都市部在住高齢女性における老年症候群の複数徴候保持者の諸特性と関連要因 要介護予防のための包括的健診「お達者健診」

  • 金 憲経
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 鈴木 隆雄
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 吉田 英世
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 吉田 祐子
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 杉浦 美穂
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 岩佐 一
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 権 珍嬉
    東京都老人総合研究所自立促進と介護予防研究チーム
  • 古名 丈人
    札幌医科大学保健医療学部基礎理学療法学

書誌事項

タイトル別名
  • CHARACTERISTICS OF URBAN COMMUNITY-DWELLING ELDERLY WOMEN WITH MULTIPLE SYMPTOMS OF THE GERIATRIC SYNDROME AND RELATED FACTORS
  • トシブ ザイジュウ コウレイ ジョセイ ニ オケル ロウネン ショウコウグン ノ フクスウ チョウコウ ホジシャ ノ ショ トクセイ ト カンレン ヨウイン ヨウ カイゴ ヨボウ ノ タメ ノ ホウカツテキ ケンシン オタッシャ ケンシン

この論文をさがす

抄録

目的 都市部在住地域高齢女性における老年症候群の複数徴候保持者の出現頻度,諸特徴,関連要因を総合的に把握する。<br/>方法 2004年度11月に,板橋区内 5 か所において70歳以上の男女を対象に行ったお達者健診に参加し,同意を得た高齢女性669人中,欠損値がない668人の聞き取り調査と体力のデータを分析した。老年症候群の判定基準は,(1)高次生活機能低下:老研式活動能力指標13項目中 3 項目以上で「いいえ」と答えた場合。(2)転倒:この 1 年間に 1 回以上「転んだことがある」と答えた場合。(3)尿失禁:日常生活の中で,尿が漏れる回数が「1 か月に 1~3 回」以上あると答えた場合。老年症候群の徴候を 2 つ以上持っている者を複数徴候保持者と定義した。健常者,1 つ徴候保持者,複数徴候保持者間の聞き取り調査と体力を比較した。老年症候群の複数徴候と関連する要因を抽出するために多重ロジスティック回帰分析を施した。<br/>成績 老年症候群の複数徴候保持者の割合は15.3%(102/668)であり,「高次活機能低下+転倒」2.2%(15/668),「高次生活機能低下+尿失禁」6.0%(40/668),「転倒+尿失禁」5.1%(34/668),「高次生活機能低下+転倒+尿失禁」2.0%(13/668)であった。複数徴候保持群は,健康度自己評価は低かったが,3 種類以上の薬を飲んでいる者,転倒恐怖感を持っている者,脳卒中や泌尿器病の既往がある者の割合は有意に(P<0.05)高かった。さらに,複数徴候保持群は年齢が高く,握力,通常速度歩行,最大速度歩行,ファンクショナルリーチ,膝伸展力,開眼片足立ちの成績は有意に(P<0.05)低かった。複数徴候保持群の中でも「高次生活機能低下+転倒」群の体力レベルが最も低かった。老年症候群の複数徴候の有(1),無(0)と関連する要因は,転倒恐怖感(オッズ比=1.59,95%CI=1.02-2.53,P=0.045),通常歩行速度(オッズ比=0.28,95%CI=0.11-0.71,P=0.007)の 2 項目が有意であった。老年症候群の複数徴候有症率は通常歩行速度が最も遅い群(46.2%)が最も速い群(12.5%)より高かった。<br/>結論 老年症候群の複数徴候保持者は健常者に比べて,体力水準が有意に低く,中でも「高次生活機能低下+転倒」群が最も低かったことや老年症候群の複数徴候と関連する要因は転倒恐怖感や歩行速度であるとの結果は,今後の介入の方向性を示唆するものである。

収録刊行物

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

参考文献 (32)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ