Nuclear Materials and Hydrogen (3) ; Hydrogen Energy Materials

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  • 「原子力関連材料と水素」シリーズ③
  • 「原子力関連材料と水素」シリーズ(3)水素エネルギー関連材料--水素エネルギー社会の実現に向けて
  • ゲンシリョク カンレン ザイリョウ ト スイソ シリーズ 3 スイソ エネルギー カンレン ザイリョウ スイソ エネルギー シャカイ ノ ジツゲン ニ ムケテ
  • 水素エネルギー関連材料 水素エネルギー社会の実現に向けて

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Abstract

<p> 水素は, 環境汚染物質を排出しない理想的な燃料として, その利用技術の開発研究が世界的に, かつ急ピッチで進められており, 「水素エネルギー社会」という言葉も頻繁に耳にするようになった。「水素エネルギー社会」において原子力をどう位置づけるかは, エネルギー供給における原子力の役割を考える上で重要な問題である。すでに2001年および2002年の日本原子力学会「春の年会」において「総合報告」の形で重要な研究発表と活発な討論がなされているが, 水素エネルギー分野の技術開発は日進月歩で進んでおり, さまざまな場所で継続的に議論する必要がある。</p><p> 水素の燃料としての最大の難点は, 周知のように, 利用可能な状態 (すなわちH2の状態) では天然にほとんど存在せず, 天然ガスや石油, メタノール, 水などの原料から製造しなければならないということである。水素エネルギーシステムの燃料資源量や環境汚染物質排出量は, どの原料から, どのような手段で水素を製造するかによってほぼ決まる。化石燃料から水素を製造する場合には, 当然のことながら循環型エネルギーシステムとはなりえずCO2発生の問題も残る。しかし, 一方では, 原料の輸送・貯蔵・供給に関わる現有のインフラが活用できるという大きなメリットもある。メタノールを使う場合には, バイオマスなどでCO2からメタノールを再生する技術が確立すれば循環型システムを構築することが可能だが, 供給量の確保などの課題がある。水から水素を製造する場合には原子力のような他のエネルギー源が必要となり, 水素エネルギーシステムの燃料資源量や環境汚染物質排出量は1次エネルギー供給手段のそれらによって決定されることになる。原子力の国民的信頼性がさらに高まり, 水素製造に必要な1次エネルギー源として認知されれば, エネルギー供給における原子力の重要性は著しく増大することになる。</p><p> 一方, 原子力関連の開発研究, 特に核融合に関わるものは, 水素エネルギー関連の開発研究と共通の学問的・技術的基盤に立脚しているものが多い。例えば, トリチウムの貯蔵に用いる合金と水素貯蔵合金とに求められる性質は本質的には同じであり, 水素同位体の吸蔵量や放出温度などの“仕様”が異なっているにすぎない。また, 海水やトリチウム廃液から重水素やトリチウムを回収する技術は, 水から水素を製造する技術として応用できるし, その逆もしかりである。すなわち, 水素エネルギー分野は原子力分野で得られた研究成果を輸出する市場として極めて魅力的であり, また, 水素エネルギー分野での技術開発の成果を導入することにより, 原子力分野を発展させることもできるわけである。</p><p> 以上のような観点から, 「原子力関連材料と水素」というシリーズの中にあえて本解説を加え, 水素エネルギー社会の実現に向けて進められている研究の一端を紹介させていただくこととした。本稿が原子力と水素エネルギーの関わりについてお考えいただくきっかけとなれば幸いである。水素エネルギーシステムは, 水素の製造・輸送・貯蔵・供給・エネルギー変換という多くの部分から構成され, 関連する材料も非常に多岐にわたっているため, 限られた著者らの知識と誌面でそれを網羅することは不可能である。本稿では, 水素の製造に関わる水素透過膜材料, 高容量水素貯蔵材料として, 注目を集めているリチウム系水素貯蔵材料エネルギー変換に直接関わる触媒材料に話を限定することをお許しいただきたい。</p>

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