骨折骨癒合研究の最近の進歩 - 分子細胞生物学の視点から -

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  • コッセツコツ ユゴウ ケンキュウ ノ サイキン ノ シンポ ブンシ サイボウ セイブツガク ノ シテン カラ
  • Recent progress in fracture healing research through molecular and cellular biology

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骨折治癒過程は損傷した骨組織が機械的負荷に耐えうる強度を回復するための生理反応である。主に炎症期,修復期(仮骨形成期),リモデリング期の3つのステージから成り,そのステージによって幾種かの異なる細胞群が精巧な制御の下に互いに協調しながら組織修復を行っている。近年,動物実験では骨形態形成因子(bone morphogenetic protein, BMP)など細胞成長因子の局所投与による骨折治癒促進を目指した研究が盛んに行われており,我々も塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor, bFGF)の局所投与による骨折治癒への効果を検討した。bFGFは仮骨を増大する作用があるものの,骨密度や力学強度に影響はなく,骨癒合を促進しなかった。最近,副甲状腺ホルモンの間欠投与による強力な骨形成作用が注目を浴びており,我々はPTH (1-34)の皮下投与による骨折治癒促進効果を検討した。PTHは仮骨の骨密度や力学強度を有意に増加させたが,軟骨分化には影響を及ぼさなかった。さらに,骨癒合遅延と関連の深い病態の一つである糖尿病(diabetes mellitus, DM)において遷延治癒のメカニズムを検討した。DM群ではコントロールに比して仮骨が有意に小さく,Ⅱ,Ⅹ型コラーゲン,オステオポンチンの発現が有意に低下していた。将来,細胞成長因子や副甲状腺ホルモンなどの全身または局所投与によって骨折治癒促進が可能になることが期待されるが,同時に効率的な使用方法が求められる。そのためには分子細胞レベルでのメカニズムの解析が重要であることを忘れてはならない。

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