ケモカイン受容体CCR4とHTLV-1感染,ATL発がん

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タイトル別名
  • CCR4, HTLV-1 infection, and ATL oncogenesis
  • ケモカイン ジュヨウタイ CCR4 ト HTLV 1 カンセン ATL ハツガン

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抄録

HTLV-1は成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy/HAM)などの重篤な疾患の原因ウイルスである.HTLV-1は通常のウイルスと異なり,HTLV-1感染T細胞と標的T細胞との間の細胞接着を介して「細胞依存性」に伝達される.我々は成人T細胞白血病(ATL)のほとんどの症例(>90%)で白血病細胞はCCR4陽性であることを初めて報告した.CCR4はTARC/CCL17とMDC/CCL22のふたつのリガンドを持つケモカイン受容体であり,抗体産生やアレルギー反応に関与するTh2細胞,制御性T細胞,皮膚指向性メモリー/エフェクターT細胞などでの選択的発現が知られる.そのためATLでのCCR4発現はATLがこれらのT細胞サブセットに由来することを示唆し,またATLでの高頻度皮膚浸潤も説明する.さらに我々はHTLV-1がCCR4陽性T細胞に選択的に感染するメカニズムのひとつを明らかにした.すなわち,HTLV-1感染T細胞はTaxの作用でMDC/CCL22を大量に産生し,そのためCCR4陽性T細胞が選択的に誘引されてHTLV-1感染T細胞に接着し,それによってHTLV-1はCCR4陽性T細胞に選択的に伝播されるのである.さらに,我々はATLでのCCR4発現に関わる転写因子を解析し,AP-1ファミリーのFra-2とJunDがATL細胞で強く発現していることを見いだした.そしてFra-2/JunDヘテロダイマーはCCR4の発現だけでなく,ATL細胞の増殖も促進し,さらにc-Myb,MDM2,Bcl-6などの重要な原がん遺伝子をその下流遺伝子として発現誘導することを明らかにした.Fra-2はATLでこれまでその発現の知られていなかった発がん遺伝子であり,それによって発現が増強されるCCR4はATLの腫瘍マーカーのひとつであるとも言える.

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 58 (2), 125-140, 2008

    日本ウイルス学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (116)*注記

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