肛門側ほど癌化傾向を示した同時性多発大腸腫瘍の1例

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タイトル別名
  • A Case of Synchronous Multiple Colorectal Tumors with Anal–Dominant Carcinogenicity

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抄録

症例は68歳の男性で,主訴は貧血と左下腹部痛.既往歴・家族歴に特記すべき所見はなかった.CTと注腸造影検査にて,S状結腸に全周性狭窄を伴う腫瘍を認めた.急性腹症の治療として横行結腸で一時的人工肛門を造設した.下部消化管内視鏡検査では主病巣以外にも全結腸にわたって悪性腫瘍を疑う病変を複数観察した.内視鏡的切除が困難と思われる腫瘍の存在と異時性発癌のリスクを考慮して大腸全摘出術,J型回腸嚢―肛門管吻合術を施行した.摘出標本には脾彎曲部を境に右側結腸で6個の腺腫と1個の腺癌,左側結腸で4個の腺腫と7個の腺癌がみられた.左結腸曲を境に,右側と左側でp53陽性率に有意差を認めた.本症例の発癌過程において,adenoma-carcinoma sequenceの関与に加え,病変部位による腸内環境の違いも影響する可能性が示唆された.

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参考文献 (18)*注記

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