The impact of summer dry season on stem growth of subtropical dry scrub in Chichi-jima Island of the Ogasawara Islands

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  • 小笠原諸島父島において夏季乾燥期が乾性低木林の幹生長に与える影響

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I. はじめに<br>小笠原諸島に成立する「乾性低木林」は,一般に乾燥した環境に対応した植生と考えられてきた.吉田ほか(2002)は,乾性低木林の立地環境が通年では必ずしも乾燥した条件ではなく,夏季に現われる乾燥期での土壌水分量の乾湿傾度が乾性低木林の群落高と対応することを示し,夏季乾燥期の土壌水分量の空間的な不均一性が乾性低木林の成立要因となることを示した.しかし,これまでの研究では,土壌水分の極端な低下を伴う乾燥に対する植物の直接的な応答はほとんど明らかになっておらず,水文気候環境と乾性低木林の成立との間の因果関係については明確にされていない.<br>本研究では,群落高が異なる2ヶ所の乾性低木林で,幹生長量と土壌水分量を同時に観測し,特に夏季乾燥期の土壌水分量の極端な低下が樹木の幹生長量に与える影響について考察した.<br><br>II.  調査地と方法<br>本研究では,乾性低木林が分布する父島東部の初寝山と東平に観測点を設定し,気象および幹生長量の観測結果(2003年1月_から_7月)を比較した.<br>初寝山(215m a.s.l)には群落高が約1mの乾性低木林が分布しており,1999年8月末から自動気象観測装置による観測を実施している.一方,東平(226m a.s.l)には種組成はほぼ同じであるが,群落高が6_から_8mと初寝山よりも高い乾性低木林が分布する.両観測点にてTDR式土壌水分計によって10cm深の土壌水分量(体積含水率%)を測定した.また,乾性低木林の優占種であるシマイスノキ Distylium lepidotum を対象として,樹冠が林冠層まで達して被陰されてない各1個体の主幹にデンドロメータを設置し,幹生長量の連続観測を行った.<br><br>III. 結果と考察<br>図1aには,2003年1月_から_7月の初寝山で観測された日積算降水量と初寝山および東平における土壌水分量を示す.十分な降水があった場合の土壌水分量は両地点とも約50%でほぼ同じであるのに対し,無降水期間には東平の土壌水分量は初寝山よりも10%以上高い値を示した.特に,梅雨明け後の夏季乾燥期には,東平では最も低下した時でも33.0%(7月26日)であったのに対し,初寝山では16.4%(7月14日)と極端に土壌水分量が低下し,土壌水分量の乾湿傾度が特に大きくなっていた.<br>図1bは,両地点におけるシマイスノキの生長量(2003年1月1日を0mmとした)を表している.東平では梅雨時期までは全く幹の生長がみられず,梅雨明け後の光環境の改善に応じて幹の生長量が増加していた.一方,初寝山では2月下旬から梅雨時期まで継続して幹の生長がみられたが,夏季乾燥期には停止し,水分ストレスによる幹の収縮が計測された.夏季以外の乾燥期(例えば2月)には,同じく土壌水分の乾湿傾度がみられたにも関わらず,幹生長量には影響が認められなかった.これは,この時期の幹生長が小さく,植物の活動期間ではないためと考えられる.<br>以上から,両地点間でシマイスノキの幹生長量の季節変化は異なっており,植物の活動が活発になる夏季に毎年現れる乾燥に伴った水文気候条件の傾度が,このような乾性低木林の幹生長の季節変化パターンに影響する要因になっていると考えられた.<br><br>引用文献<br>吉田圭一郎・飯島慈裕・岩下広和・岡 秀一(2002):水文気候条件からみた小笠原諸島父島における乾性低木林の立地環境.地学雑誌,111,711-725.

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