ボーリング解析からみた最終氷期末期以降における濃尾平野の相対的海面変化

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  • Relative sea-level change at Nobi plain since the Last Glacial

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抄録

はじめに<br><br>濃尾平野の完新世における古環境、地形発達に関する研究は多くなされている。いわゆる縄文海進以降のデルタの形成に関する研究はとくに多い。それに対して最終氷期最盛期から縄文海進に至る堆積プロセスには不明な点が多い。また、濃尾平野は桑名・養老断層に向かって東から西に傾動している事が知られている。そのため、平野内においても断層からの距離に応じて沈降量が変化する。その傾動速度は求められているが、平野内の堆積環境との関係は明らかになっていない。筆者らは濃尾平野において掘削された2本のオールコアボーリングを用いて解析を行った。<br><br>研究方法<br><br>ボーリングは岐阜県海津町(KZN, GL=0.69m, 深度47m)および愛知県上祖父江(SB, GL=4.25m, 深度24m)において掘削された(Fig.1)。これらのコアについて_丸1_粒度分析、_丸2_色調、_丸3_帯磁率、_丸4_電気伝導度について分析を行った。一部試料については珪藻等の微化石分析および年代測定(AMS)を行った。粒度分析は島津製作所のSALD3000Sを用いて5cm毎に行った。帯磁率は5cm毎に測定した。色調はMinoltaのSPADを用いて2cm毎に測定した。<br><br>結果<br><br>各コアの分析結果の一部をFig.2aに示す。KZNの下部砂層には5mオーダーのサイクリックな変動がみられる。下部砂層中のシルトにはvivianiteが認められる。また、深度28.03m付近からは火山ガラスが得られ、K-Ahに対比される。また、得られた年代値よりそれぞれのコアの堆積曲線が求められた(Fig.2b)。<br><br>考察<br><br>2本のコアから得られた堆積曲線と粒度組成をもとに各地点での相対的海水準曲線の概略が導かれる。これによると2地点における相対的海水準曲線には相違が認められ、これには濃尾平野の傾動が大きく寄与していると考えられる。加えて中部泥層のコンパクションによる見かけ上の沈降も影響していると予想される。既往の研究では珪藻分析に基づく旧汀線を求めて海水準を復元している。しかし、濃尾平野における相対的海水準変動を復元しようとした場合、このような地域間でのばらつきを評価する必要がある。そのための基礎資料として一地点での相対的海水準曲線を復元することは重要と考える。<br><br>濃尾平野の傾動速度は須貝ら(1999)により0.86×10-4/千年と見積もられている。KZNコアとSBコアの桑名・養老断層からの距離の差は約13kmであることから、例えば8kyで沈降量の差は約9mとなる。実際には8kaの堆積面の深度差は約15mである。差分の6mは堆積面の勾配等に起因すると考える。<br><br>それぞれのボーリング地点における相対的海水準変動曲線が得られると、各年代での海水準の差から完新世における濃尾平野の傾動を復元することが可能となる。今後、貝形虫などの微化石の分析、現成の堆積物や既存のボーリングコアとの対比を通して相対的海水準の精度を上げていく予定である。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693143936
  • NII論文ID
    10012721112
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.213.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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