スポーツ心の心筋生検による病理組織学的検討

  • 市来 伸廣
    順天堂大学医学部内科学教室循環器内科学講座心臓血管病理学研究室

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タイトル別名
  • A histopathological analysis of the athlete's hearts obtained by endomyocardial biopsy

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抄録

目的: スポーツ心は運動負荷による生理的心拡大と理解されているが, 非可逆的心筋病変を発生して, 心筋症的病像を呈するものも経験される. その場合の心筋構築の変化を病理組織学的に検討する. 対象と方法: スポーツ選手18例を対象として, 肥大型心筋症12・高血圧性肥大心12・正常血圧心8例の対照3群と臨床検査所見, および心筋生検組織像を比較した. 結果: スポーツ選手では, 心電図上全例にT波異常 (うち巨大陰性T波8例) を認め, 心室性期外収縮2・高電位13・異常Q波4例;左室造影では心尖部肥大8 (競輪6 陸上1 ボクシング1), びまん性肥大5・流出路中間部肥大1例で, 左室駆出率60%以下6例であった. その生検所見では心筋細胞横径;右室で18μ・左室で22μ, 配列偏位面積;45%であった. この配列偏位は肥大型心筋症群には及ばず, 高血圧性肥大心・正常血圧心群よりも大で, 高年齢で選手歴の長い症例に高い傾向を示した. 線維症面積は正常血圧心と同程度で, 肥大型心筋症・高血圧性肥大心群より小であった. 総括: スポーツ選手の心筋にみられる心筋細胞配列偏位は, 血行力学的負荷に対する構造上の改築の初期像であり, 負荷強度が大かつ長期間に及ぶと, 一部は非可逆的配列の乱れを生じ, 心尖部肥大型心筋症に進展することがある.

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