呼吸器感染症患者分離菌の薬剤感受性について(1992年)

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  • SUSCEPTIBILITIES OF BACTERIA ISOLATED FROM PATIENTS WITH RESPIRATORY INFECTIOUS DISEASES TO ANTIBIOTICS (1992)

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抄録

我々は1981年以来全国各地の病院・研究施設と共同で呼吸器感染症分離菌を収集し, 分離菌の各種抗菌薬に対する感受性, 患者背景と分離菌などを経年的に調査してきた1~8)。今回は, 1992年度の調査結果を報告する。<BR>1992年10月~1993年9月の間に全国20施設において, 呼吸器感染症患者549例から採取された検体を対象とした。これらの検体 (主として喀痰) から分離され, 起炎菌と推定された細菌は690株であった。このうち, MICの測定ができた菌株数は669株であった。その内訳はStaphylococcus aureus 101株, Streptococcus pneumoniae 121株, Haemophilus influenzae 122株, Pseudomonas aeruginosa (non-mucoid) 92株, Pseudomonas aeruginosa (mucoid) 32株, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis 52株, Klebsiella pneumoniae 28株, Escherichia coli 5株などであった。<BR>主要菌株の抗菌薬に対する感受性は, 各薬剤とも前年とほぼ同様の成績を示した。S. aureusではOxacillinのMICが4μg/ml以上の株 (methicillin-resistant S. aureus) が62株, 61.4%を占め, 前年に比べ耐性菌の発現頻度に上昇傾向が認あられた。<BR>又, 患者背景と感染症と起炎菌の推移等についても検討した。<BR>患者背景については, 年齢別の分布では高年齢層の感染症が多く, 60歳以上が60.8%を占あ, 高齢者の割合は前年とほぼ同程度であった。疾患別の頻度では, 細菌性肺炎, 慢性気管支炎がそれぞれ30.4%, 29.5%と多く, 以下気管支拡張症, 気管支喘息の順であった。疾患別の起炎菌の頻度についてみると, 細菌性肺炎ではS. pneumoniae 20.4%, S. aureus 19.4%, P. aeruginosa 17.5%, 慢性気管支炎ではH. influenzae 22.2%, S. pneumoniae 15.1%, 気管支拡張症ではP. aeruginosa 37.5%, H. influenzae 18.8%, 気管支喘息ではS. pneumoniae 29.8%, H. influenzae 21.3%, P. aeruginosa 14.9% が上位を占あた。<BR>抗菌薬の投与の有無日数ごとにみた分離菌についてみると, 投与前に分離頻度が多い菌はS. pneumoniae 24.4%, H. influenzae 23.4% である。一方, S. aureus 18.6%, P. aeruginosa 29.9%では逆に投与後に頻度が多い傾向を示したのは前年と同様の結果であった。又, 投与期間が8~14日の例では, 前年同様P. aeruginosa 24.2% と頻度が多く, 4~7日ではS. aureus 及びP. aeruginosa がそれぞれ25.6%と分離頻度は高かった。<BR>因子・手術の有無によるMRSAの分離頻度は「有り」で70.7%(53/75),「無し」で34.6% (9/26) となり, 因子・手術の有りの例でMRSAの分離頻度が高い傾向を示した。抗菌薬の投与前後におけるMRSAの分離頻度は「投与前」で40.4% (19/47),「投与後」で85.7% (36/42) となり, 抗菌薬投与後で明らかに高値を示した。

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