気管挿管を必要としない急性医薬品中毒の患者に対する活性炭投与の意義

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  • Is an activated charcoal necessary as a routine treatment for drug overdose patients who do not required intubation?

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抄録

背景:急性薬物中毒は救急外来において頻度の高い傷病のひとつである。治療に関しては,胃洗浄や活性炭投与など特有の治療法があるが,1997年にPosition Statementが発表され,その後,日本中毒学会からも標準治療が示されるなど世界的に中毒領域の治療の標準化を目指している。目的:本研究では,気管挿管を必要としない急性医薬品中毒患者において活性炭投与が臨床的転帰を改善するか否かの検討を行った。対象と方法:2005年 1 月 1 日から2007年12月31日までに当センター救急部に救急搬送され,入院した急性医薬品中毒572症例のうち,気管挿管を必要としなかった484例(活性炭投与121例,非投与363例)を対象とした。活性炭投与群と非投与群の入院日数を比較し,投与後の合併症についても調べた。結果:対象に死亡例はなかった。入院日数は,活性炭投与群1.92 ± 0.95日,非投与群1.94 ± 0.95日であり,有意差を認めず(p=0.81),入院日数の差は-0.02日,95%信頼区間は-0.22~0.17であった。背景因子を制御するためpropensity scoreを用いて 2 群をマッチングさせたところ,それぞれ89例ずつ計178例となった。マッチングさせた 2 群の入院日数は,投与群1.80 ± 0.91日,非投与群1.85 ± 0.95日であり,同様に有意差を認めず(p=0.69),入院日数の差は-0.06日,95%信頼区間は-0.33~0.22であった。活性炭投与後の嘔吐は121例中14例(11.6%)であったが,それが原因と考えられる誤嚥性肺炎など合併症の発生はなかった。結語:気管挿管を必要としない急性医薬品中毒の患者において,ルーチンでの活性炭投与は不要であることが示唆された。

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