集学的治療によりCRを得た肝細胞癌骨転移の1例

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タイトル別名
  • A case report of hepatocellular carcinoma with bone metastasis successfully treated with assertive combination therapy
  • 症例報告 集学的治療によりCRを得た肝細胞癌骨転移の1例
  • ショウレイ ホウコク シュウガクテキ チリョウ ニ ヨリ CR オ エタ カン サイボウガンコツ テンイ ノ 1レイ

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抄録

症例は65歳,男性.B型肝硬変で経過観察中,発熱を主訴に近医を受診し,肝腫瘍を疑われ当院消化器内科を紹介された.門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌と診断され,手術目的で当科に入院した.腫瘍マーカーはAFP 142 ng/ml ,DCP 32038 AU/l と著明な上昇を示し,右門脈周囲に境界不明瞭な濃染像と門脈右枝から左枝根部まで進展する腫瘍栓を認めた.術中所見では腫瘍の周辺組織への浸潤はなく右葉の授動は容易であった.門脈血流遮断を行いながら腫瘍栓切除を先行し,拡大肝右葉切除を施行した.手術診断は肝細胞癌H2 Mt-PA multiple塊状型Ig Fc(-)Fc-inf(-)Sf(-)S0 Vp4 Vv0 Va0 B0(IM2)P0 CH T4N0M0 Stage IV Aであった.<br> 術後,左腰痛を認め,整形外科にて保存的に加療を行ったが,外来通院中も改善を認めなかったこと,腫瘍マーカーの上昇が続くことから胸腹部CTを施行したところ,左腸骨に巨大腫瘍を認めた.同部位以外に腫瘍を認めなかったことから左腸骨部腫瘍に対し動注併用放射線療法,さらに内腸骨動脈より化学塞栓療法(TACE)を追加した.<br> その後,腫瘍マーカーは正常化し,治療開始から1年5カ月のCTでは肝再発や肺転移はなく,左腸骨部に濃染腫瘍はなく,腸骨の再生も認められつつあり,現在外来にて経過観察中である.<br> 肝細胞癌の肝外転移に対する治療には,現在のところ決定的なものはなく,特に骨転移に関しては除痛を目的にした放射線治療に限られることが多い.原発巣のコントロールが良好な症例においては,遠隔転移に対しても積極的な集学的治療を行うことで根治も含めた予後が期待できると考えられた.<br>

収録刊行物

  • 肝臓

    肝臓 51 (4), 189-195, 2010

    一般社団法人 日本肝臓学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (25)*注記

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