Murals in the Boyle Heights district of Los Angeles

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  • ロサンゼルス市ボイルハイツ地区の壁画
  • A geographic approach to the study of Hispanics
  • ヒスパニック研究への地理学的アプローチ

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アメリカ合衆国では、1960年代に移民法が改正された結果、1970年代からアジアやラテンアメリカからの移民の流入が活発化した。ロサンゼルス大都市圏は、この国を代表する多民族多文化地域である。とくに人口増加が著しいのはヒスパニックである。2000年センサスでは、ロサンゼルス郡のヒスパニックは424万人であり、これは郡人口の45%を占めた。すなわち、ロサンゼルス大都市圏の都市構造と多民族多文化社会を理解するためには、ヒスパニック地区について調査研究する必要がある。<br> ロサンゼルス大都市圏のヒスパニックのうち、大多数を占めるのはメキシコ系である。メキシコ系の集中居住地区を理解するためのアプローチとして、本研究では景観に着目した。アメリカ都市において、メキシコ系が集中的に居住する地区には特徴的な住宅景観が見られることがすでに指摘されている。それらは、敷地を囲むフェンス、独特な色彩、植物、宗教施設などであるが、壁画の存在はメキシコ系人口の集中居住地区を構成する重要な景観的要素である。ロサンゼルス大都市圏におけるメキシコ系の集中居住地区を研究するための糸口として、私たちは壁画に着目することにした。<br> 調査対象地域は、ロサンゼルス市の中心部の東に位置するボイルハイツである。都心に近接したこの地区には、1890年代に郊外住宅地が形成されたが、その後、ユダヤ系や日系をはじめとするさまざまな新しい移住者が流入し、ダイナミックな変化が展開した。1970年代からはメキシコ系の人口が急増し、典型的な集中居住地区が形成された。私たちは2003年9月にボイルハイツで現地調査を実施した。その結果、78か所の壁画を確認し、それぞれについて調査票を用いて立地、場所・施設、テーマ、製作者、製作年を調べた。その結果、以下が明らかになった。<br> 多くの壁画は、Cesar E. Chavez Ave.、Wabash Ave.、4th Ave.に面して立地する。とくに、Cesar E. Chaves Ave.は都心部とボイルハイツを結ぶ幹線道路である。壁画が描かれる壁面は、商業施設、学校、教会、コミュニティセンター、個人住宅・アパートなどである。とくに商業施設に描かれる壁画が多い。壁画のテーマは、宗教、歴史、文化、政治的主張、環境問題、商業宣伝など多様である。製作者や製作年については明記されていない壁画が多い。明記された壁画については1990年代のものが多く、組織的な企画と援助が行われたことが推察される。<br> 本研究では、ロサンゼルス大都市圏のヒスパニック地区を研究するための試行として、壁画調査を試みた。メキシコ系の壁画はこうした研究にとって重要な素材であることが確認された。今後、継続した調査研究を進めたいと考えている。一つは、壁画調査を広域なメキシコ系居住地区に拡大するつもりである。メキシコ系人口が比較的最近になって激増したヴァーノン地区を観察した結果、壁画はごく少数であった。このことから、メキシコ系の集中居住地区としての成熟が壁画の高密度な分布と関係していると推察される。また、壁画とともに生活する住民の認識、住民組織、壁画の製作を援助する外的な組織、壁画運動の動向などについて具体的な調査を進める計画である。<br>

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