都市構造と通勤トリップ長について

書誌事項

タイトル別名
  • Urban Structure and Trip Length of Journey-to-work Travel
  • トシ コウゾウ ト ツウキン トリップチョウ ニ ツイテ

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抄録

通勤交通は、都市交通における主要な部分を占めていることから、都市構造の面から通勤トリップ長を分析することはエネルギー消費及び環境負荷等の地球環境問題を考えるうえでも重要である。特に、通勤トリップ長は持続可能な都市の形成を考えるうえで重要な指標とされており、各種の都市交通政策等を考えるうえでも重要である。最適職住割当問題を基礎にした都市構造と通勤交通行動に関する研究においては、実際の通勤トリップ長を評価するための過剰率あるいは交通流動率等が研究されている。しかしながら、都市の職住構造あるいは都市形態等の都市構造の相違が通勤トリップ長に及ぼす影響については研究が行われていない。通勤交通は、居住地と従業地との地理的位置関係によって発生するものであることから、通勤トリップ長は都市規模(人口規模)、居住地と従業地の空間分布、CBDの位置と規模等の都市の職住構造あるいは都市形態などの相違によって影響をうける。そこで、本研究においては都市構造の相違が通勤トリップ長に及ぼす影響について最適職住割当問題を基礎に考察する。また、居住地あるいは従業地の空間分布の変更、すなわち都市構造の変化が通勤トリップ長に及ぼす影響、あるいは通勤トリップ長をより減少させるような居住地・従業地の移転パターン等に関しても考察を試みる。本研究においては、交通流動率を通してある都市構造において起こりうる通勤交通流動の範囲(総通勤トリップ長の最小値と最大値の差)のなかで、実際の通勤トリップ長はどの位置にあるのかを把握できること、またこの指標を基に居住地及び従業地の分布パターンが変化する他の年次の通勤トリップ長の推定も可能であること等に着目した5)。本研究においては、まず北海道においてパーソントリップ調査が行われた3都市(旭川市、函館市、釧路市)及び札幌市を含めた4都市・8年次のデータを対象に交通流動率の算定を試みた。そして、都市の規模(通勤総トリップ数)、土地利用パターン等の職住構造あるいは都市形態が異なる都市においてどの程度の交通流動率の値を取っているかについて把握を試みた。そして、これら交通流動率及び総通勤トリップ長の最小値・最大値を基に通勤トリップ長を推定して都市構造と通勤トリップ長について考察した。分析対象は、正方及び長方の2つの都市形態モデル及び居住地・従業地として発生・集中交通量を組み合わせた6つの土地利用パターン、あわせて12ケースである。また、一極集中型あるいは多極分散型等、通勤交通に対する都市構造を考えるうえで重要である CBDの規模及び地理的位置が通勤トリップ長に及ぼす影響についても考察を試みた。さらに、居住地あるいは従業地の空間分布としての都市構造の変化が通勤トリップ長に及ぼす影響程度を算定できる手法についても考察した。そして、最適職住割当問題の総通勤トリップ長最小値及び最大値に対する双対変数及び交通流動率を基に、各ゾーン間の居住地あるいは従業地の移転が通勤トリップ長に及ぼす影響を容易に算定することが可能となった。また、ある都市構造のもとで、通勤トリップをより減少させるような各ゾーンにおける居住地あるいは従業地の立地量についても線形計画問題を基礎に考察した。

収録刊行物

  • 都市計画論文集

    都市計画論文集 38.3 (0), 415-420, 2003

    公益社団法人 日本都市計画学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (5)*注記

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