRTMの標高値の差は,山地では特定の方向からの光線に対する陰影の強度と高い相関を示した.ただし,相関が最大となる光線の方向は,デスバレーの中でも場所によって異なっていた.一方,低地では相関は不明瞭であった.また,標高値の差とDEMから判定した局所的な斜面方向との相関はほとんどなかった.<BR> NEDを用いて判定した各扇状地の範囲は,SRTMを用いて判定した範囲よりもやや広くなる傾向があり,とくに南側の扇面の外周線が50-200 m程度張り出す場合が多かった.<BR>4. 考察<BR> 低地ではSRTMのデータの欠損が少なく,NEDでみられるterracingも存在しない.したがって,低地で地形の平滑さを重視した分析を行う場合には,SRTMの利用が適切といえる.ただし,NEDとSRTMでは扇状地の外周部の位置が異なるので,SRTMが大きな水平方向の誤差を持つ可能性もある.この点も考慮して利用するデータを選ぶ必要がある.<BR> 山地のSRTMにはデータの欠損が多く,欠損部の周囲ではNEDとSRTMの標高値の差異が概して大きい.terracingの効果が少ない山地では,等高線から作成されたNEDが現実の地表高度をほぼ反映すると考えられるので,データ欠損部の周囲ではSRTMの誤差が大きいとみなされる.以上から,山地では一般にSRTMよりもNEDが地形解析に適すると判断される.<BR> 山地ではNEDとSRTMの値の差が陰影の強度と高い相関を持つことは,SRTMのデータを取得した際のレーダの照射方向と,地形に依存したレーダの反射強度によって,SRTMの誤差が規定された可能性を示す.今後,合衆国の他の地域においても同様の検討を行う必要がある.

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