宮城県における2003年の地震経験と製造業の地震対策・リスク管理

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  • Effect of Earthquake Experiences on the Corporate Activities against Seismic Disaster and Risk Management of Manufacturing Industriy in Miyagi Pref.

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抄録

企業のリスク管理についてJISQ2001規格が公表され、リスク管理体制の一貫として地震防災計画を策定(改訂)している先進的企業も認められる。しかし、経営資源の制約やリスク評価の甘さなど、様々な問題が指摘されている。2003年5月及び7月の地震災害は、今後の地震対策に対して幾つかの教訓を提示しているが、本論では、電気機械を中心とする宮城県内の製造業事業所への調査から、地震対策やリスク管理体制の実態を、上記の地震経験の影響を踏まえて検討する。 宮城県産業振興センターの企業リストをもとに、県内で操業する精密機械器具、電気機械器具、一般機械器具の3製造業種から、発注/受注企業の別と資本金規模をもとに、調査対象を選択した(計307社)。2004年2月に調査票の配布回収を郵送で行い、65社から回答を得た(回収率21.2%)。調査項目は、_丸1_5月の被害・復旧状況、_丸2_7月の被害・復旧状況、_丸3_5・7月の地震以前の地震対策、_丸4_その後の地震対策、_丸5_リスク管理体制、_丸6_将来の宮城県沖地震への対応 である。 被害総額12億円というケースがあったものの、昨年の地震被害はさほど大きなものはなく、被害なしの事業所は、5月で65%、7月で85%に上る。被災事業所の主な被害は、建物の天井の落下、壁・床の亀裂や損壊、機械の転倒・移動、設備備品の破損などであった。復旧のために休業あるいは操業短縮を余儀なくされた工場もあり、間接損失も発生した。半数以上の事業所は、地震後に何らかの防災対策を追加・改訂し、その対象は、被災した建物・生産ラインや人的被害対策が中心である。また内容では、地震前から多かった防災訓練や連絡体制に加え、耐震診断・補強が増加した一方、保険の新規契約は少ない。地震後にも対策を見直さない理由に、「現状で十分、多大な費用」などが指摘されている。 JISQ2001のようなリスク管理概念を3/4以上の担当者が知らず、全社的なリスク管理システムを構築済が2社、検討中が6社に留まる。また想定宮城県沖地震の定量的リスク・アセスメントは全社未実施であり、予定も3社に過ぎない。その理由は、「分工場であり本社と検討中、スタッフ不足」などである。 今回の地震経験は、個別分野での地震防災対策をある程度進展させたが、企業経営に関わるリスク全体を総合的に管理する視点は乏しく、地震災害をその中に位置づけるには至っていない。零細事業所等へのリスク管理支援が求められよう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693850880
  • NII論文ID
    10020533605
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2004f.0.126.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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