歯科補綴物を誤嚥した後に再誤飲した一症例

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タイトル別名
  • A Case Report of Accidental Swallowing of a Dental Prothesis during Aspiration

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抄録

口腔のような, 狭く生理的反射を伴う領域で行う歯科医療では, 様々な偶発症が発生する。今回, 我々は歯科治療中に歯科補綴物を誤嚥した後に再誤飲した症例を経験した。<BR>患者は80歳男性, メタルコア試適時誤嚥した。直後, 若干の咳漱等の症状を呈したが, その後すぐ症状は消失, 不快感も認められなかった。しかし患者が高齢で反射の減弱が考えられたため, 近医にて胸部及び腹部単純X線撮影を依頼した。その際医師が形態を理解し易いよう再びワックスアップしたろう型を持参した。その結果, 右気管支B6に陥入像が認められ, 右中間気管支幹異物と診断された。<BR>翌日, 呼吸器外科, 耳鼻咽喉科のある総合病院に入院し, 異物位置の再確認及び全身状態が検査された。<BR>さらに翌日, 同院にて全身麻酔下で気管支鏡により同部を精査したところ, 出血点, 血塊は認あれたが異物であるメタルコアは確認されなかった。再度, 腹部単純X線写真にて, 胃内に異物が認められた。呼吸器外科主治医によれば, これは夜間に喀出, 再誤飲されたものと考えられた。<BR>この問題について発生時の概要, 経過ならびに対処を報告し, この経験をふまえて歯科における誤嚥誤飲事故発生の予防及び対応にっいて考察した。<BR>出来る限りこのような事故を予防すると共に万が一このような事故が発生してしまった場合, 冷静な判断と対応をすることが出来るよう問題を整理し, これらの問題の発生時のマニュアルを作成すべきである。

収録刊行物

  • 老年歯科医学

    老年歯科医学 12 (3), 185-189, 1998

    一般社団法人 日本老年歯科医学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (8)*注記

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