本田技研のインド二輪車生産の動向とサプライヤーの事業拡大
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- 友澤 和夫
- 広島大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Honda's motorcycle production in India accelerating suppliers' business expansion
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抄録
1.はじめに<br> 自動二輪車の生産は,かつては日本を中心とした先進国が主体であったが,現在では中国やインドなど市場規模の大きい発展途上国にシフトしている.ただし,そうした国々の生産の成長には,日本のメーカーが設立した現地法人が中心的な役割を担っている.日本の二輪車メーカーはローカルな生産システムを各地に構築しながら,事業のグローバルな展開と調整を実行しているのである.<br> 本研究の目的は,世界第2位の自動二輪車市場であるインドにおいて,本田技研の二輪車事業の成長と,それに対応したサプライヤーの立地動向や取引連関に焦点をあてて,発展途上国において「規模の経済性」を達成しつつある同社の生産システムの特徴を把握することを目的とする.本調査は2003年12月に実施し,本田技研の現地法人とそのサプライヤーを訪問して資料や情報を収集した。<br>2.2つのホンダ現地法人<br> 本田技研の二輪車部門において,インドの地位は重要である.2002年における同国の年生産台数は約500万台であり,中国の約1,200万台に次いで第2位である.中国における市場シェアが約4_%_であるに対して,インドでは約36_%_であり同社にとって世界最大の市場となっている.<br> 本田技研はインドに2つの現地法人を有する.一つは,1984年に現地のヒーローグループと合弁で設立したヒーロー・ホンダ・モーターズ(HHML)社である.いま一つは,1999年に単独で設立したホンダ・モーターサイクル&スクター・インディア(HMSI)社である.2003年までは,前者がバイクを,後者がスクーターを生産するという分業関係にあったが,2004年以降はこの関係は解消される.<br> HHML社は2つの工場を有する.創業当初はデリーから約70km西南方向に離れたダルヘラ工場のみであったが,バイクの需要増大に対応してグルガオン工場を1997年に稼働した.近年,同社の生産の伸びは,27万台(ユ96)→53万台(ユ98)→104万台(ユ00)→167万台(ユ02)と急激で,雇用や取引の量的拡大とともに,開発や設計など高次な企業機能の立地を呼び込んでいる.HMSI社は,HHML社の2工場の中間点に開発された工業団地IMTマネサールに立地する.生産規模は13.4万台(ユ02)である. <br>3.サプライヤーの立地動向<br> これら3工場はNH8号線沿いに約15km間隔で配置されており,部品の現地調達率も高いことから,当該地域にはサプライヤーの活発な立地展開がみられる.第1の動きは日系企業の新設である.当初はローカル企業との技術提携によりHHML社に部品を納入していた企業が,ビジネス機会の拡大と同社からの強い要請に応える形で合弁企業を設立するケースがこれに該当する.<br> 第2の動きは,既存サプライヤーの多所立地化である.これには,各納入先工場に近接させて工場を配置するパターンと,製造する部品ごとに個別の工場を設けるパターンがある.また,特に後者の場合に,労務管理の観点からそれぞれを別会社組織とするケースがみられる点にインド的な特徴がある. <br>4.サプライヤーの取引連関<br> 日系かローカルかを問わず,調査サプライヤーの取引先は概して少なく,2つのホンダ現地法人がその中心となっている.現状の生産能力ではフル稼働の所も多く,「規模の経済性」を指向した生産がなされている.この状態は,トヨタ社のインド現地法人が生産の小規模性からローカル・サプライヤーとの取引が少量となり,それらの「範囲の経済性」を追求した取引構造を変えるには至っていないことを述べた昨年度の報告(友澤2003)とは対照的である.<br>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2004s (0), 32-32, 2004
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680669830272
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- NII論文ID
- 10012721021
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- NII書誌ID
- AA1115859X
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可