発音時における超音波前額断描出法による舌の動態解析

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  • Ultrasound Analysis in Coronal Section of Tongue Surface Movements during Articulation

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抄録

超音波前額断法を用いて, 発音時における舌の動態解析を行った.撮影方法は各個人の歯列弓長と下顎下縁から咬合面までの長さを計測して, 探触子の角度を決定する渡辺の方法によった.対象は健康な成人13名で, 被験音は [ka] [ta] [ra] の3音節である.描出断面はエコーウインド設定部である下顎第2小臼歯遠心面相当部 (5D) および近心方向は下顎犬歯遠心面相当部 (3D), 遠心方向は下顎第2大臼歯遠心面相当部 (7D) の各舌背面とした.計測部位は舌背正中部と左右側縁最大豊隆部で, 各部位の決定はBモード画像上で行った.発音に要した舌の各断面における各部位の運動距離の測定は, 運動開始点から運動終了時点までのMモード波形の軌跡上で行った.これらの結果より以下の知見を得た.1. [ka] [ta] [ra] の発音時における舌背側縁部の動きの大きさは, 左右では同程度であった.2. [ka] 発音時には, 舌背正中部の動きが左右側緑部より有意に大きく5D面で特に顕著であった.3. [ka] 発音時の舌の動きの大きさは5D面, 7D面, 3D面の順であったが断面間の有意差はみられなかった.4. [ta] [ra] の発音時には, 舌の前方部が後方部より有意に大きく動く特徴がみられた.5.各被験者の [ta] 発音時の前方部と後方部の動きを比較すると, 多くの被験者が3D面での動きが大きく, 5D面から7D面にかけて小さくなっているが, 数名の被験者は逆に7D面が3D面より有意に大きく動いており, これらの者は [ra] 発音時にも同様の傾向がみられた.超音波前額断描出法は, 発音時の特定の舌背の位置の動きを定量分析するのに有効な方法であることが認められた.原因が不明とされている側音化構音の診断や訓練をはじめ, 撮影部位の同定が可能であることから機能訓練の評価等にも利用可能と考えられる.

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