痙攣性発声障害症例の手術方法の検討―性同一性障害による音声障害を有する症例について―

  • 中村 一博
    東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科頭頸部外科
  • 渡邊 雄介
    国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科
  • 塚原 清彰
    東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科頭頸部外科
  • 許斐 氏元
    国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科
  • 駒澤 大吾
    国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科
  • 吉田 知之
    東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科頭頸部外科
  • 鈴木 衞
    東京医科大学耳鼻咽喉科

書誌事項

タイトル別名
  • Surgical Treatment of Adductor Spasmodic Dysphonia in a Patient with Gender Identity Disorder
  • 症例 痙攣性発声障害症例の手術方法の検討--性同一性障害による音声障害を有する症例について
  • ショウレイ ケイレンセイ ハッセイ ショウガイ ショウレイ ノ シュジュツ ホウホウ ノ ケントウ セイ ドウイツセイ ショウガイ ニ ヨル オンセイ ショウガイ オ ユウスル ショウレイ ニ ツイテ

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抄録

当科では内転型痙攣性発声障害 (SD) に対し,甲状披裂筋切除術牟田法 (TA切除術) と甲状軟骨形成術2型 (2型) をどちらも施行しており,症例に合わせて術式を選択している。今回われわれは,性同一性障害 (GID) による音声障害を有するSD症例の手術治療を経験したので報告する。<br>症例は32歳女性である。基礎疾患にGIDがあり,2005年3月に性別適合手術を受け,その後戸籍変更も済ませていた。<br>以前より話声位 (SFF) が低いことで悩んでいたが,数年前から声のつまりが出現したため,2007年8月7日に当科を初診した。初診時の音声所見は,モーラ法にて11/21,SFF 133.3 Hz,最低音124.2 Hz,最高音418.2 Hz,MPT 21秒であった。<br>患者の希望は“つまりの改善とSFFの上昇”であった。TA切除術はつまりの改善とピッチ上昇どちらも期待できる。まずTA切除術を先行させ,ピッチ上昇効果不十分の際には甲状軟骨形成術4型 (4型) を追加するという手術を予定した。<br>2007年10月4日TA切除術を施行した。術後6カ月目の時点で,モーラ法では0/21でつまりは取れたが,SFF 200.1 Hz,最低音151.1 Hz,最高音364.1 Hz,MPT 12秒であり,さらなるSFFの上昇を希望したため,2008年5年27日4型を追加した。4型術後1カ月目には,モーラ法は0/21,SFF 244.8 Hz,最低音213.0 Hz,最高音322.4 Hz,MPT 8秒となった。<br>GIDのSD症例に対し手術を施行した。TA切除術はSDの改善に対しては有効であったが,GIDのための低音化音声障害に対しては効果不十分であった。そのため4型を追加し良好な結果が得られた。TA切除術と4型は併施可能な術式であった。

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参考文献 (23)*注記

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